学生時代より岡本義雄先生開発のANB地震計の製作を行っていた。
構造としては磁石を可動させて、その加速度の変化を磁石の直近に設置したコイルに発生する誘導電流として読み取る。しかしそのままではアナログデータであるからパソコンで使いやすい状態ではないので、Arduino等のA/D変換装置でデジタルデータへと変換する。同時にアンプにて適切な倍率に信号を増幅し、ノイズをカットする(ローパスフィルターまたはハイカットフィルター)。その後パソコンにデータを送り、Processing等のアプリケーションでテキストデータとして取り込み、処理を行う。
この際に、出来るだけ地震計の感度を高めて遠方の波形を得ようとするなら、磁石を出来るだけ長周期で振れるような状態で保持したり、発生する誘導電流を大きくしたり、アンプでの増幅倍率を出来るだけ高くしたりするなどの作業を行う必要がある。
勿論これだけでは不十分な部分もあり、バックグラウンドのノイズとして騒がしい場所で観測を行うと、そのノイズも増幅されてしまうので、出来るだけ静かな場所で感度を高める必要がある。
私が地震計の感度を高める際に手を出せる範囲としては、アンプについてはオーパーツなので何も出来ない。なので、発生する誘導電流をなるべく大きくする方向で機材の改修に取り組んだ。
その際に利用したのがハルバッハ配列界磁で、特定の形状の磁石を特定の配列にすると磁束が特定の方向に偏るメカニズムである。これを入手しやすいネオジム磁石などの部材にて製作する。
また、このハルバッハ配列界磁を向かい合わせに設置し、さらに磁束密度を高める二列ハルバッハ配列界磁にて二つのコイルを挟むといった構造を採用した。
ネットに転がっていたこのpdfを参考にした。
学生時代から現在に至るまでのANB地震計センサにおける磁石+コイルセットの変遷。左から右へ行くほど新しい。新しくなるほど薄く小型化していっていることがよくわかる。これは主に磁石でコイルを挟んだ際に発生する磁束密度が、距離の二乗に反比例して大きくなる為にコイルを薄く製作する為。であると同時に高額な部材である銅線を節約する目的もある。また、銅線を細くすることでコイルの巻き数も稼ごうとしている。