十勝岳
十勝岳(楽古川の通称A沢~D沢)
○1995年7月9日
○L宇野 菅原(男2名)
○コースタイム
05:30 Co350m林道車止め
08:30 十勝岳頂上(P1457m)
09:00 〃 発
09:50 Co1268m
10:30 Co1070m下降点
12:30 Co350m車止め
今回は、宇野さんと2人の山行である。
宇野さんと一緒に登るのが初めてだし、労山での沢登りも初めてである。
宇野さんのことは噂には聞いていたけど、やはりすごい人であった。
8日林道終点でのキャンプで、大山さんも参加して料理を振る舞ってくれた。
そこでまず「すごいなあっ」と思った。
酒をどんどん空けていくのである。
自分もつい頑張ってしまって、次の日は頭をガンガンさせながら登ることになった。
沢は非常にきれいで快適であった。
南日高らしい小滝が次々と出てきて、また、中滝も結構楽しませてくれた。何せ天気がいいのでとにかく沢がきれいで・・・・ってここで、また驚きなのが宇野さんの滝登りである。
どんな滝もあっと言う間に登ってしまう。
自分が滝の途中で恐くなって止まってしまったとき、ふと見上げると宇野さんが笑っていた。 スゴイ!わらじに何か仕掛があるに違いない。
沢の最後はブッシュ漕ぎになり、右に少し逃げて稜線に出た。
ピークに立つとやっと前回大山さんとゴールデンウィークにここに立ったことを思い出した。
南を向くとオムシャ、野塚、トヨニ、遠くはペテガリの方まではっきり見える。
そして何よりも素晴らしいことは下界が雲の下なのである。
山の楽しさは、自分たち以外が体験できないところで、自分たちだけが体験しているんだという優越感だと思っているのだが…
下りの稜線のブッシュ漕ぎはとにかく不快だった。
背より高いハイマツやカンバ、山桜を漕ぐこと1時間半。
宇野さん曰く「こんなはずじゃない、前回はさっきの肩から降りたに違いない。」
しかし、最低コルから下る沢は非常に楽しかった。
小滝は巻かずに降り、ザイルは2回(内1回は巻いて省略)必要。最後に3~5m位の滝が5、6個続いている左岸の草付きを降りて終わった。
天気がいいときは沢の中を歩いているだけで気持ちがいい、そんな山行であった。
沢のグレードは中級だと思うが、下りは一本となりの十勝岳の肩から降りる沢の方
がいいと思う。
(茶房多種No,205記録・菅原)
十勝岳(楽古川の通称B沢往復)
○1995年9月15日
○L大山 中澤 前田 岩本 太田(男3名女2名)
○コースタイム
05:00 野塚市街
05:40 Co350m林道車止め
06:40 Co484m
O7:00 B沢出合(Co570m)
11:05 Co850m(F5の上)
11:40 〃 発
15:45 Co484m
16:20 Co350m車止め
○天候 霧しばしばどしゃ降り
日高南部は小滝が続く可愛らしい沢が多く、我々でも日帰りで比較的気軽に入りやすい。
ただB沢の事前情報はほとんどない。ワクワクするなあ。
台風が近づいており寒々とした霧の作業道をセッセと歩く。ゴーロをジャブジャブと歩いてC沢を過ぎ、ナメ床を越えて10分も進むとB沢の分岐であった。
A沢が右手から樹林の中を枝沢のように入ってきて、B沢が本流に見える。入って5分もしないうちに両岸が一気に迫ったと思うとF1が登場。“あ、デカイ…"ホンワカムートがビシッと引き締まる。
8m程の傾斜の強いナメ滝で、ばっと見ると10mクラスの直瀑かと思う。
5人という人数、今日は結構大変かもしれない。右はリッジ状の壁。左め少し手前から比較的緩やかな広いバンドが2段になって落ち口まで続いており、そこを行く。
バンド自体は巾が広いので安心だが、上段のバンドへ移るところが1m以上の段差である。がっちりしたホールドはない。
2m程上から短いササ薮となっているので、そちらへ登る方が安全かとも思うのだが。
上の様子は見えない。上がって動きがとれなくなると支点もなさそうだしやはり段差の方か。左手でササの根元を鷲掴みにして這いあがる。最初の滝はいつも緊張するもので上に着いてホッと一息。
