太宰治生誕110年記念 初の青森県の文学散歩です。写真は合浦公園です。太宰と弟が歩いたその地は、今も市街地の海浜公園として、海水浴を楽しむ人などがいます。2019/8/22
飛行機から津軽平野が見渡せます。その左端に岩木山が見えます。
小山書店から「新風土記叢書」の一冊として『津軽』の執筆を委嘱され、故郷へ旅立ったのは昭和19(1944)年のこと。時に太宰35歳。作家として脂の乗り切った時期である。初夏の津軽路を約3週間かけて歩いた太宰は、同年の7月に脱稿、11月に本を刊行している。これは相当なスピードだ。まさに、一気に書き上げたのだろう。
『太宰治と旅する津軽』太宰治 小松健一 新潮社編 新潮社(とんぼの本)2009
青森駅
上野から14時間の長旅。朝8時、青森駅の太宰を迎えたのT君は、かつて津島家使用人だった「外崎勇三」である。小学校卒業後、金木村の津島家へ奉公に入り、鶏の飼育係や草刈りをしていた。太宰は外崎を「オズ(弟)」とかわいがり、いろいろな本を「これを読め」と渡したという。それで外崎は発奮し青森に出て勉強、太宰の津軽の旅の当時は東青病院の検査技師となっていた。青森駅から向かった外崎の家は豊田呉服店の近く。和服姿でなかったことを外崎に突っ込まれた太宰だったが、じつは家に上がる前に「ちょっと待ってくださいね」と言って呉服店へ入って着替えをし、羽織袴の和服姿で再び現れて乾杯したという。
『名作 旅訳 文庫 「津軽」』 JTBパブリッシング 2009
青森市の観光
青森の観光地は青森県立美術館や三内丸山遺跡かな。遺跡は大迫力で、東北の奥の地に想像以上のものでした。
青森県近代文学館
教科書に載っている作家でいうと、太宰の他には小説『とんかつ』の三浦哲郎
短歌「一本の樫の木やさしそのなかに血は立ったまま眠れるものを」寺山修司
などが展示されていました。青森の風土が読めます。
常光寺・下宿跡
常光寺や豊田家も含め、青森市内は昭和20年に空襲で焼けてしまいました。太宰は青森中学時代、実家金木からは遠くて通えないので、青森市寺町にあった親戚筋の呉服店・豊田太左衛門方に下宿していました。
私のうちと遠い親戚にあたるそのまちの呉服店で旅装を解いた。入口にちぎれた古いのれんのさげてあるその家へ、私はずつと世話になることになつてゐたのである。
『思ひ出』
私の世話になつた呉服店といふのは、寺町の豊田家である。二十代ちかく続いた青森市屈指の老舗である。ここのお父さんは先年なくなられたが、私はこのお父さんに実の子以上に大事にされた。忘れる事が出来ない。この二、三年来、私は青森市へ二、三度行つたが、その度毎に、このお父さんのお墓へおまゐりして、さうして必ず豊田家に宿泊させてもらふならはしである。
『津軽』
友情の碑
青森市松原の中央市民センターに、小説「走れメロス」の一節が刻まれた文学碑があります。この碑は、青少年の健やかな成長を祈念した「友情の碑」が昭和55年(1980)に建立されました。
友情の碑斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も 燃えるばかりに輝いてゐる。
日没までには、まだ間がある。私を、待ってゐる人があるのだ。
少しも疑はず、静かに期待してくれてゐる人があるのだ。
私は、信じられてゐる。私の命なぞは、問題ではない。
死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。
私は、信頼に報いなければならぬ。
いまはただその一事だ。走れ!メロス。
文芸のこみち
旧国鉄の操車場跡地が遊歩道となり、その一部に「文芸のこみち」として、県内の文化人たちの石碑が建立されています。
さらば読者よ 命あらばまた他日 元気で行こう 絶望するな では 失敬
合浦(がっぽ)公園
この中学校は、いまも昔と変らず青森市の東端にある。ひらたい公園というのは、合浦公園のことである。そうしてこの公園は、ほとんど中学校の裏庭と言ってもいいほど、中学校と密着していた。私は冬の吹雪の時以外は、学校の行き帰り、この公園を通り抜け、海岸づたいに歩いた。謂わば裏路である。あまり生徒が歩いていない。私には、この裏路が、すがすがしく思われた。初夏の朝は、殊によかった。
『津軽』
青森市を代表する公園です。 明治14に完成。大きな公園の北側は海浜になっていて、夏は海水浴客で賑わっています。桜の名所としても知られています。
太宰の通った中学校は空襲で焼け、今は市営球場となっている。合浦公園は昔と変わらない趣を保っている。
写真は啄木歌碑
中学校の校歌の碑は市営球場の裏手テニスコートの端に。
善知鳥(うとう)神社
かつてこの場所には善知鳥村がありました。青森市発祥の歴史を秘めた神社で、宗像三女神が祀られているために海や航海安全の神として崇拝されています。
本ホームペーシ「太宰治の青森・五所川原・金木・弘前・津軽半島」の 参考文献
『津軽』太宰治 新潮文庫 1951
『太宰治と津軽路』平凡社 桂英澄 1973
『津軽・斜陽の家』鎌田慧 2003
『太宰治と旅する津軽』青森県観光局新幹線交流推進課 2008
『太宰治と旅する津軽』太宰治 小松健一 新潮社編 新潮社(とんぼの本)2009
『名作 旅訳 文庫 「津軽」』 JTBパブリッシング 2009
『太宰治と歩く現代の小説「津軽」の旅』齋藤三千政 星野富一郎 米田省三 青森県東青地域県民局地域連携部 2009
『没後50年太宰治展』三鷹市教育委員会 1998
『太宰治』細谷博 岩波新書 1998
『太宰治』別冊太陽 平凡社 2009
『太宰治生誕100年特別展』青森近代文学館 2009
『永遠の太宰治』文藝別冊 河出書房新社2019
『太宰治生誕110年記念展-太宰治と弘前-』弘前市郷土文学館 2019