川上岳

(音更川の川上岳直登沢往復)

この図説は石狩岳と共通です

○1994年5月22日

○L三浦央 晴山 藤川 國枝 岩本(男4名女1名)

○コースタイム

05:40 石狩岳登山口

07:40 Co1000mアイゼン装着

08:58~09:20 Co1640m

10:25 川上岳頂上(P1894m)

10:50 〃 発

12:35~12:47 Co1640m

13:37~13:45 Co1140m

15:05 石狩岳登山口

山にもいろいろな楽しみ方があるものだと思う。

晴れた日に高見に登ってまわりの山々を望んで大自然に感動すること。困難なルートにあえて挑戦し、その困難さを克服して生じる満足感。仲間と共に事を成したという連帯感。人それぞれ、また同じ人でもその時々によってそれぞれの山登りがあるのだろう。

今回は頂上での乾杯もなかったし、晴れた高みの感動もなかったが、連帯と困難の克服という2つの大きな感動があった。

車をおいたのはシュナイダーコース登山口で、すでに雨が降り始めた中、出発した。

1回沢を渡った。倒木がちょうど丸木橋のようになっている所だった。

沢筋は雪があったりなかったりだった。

いよいよ谷の入り口というところで沢水は雪の下になった。

雨は小降りになっていた。谷が左にカーブして登り切った所でアイゼンをつけた。

岩がむきだしの崖が両側からせまっているので・せっかく持ってきたヘルメットだからそれもかぶった。

沢を登っていくと所々にデブリがあった。沢はやっぱり雪崩の巣である。

冬は行けない。雨は降ったりやんだりを繰り返していた。そしてガスってきて視界が悪くなってきた。

三浦さんが地形図を見ながら右の沢だ、左の沢だと言いながらルートを捜して行った。

地形図のほんの少しの等高線のでっぱり、ひっこみが、実際ではずいぶんと大きなはっきりとした地形になるものだと最初は地図を見ながら感心していたが、上に登るにつれ雪のせいもあるのか、何が何だかわからなくなってしまった。

Co1600m位の所で沢の左に平らな所があり、ちょうど無線交信をする9時だったので、晴山さんが大山さんと無線交信を試みた。

しかし無線機のバッテリーが充分になく大山さんがこちらを呼んでいるのは聞こえるのに、こちらから発信しても届いていないらしく何度も呼びかけを聞くばかりであった。

バッテリーを取り換えた時はすでに約束の交信時間が過ぎてしまった。

交信地点から上は傾斜がますます急になってきた。60度近くあったと思われる。

下の方でアイゼンに付いた雪の団子がそこでは付かなかったのが幸いだった。

ガスの中、三浦さんが先頭の藤川さんに「磁石の西方向に登るように」と言った。「とにかく西へ向かって登れば川上岳に着くから」と。上を見上げてもガスと雪にうもれ沢も尾根もよくわからないのだ。

横にダケカンバが生えているところがらハイマツにかわった頃、風が吹くようになった。

これは私だけだったかもしれないが、時々耐風姿勢をとった。この傾斜で風に倒されたら大変だ。

この時は本当のところ、このコースに参加したことを後悔していた。

とにかく稜線に出たいと思った。そしてようやく少し傾斜のゆるいところに来た。

もうすぐ頂上らしい。ようやく稜線に出た。さてどっちに進むか。リーダーがとにかく高い方にいこうと言って数10m左に歩くとハイマツが少し顔を出しているなだらかなところに着いた。

どうも川上岳のピークらしい。いやそうだという事にした。何しろまわりが見えないのだから。

ピークでは雨ではなくあられが降っていた。風もけっこう吹いた。

私はここで雨具の下を付けた。冬と違って暖かなものだ。

予定ではシュナイダー尾根を降りることになっていたが、ガスの中という事を考慮して来たところを戻ることにした。

用意しておいたハーネスを全員付け、下りのいよいよ急なところはザイルで確保して降りた。

ザイルの両はじは三浦さんと晴山さんに託した。ザイルで全員6ピッチ下った。

ほとんどクライムダウンだった。ものすごい傾斜のところを登ってきたものだと思ったが降りるときに恐怖心は意外となかった。

雪が柔らかいのが良かったようだ。私だけ2ピッチ余計にザイルに頼った。

無線機を出した所から頂上まで昇りが65分、同じルートを下りが105分もかかった。

5人で1本のザイルを使ったこと、私の降り方が非常に遅かったことでこんなに時間がかかった。

私が降りるのを待っていた4人は寒かったのではないかと思う。登る時にはなかった直径1m位の雪の塊がいくつか沢にころがっていたがあとは何事もなく、途中ザイルワークの練習などもしながら下った。

雨はあがっていた。ガスも下の方では薄かった。雪と緑の美しい谷が眼下に広がっていた。

帰りの沢水は増えていて沢上の倒木を渡る時にずいぶん慎重になった。

水は泥で濁っていたが、石狩本谷からはきれいな水が流れていた。この違いはどうしてだろう。

車に戻った時も山はガスの中だったが、とにかく無事に戻れて、めでたし、めでたしだった。

[パーティーメンバー紹介]

○三浦 地図読みとルート決定ザイル確保

○晴山 ザイル確保スノーバーの所有者で使い方の実践も指導

○藤川 ほとんどトップで登る

○國枝 初めてだが意外と度胸がある人

○岩本 なんとか付いて行くのがやっとの人

(茶房多種No.191記録・岩本)