上を偵察して、ザイルを降ろす。
F2は右のルンゼを登って滝脇へ上がり、おおざっぱに切れ込みのあるスラブの岩を辿っていく。
F2上に続いているナメも登るにはよいが、下降となると懸垂しなければならないだろう。
F2上も岩床が続く。その先で左の一段高い(1.5mぐらい)段へよじ登るのにスタンスがなく苦労。
ボルダリングの世界。下りもここは楽しませてくれました。
沢も少し落ち着いて、我々の方も少し余裕が出てきたと思ったら再び両岸が迫ってきてF3登場。
これは手に負えない。3段1Om程の滝だが、左右の岩盤をえぐったような形で、トヨ状の最下段に取り付くことすら難しそうだ。
右は巻きようがなく、左の泥斜面から上の笹薮をトラバースか。空身で途中まで偵察に行くと、続いて大きそうな垂直の滝が霧に霞んで見えるではないか。
ヤバイ!これまでか・・・・。
皆で考えたが上の滝を見たいという要望が強く、巻いて登ることとする。
まずは泥斜面を10m程登り、潅木と笹の中へ入り込む。
笹を掴んで5m程登るとどうやら笹中をトラバースして落ち口向こうまで行けそうである。
Mを中継に残して下り気味に笹を掴んでいく。
黄色いシュリンゲのかかった小さな潅木まで行ったが、下のスラブが滝の中へ落ち込んでいるように見えて、降りる勇気が出ない。
しょうがなく再び斜上して太目の潅木まで。根っこをほじくり出して10mの懸垂・ここから見る上の滝、霧の幻惑だったのだろうか、驚くほど小さい。7m程だろうか、左の小ルンゼからあっさり巻けそう。
それにしても手間のかかる沢だ。偵察、ザイル、指示・収納とリーダーは忙しい。
さてそのF4。
左の浅いグズグズのルンゼに取り付くがこれが結構悪い。
石を落としそうなので“ビッタリ後に続いて!"などと言ったのはよいがトップが動けなくなってしまってはしようがない。
下が詰まっているので降りることもできず、滝とルンゼの間の泥混じりの岩に移り、泥やら草やら無理矢理掴んで上まで登り切る。いやらしい。さらに上に着いてみるとザイルを持ってきていない。大失敗!しょうがなくリーダーにも登ってもらうことになる。
さて、予想通りに時間もかかって半分も行かないうちにタイムリミットが近づいてきた。
慌ててもう一つだけ進んでみる。滝は垂直に近い5m滝。しかし左は階段状なので、ここだけ登ろう"と決めて大慌てでザイル登はん。全員で空荷になってしばらく上を偵察に行くが、小さな緩いナメ滝が続くばかりで核心部の一つはどうやら終わたようだ。
地図ではまだ等高線が詰まった部分がすぐ上にあるのでまだまだ期待はあるが、残念ながら時間が許さない。
食事をして下降に取り掛かるが、このころから土砂降りの雨となっていよいよ寒さ・・・。
F5・F4と順調に懸垂。F3は登りの逆動作でザイルを握って潅木まで這いあがり、そこからトラバース。
丁度良く頑丈そうな支点へ辿り着き、20m一杯の懸垂で沢床まで。“おお、ぎりぎりだなあ"と』言いながら降りる。
F2上のナメはやはり懸垂でないと不一致だが、とはいえ周りの潅木は全て幹が水面に出ているのでザイルがすつぼ抜けそうで心配。
ハーケンを試してみようということになり、Mが生まれて初めてのハーケンを打つ。
“オッなかなかいい音だ。きっと利いてるゾ"と思ったが、困ったことに二本目が打てない。
10mの緩やかな懸垂でもあるし、打った人が責任もって下ろうといことでMが恐る恐る下っていく・上の4人は下り毎にハーケンがしなうのを見て息の詰まるような思い。
“これなら水平の上の技の方が……"という圧倒的支持で再び掛け替えをして全員懸垂終了。
ここも潅木からスラブを20m一杯の懸垂でルンゼのまで降りられ“いやあ、またぎりぎりだあ"と、我々はなかなかついている。
最後のF1。ここは滝上すぐの根っこから真っ直ぐ降りていく一番すっきりした懸垂下降だ。
全員降り終えてリーダーさぞかしホーツとしたことでしょう。
(茶房多種No.207記録・中澤)
