星野 次郎 (著)
二回生に入ってすぐに、上記の書籍を基に天体望遠鏡の製作を試みた。
目標の性能は口径15㎝の焦点距離75cm(F5)で倍率はほどほどに眼視観測目的で明るい望遠鏡を作る予定であった。
パイレックスガラスのφ150mmと、盤としてφ150mmの青板ガラスを用意し、研磨を始めた。
資金難のため、青板ガラスをケチって出来るだけ薄いものを購入したので大変磨きづらかったのを記憶している。
部室の一角を一夏ほど占領し、主鏡になる予定のパイレックスガラスの研磨を始めた。
青板ガラスを下に敷き、パイレックスガラスを上に置く。そして両者の間に水と研磨剤を入れて、だんだんと番手を変えながら進めていく。
確か#120,#400,#800,#1500ぐらいで磨いたように記憶している。
単に前後に動かすだけではだめで、青板ガラスとパイレックスガラスは非周期になるように交互に回転させながら前後での研磨を行った。
だんだんとガラス面が凹面になってきた。
途中で水と研磨剤の両方が足りなかったのか、青板ガラスとパイレックスガラスが貼りついてしまう事象が発生した。空手部の人に力でなんとかしてもらった。
所定の研磨剤まで研磨が完了しても...どうも全体的に曇っていて本当にこれでいいのかと一同不安がる。
#1500が終わると、土台にしていた青板ガラスの上にコールタールと松脂を適切な割合に加熱溶融させて流し込んで作るピッチ盤を成形する。このピッチ盤の上に水と酸化セリウムをかけて、研磨に用いる。画像はコールタールと松脂を砕いている様子
出来るだけ人気が無く、湿っていている場所で作業を行う。
終始酷い臭いがするが、マスクを部室に忘れていたので風上側に回って耐える。
マスクをして角材を持っていて怪しげな可燃性のあるものを煮詰めているので、これはまさしく学生運動に他ならないとコメント頂いた事は覚えている。
このあと青板ガラスの上に流し込んだ。作業風景は撮影出来ていない。
また、パイレックスガラスの裏側にもピッチを流し、そこに丸棒を引っ付けて持ち手を取り付けた。
流し込んだあとの鍋をコンロに戻した時に、垂れていたピッチタールに引火し、静かに火が鍋の縁に燃え上がっていった......。
部員は火が昇って行っているが大丈夫かと誰何したのであった。
酸化セリウムが届くまで結構かかった。この時、パイレックスガラスの表面を球面から回転放物面に加工する必要がある。単にガラスを回転させつつ前後運動で研磨を行うのではなく、「W」の字にパイレックスガラスを動かしたりして、うまい具合に回転放物面に造形していく。
原理はよくわからないが、ナイフで半分ほど切った光源とカメラを近づけて、光源から回転放物面に投射された光が返ってきたときにドーナツ型の模様が見えれば回転放物面として扱えるようだ。
また、この時焦点距離を求める75cm付近になるように削り具合を調整した。
酸化セリウムの研磨力はすさまじいもので、物理的な研磨力もある上に、化学的な研磨力もあるようで表面はピカピカになっている。
このあとうまくドーナツ型の模様が確認出来たので満足した。
なお、この後どういった会社でガラス面にアルミを真空蒸着してくれるのかわからないことと、深刻な資金難に陥ったので反射望遠鏡製作計画は凍結した。
こたつの上に廃反射望遠鏡の筒など色々用意していたけれど......。
主鏡すら完成しなかったのは悲しい。