2020年の冬頃にようやく天体ドームが動くようになったので、中に収められている五藤光学15㎝屈折望遠鏡のメンテナンスを開始した。
観察力の鋭い諸兄らは既にお気づきになられているかと思われるが、この望遠鏡は主鏡・ファインダー・ガイド鏡・彗星儀の4つで構成されている。このうち、主鏡と彗星儀以外は蓋が紛失されていたようで、ガラスに長年の埃が地層となって堆積していた。この時はとりあえずこれ以上悪くならないように雑巾を被せている。
主鏡のみ保存状態が良かったので、とりあえず黒点を観察したところ、無事に動いた。しかし、4つの鏡筒全てがずれていたり、蓋が無かったり、汚れていたりしていた。
かなり無理をして全て取り外し、クリーニング作業を行った。
本来は主鏡で天体写真を(フィルムカメラなどで)撮影する際に、赤道儀駆動といえども少しずつずれていくものを同軸の長焦点望遠鏡で細かく修正し、美しい天体写真を撮影するためのもの。
長年の放置により完全に固着しており、556を吹いて1日寝かしてから外し作業に取り組んだが、それでも取れなかった。ペンチで回すと一本折れてしまった。
恐らくM4くらいのねじ。折れた部分はSUS304の蝶ねじに取り換えた。
なかなかの重労働であった。しかし本番はこれから。鏡筒内には剥がれた塗装カスや埃が入りこんでおり、この後全てオーバーホールして清掃した。
長年蓋無しで放置されていたので悲惨な外観になっている。取り外して中性洗剤などで洗う。
こんなに汚れているのに意外と綺麗に見えて驚いた。
折れてしまったねじを蝶ねじに交換。どうやらねじは全て真鍮の削り出しで製作されていた。
蓋もそのへんに転がっていたアクリル板を接着してうまく取り付けに成功した。
これで放っておいても大丈夫な筈。
主鏡の接眼レンズ接合部のアダプターはあまり見た事の無い規格で、三爪のリングを挿入してから回す方式だった。これもオール真鍮製
アダプターの根本に大き目の接眼レンズを差し込む方式と、1インチの汎用アイピースを締め付けて摩擦で固定する方式の2種類があった。
主鏡のアダプター部と同形状のマウントを3Dプリンターで作成し、反対側にはCANON EOS MなどのEF=Mマウントと互換性のある形状に印刷した。
中国の3Dプリント工房に依頼を出し、せっかくなのでナイロンで印刷。大変強度がある。
なかなかうまく取り付け出来たと思う。これで必要な天体を撮影出来る。
しかしこの天体望遠鏡装置には欠点があり、あまりにも設置場所が悪い(市街地のど真ん中)ので、ファインダーで覗いても4等星以下ぐらいの星は見えなくなる。
つまり4等星以下の星は事実上導入が困難。
こちらは主鏡と、現在主流の1.25インチ径アイピースが接続できるように製作したマウント。同じく中国の工房に印刷を依頼した。ネジ固定部はもうあと2倍ぐらい厚く印刷しても良かったとは思う。
流石に重すぎたようで、少し不安定だが一応固定は出来ている。
視野の広い短焦点のアイピースだ。主鏡の焦点距離は2250mmなので3.5mmで割ると642倍...になる。一般的に望遠鏡の口径の2倍ぐらいが実用的な倍率の上限とされているので、150mm口径x2で300倍程度となる。その倍なのでだいぶ像はぼやけてしまうが、生徒受けは良い。
こちらは確か5~7mmくらいのアイピースだったと思う。
しかし残念ながら生徒が天体ドームを夜間に利用するようなシチュエーションはここ2年ほど無かったので、私物の物品が有効活用されないのは残念なので今はもう東京の先生に寄贈している。
アイピースに直接スマホを近づけて撮影したがあまりうまくはいかなかった。
主鏡のロック機構やその他回転用の歯車などにハイグリースで十分にグリスアップするとスムーズに回転するようになったので、試しに黒点を観察してみたところ。
天体ドームだけで生徒実習の黒点観察を行うのはあまりにもテンポが悪いので、小型の黒点観察用キットも付いた古い望遠鏡を利用する。長年利用される先生がいなかったのか、全体的に劣化していたので全てメンテナンスする。
ねじを外して無理やりハイグリースを注油する。これでとりあえず動くようにはなった。
これらも治す。
しかし担当の先生から依頼があり、どうやら生徒諸君は赤道儀タイプの架台は操作が難しいらしく、経緯台タイプのものが良いという。
恐らく赤道儀が悪いのではなく、あまりにも古すぎて直しきれなかったところがあることと、古い鋳鉄製の赤道儀はあまりにも重すぎる(足も含めたら20㎏弱ある)せいだろう。
うまく嵌るかどうか鏡筒のφを測定している。
vixenの108mm?反射望遠鏡用のバンドが一番近い大きさだったので用意した。それだけでは少しバンドが大きすぎたので、隙間を硬いゴム板で埋めた。
次年度より黒点観察をする事があれば、少しずつこういったシステムに更新していくこととした。
夜間に生徒観望会等を行う際に、立ち入っても良いエリアを格安の赤色クリスマスイルミネーションで囲えば良いのではないかと考えた為、同僚と協力して実施した。少し明るすぎるけれど、そもそも周りもとんでもなく明るいのでそんなに変わらないとは考えている。
恐らく芸術的な風景だとは思う。
ファインダーで見えない4等星以下の星々を導入するための試行をいくつか行った。
同僚や美術の先生に天体望遠鏡の操作指導を行った。
なんだか予算でvixenの天体望遠鏡セット(黒点観察キット付)を少しずつ購入していくことが可能になったらしく、その望遠鏡の動作確認も行った。鏡筒はA80mf
前日の退勤時刻15分前に連絡のあった黒点観察の準備を行った。
1時間目からの実施かつ夜間に雨の予報だった為、準備は大層な苦労があった。
15cm屈折望遠鏡に直焦点でCANON EOS Mを取り付けて撮影したもの。