十勝岳(楽古川の通称C沢右股往復)
○1996年8月20日
○L大山 広瀬(男2名)
○コースタイム
06:01 車止め(地形図・楽古川の「楽」の字の手前500m)
06:31 Co484m
O6:45 C沢出合(Co520m)
07:22 Co650m二股
07:41 Co800m(F12の下)
08:24 Co820m(F12の上)
09=30C o950m(F18の下)
10:41~11:28 Co1270m主稜線
14:42 Co650m二股
15:45 Co484m
16:15 車止め
○装備
9㎜・50m×2本
ハンマー2本ハーケン6本・捨てたロープ・スリング6m・1.5mX10本
○天気 曇り昼頃から晴れ
お盆の台風とその後の寒気による大雨で、いつもの渡渉点が車で渡れず川にはまった私のRVRを広瀬さんのパジェロで牽引してもらう。
今日は出だしから難儀している。
楽古川は先週よりも10cm以上水位が上がっていた。気合いを入れてC沢へ。
出合から50mで沢がナメ状に細くなり今後の展開を期待させる。
すぐにF1・10mが出現。
B沢のF1に似て・左岸は草付きの壁、右岸はバンド状の岩が重なっている。ただ、そのまわりが灌木帯で高巻くこともできる。
広瀬さんトップで、岩のバンドに取り付く。難なくノーロープですすむ。
それからはF2~F5まできれいな滝が続き、あっと言う間にCo650mの二股に着く。
左股はナメ滝で合流し、右股にはF6・3mの小さな滝が見える。水量が半減して、もしかしてこれで滝も終わりかと思わせる。
しかし、ここからが核心部の始まりだった。
水が若干多い右股を進むと、F8あたりからは深く大きな谷を形成(Co700m~Co800m間)している。
F8とF9はチョックストン風の白い滝だ。そこから上部には激しく水を落とす大滝(F12)が見え、切り立った両壁の向こうに幽玄な景色を醸し出している。
Co800mは小さい二股になっており、右股が本流でF12・20mの直瀑だ。
C沢の核心部といえる。
滝の左岸は草付きの泥壁、滝の右岸は少しリスがあるが全体につるりとした1枚岩。
どちらも登れないと判断し、小さな左股ルンゼを登って灌木帯を高巻く作戦に出る。
しかし・この左股ルンゼは岩盤がもろい。足を乗せるとズルズルと崩れだす。左岸の7~8mほど上には灌木が見えるが、そこまでは草や苔が付きとても登れない。取り付き点を探り、どんどんルンゼの上部に追いやられる。
50mは上がった。
動くたびに足下から岩がカランコロッ、コローッと、不気味に落ちていく。
トップの広瀬さんは、「もうここは降りられない。灌木帯への取り付きを探そう」とさらに登る。
広瀬さんが何とか1箇所弱い木を掴んでお猿のごとく灌木帯に逃げ込む。セカンドの私は最後の1歩が崩れやすくとても緊張した。
7年前の鷲見さんPは、このままこのルンゼを登り、結局本沢に降りられず枝沢に追いやられたようだ。
灌木帯上部で休憩し、そこから本沢への下りは、緩い傾斜で木を掴んでF13の上部に出る。
ここでF12の大滝上部まで下り、懸垂用の支点を確認する。まだまだ滝は続いた。
高巻きにこりたので、F14は右岸の滝横をフリーで乗越すが、大山が2cmほど足下が滑り、お互い目を合わす。
さらに滝は続き、広瀬さんが「また滝か。いい加減にしてくれよ」と思わず眩く。中澤さんに聞かせたかったなあ。
F15~F16は右岸がつるりとした岩と草付きで難しい。広瀬さんリードで、ロープを出してもらいカラビナプルージックで上がる。
F17は右岸滝へりを登り、Co880mの二股に出た。水量の多い左股を取る。
F18は傾斜の緩い左岸岩を登る。これで主要な滝は終わった。
後は急な階段状の小滝を一気に登る。藪漕ぎは30分弱。
赤布14枚を使い果たし稜線へ。
空が青く、風が心地よい。主稜線は気持ちがいい。北にある頂上が遠くに感じる。
南には緑色の楽古がそびえている。浦河の牧場が手に取るように見えた。
たっぷり休んで下山する。
