2021.12.21|TUE

2021年度中国研修フェア:講演会の実施について
~中国経済・社会の最新事情に触れる~

経済学部では三つの海外研修プログラムを運営しており、それぞれ中国、米国、欧州の現地で短期調査を実施してきました。中では、中国を対象とした「海外経済研修:中国」(以下、「中国研修」という)は近年、北京と周辺地域を中心に研修の受入先大学での講義、現地大学生との交流会、企業や工場の視察、市内実地調査、世界遺産の見学などの内容を中心に毎年8月中旬に12日間の短期研修を実施していました。

しかし、2020年以来コロナ禍で中国への渡航が難しくなり、その状況が今年2021年に入っても続いています。そこで、パンデミックの中でも中国の経済・社会への理解を深める機会を設けようとして、経済学部は「中国研修フェア」を企画し、11月から12月にわたり講演会、学生交流会オンラインツアーの一連のオンラインイベントを開催しました。以下、中国研修フェアの講演会の様子を紹介します。

講演会では、中国から3名の経済学者を招き、11月中旬に計3回行いました。講演会のテーマは対外直接投資と脱工業化、大学生の就職事情、貧困削減と上場企業の関係まで多岐にわたり、中国経済・社会の最新事情が紹介されていました。参加者数は40名から130名ほどまで回によって異なりますが、いずれの回も参加する学生、先生方から活発な質疑応答・意見交換が行われました。各講演会の概要は次の通りです。

1. 中国マクロ経済と金融 ―対外直接投資視点から見た脱工業化及び経常収支問題―

日時・講演者:11月10日(水)16:30〜18:00 南開大学 薛 軍教授

近年、中国の対外直接投資は著しく伸びている一方、脱工業化に関連する問題が深刻になっています。特に、経常収支が一旦赤字に転落すれば、中国の対外直接投資の持続が難しいと言われています。この問題意識のもと、南開大学の薛 軍先生が率いる研究チームは独自にデータを集計し、中国対外進出のマクロ経済との関係について分析を行ってきました。講演会では、薛先生より最初に、日中のマクロ経済について両国の発展を振り返りながら比較されました。次に中国対外進出とマクロ経済との協働性分析が説明されました。最後は実証分析の結果に基づき対外直接投資視点から脱工業化の現状及び関連する経常収支問題について議論が行われました。

写真1:南開大学薛 軍先生の講演会の様子

2. コロナ禍と中国の大学生の就職事情

日時・講演者:11月16日(火)13:00〜14:30 上海外国語大学 張 建華准教授

中国では、毎年、1000万人もの大学生が卒業し、労働市場に入ります。これだけの卒業生がどこで就職しているのか、最初の仕事で重視するのが何か、人気の就職先はどこか、コロナ禍が大学生の就職にどのような影響を与えているのか、いずれも興味深いテーマです。こういった最新の中国の大学生の就職事情について、上海外国語大学の張 建華先生より上海の大学卒業生の事例とともに紹介されました。

写真2:上海外国語大学張 建華先生の講演会の様子

3. The Poverty Alleviation Operations of Listed Companies in Chinese Ethnic Areas(日本語訳:中国少数民族地域における上場企業の貧困削減への取り組み)

日時・講演者:11月16日(火)14:45〜16:15 蘇州大学 孫 俊芳准教授
(使用言語:英語)

中国は、漢民族と五十五の少数民族からなる多民族の国です。漢民族は中国最大の民族で2021年の国勢調査によると中国の人口の91.11%を占めています。一方、少数民族も1億1,400万人を超えています。少数民族が居住する地域では、自然的や歴史的な原因で貧困問題が著しいため少数民族地域が中国の貧困削減政策の重点対象となり、過去40年間にわたって様々な貧困削減政策が実施されてきました。中では、上場企業による「ピンポイント貧困緩和」の取り組みは、企業の社会的責任を果たすものと捉えられます。蘇州大学の孫 俊芳先生より、中国の少数民族地域における上場企業の貧困削減事業に焦点を当て、これらの取り組みが企業のパフォーマンスに与える影響の実証分析が紹介されました。

写真3:蘇州大学孫 俊芳先生の講演会の様子

以上、オンライン講演会の開催を通じて、参加者の学生の皆さんが中国経済・社会の最新事情に触れることができ、国際的視野・異文化理解を広げるには欠かせない中国への理解が深まることが期待されます。そして、講演会を含む一連の「中国研修フェア」のイベントを通じて、現地研修再開後の学生のより活発な参加につながり、さらに長期留学を促進し、国際化を推進することを祈念します。

 (※本人の許可を得た上で、一部の参加者の顔が表示されています。また、講演会に申し込んだ全員から名前表示の承諾を得ています。万一、自分の名前が表示されているが承諾していない場合は、mlchina@toyo.jpまでご連絡ください。)

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