懸垂下降は、F18とF17がシングル、F16~F14をまとめてダブル、F12とF1がシングルで計5回行った。
いずれも支点は灌木だが、寝て生えているので、捨て縄2本を根本に巻き締めた。また、F8のチョックストン風小滝は慎重にクライムダウン。
ただ落石にはくれぐれもご用心を。
F18の最初の懸垂は私が先に降りた。下降点のそばで気持ちよく小用を足していたら、広瀬さんが「何か叫んでいる」と同時に10Kg以上ある石が私に向かって落ちてくる。私はそのままの格好で落石の行く末を見守る以外、為す術はなかった。ああ恐ろしや。沢はどんな時も気を抜くなかれと、あらためて自戒する。
十勝のA・B・C沢はそれぞれ個性があって魅力的だ。いずれも頂上には立てなかったが、滝沢を堪能した。
未知の沢はワクワクしていいものだが、まだまだ力不足。
岩のリードカをつけねばと痛感させられた。
同行してくれたみんなに感謝感謝。次はD沢とE沢だあ。
(茶房多種No.218記録・大山)
十勝岳(楽古川の通称D沢右股往復)
地図は左股と共通です。
○1996年8月30日
○L大山 広瀬 穂積(男2名女1名)
○コースタイム
05:50 車止め(地形図・楽古川の「楽」の字の手前500m)
06:22 Co484m
O7:26 Co670m三股
08:10 Co830m
O9:40 Co1020m
10:35~11:20 Co1210m主稜線
13:19 Co670m三股
14:53 Co484m
15:31 車止め
○装備9㎜・50mX2本
○天気 曇り稜線付近は霧
山行記録はその山行から帰ってすぐに書くべきだなあと今たいへん反省している。
D沢に行ってきた時の感動をすっかり忘れてしまっているのだ。
D沢に入ってすぐCo540mに25m位の連瀑が出てきて、かなり高く左岸をまいた。
そのあとは別にこれといったこともなくすたすたと進んだと思う。
が、しかし、途中の休憩でH氏と私の捨て縄のダブルフィッシャーマンの結び方が違
うということが発覚し、0氏のとっても冷たい視線をあびた。
0氏の指導のもと結び直していたら20分位時間がとられ、最後にはじっとしていたので、とっても寒くなった。
天気が悪かったせいもあるけれど、やっばり北海道の夏は短いんだなあと身にしみて感じたのでした。
そのあとはCo950mに10mのトイ状の滝があり、H氏はトップで直登しましたが、結構難しいのでザイルを出してもらいました。
最後は笹のブッシュだったけれど、40分位しかこがなかったと思う。
今シーズン沢4回目にして、やっとなんとなく要領がつかめたと思ったらもう終わりで淋しいかぎりである。
あんまり参考にならない山行記録ですみません。
下りは3回懸垂したはずです。
(茶房多種No.219記録・穂積)
十勝岳(楽古川の通称D沢左股往復)
○1996年9月16日
○L大山 中澤 水野 太田(男2名女2名)
○コースタイム
05:45 車止め(地形図・楽吉川の「楽」の字の所)
06:16 E沢出合(Co520m)
07:00 Co690m引き返し
07:20 D沢出合(Co520m)
09:15 Co670m三股
11:18~11:51 Co1170m主稜線
14:42 Co670m三股
16:32 Co484m
17:00 車止め
○装備9mm・50m×2本
○天気曇り時々晴れ、稜線付近は霧
今回はトップに初挑戦という事で気合いを入れてE沢に入った。
誰も入った事がない謎のE沢は、次々と滝が現われる………ことなく、小さい滝を幾つか越えると水量も減り、周りは木が茂り、結局Co700mで折り返した。
で、気持ちを入れ換えてD沢へ。右股は大山さんたちが先日登っているので、左股を登ることになった。F4・6m~F5・6mでリードの練習。
中沢さんにノーロープで先に登ってもらい、リード水野・ビレー太田の強力ペアで登り設定を教えてもらう。全ての動作が遅く、一々確認してもらう。
その上、手際の悪い回収。
私は汗びしょりだがみんなは寒かったでしょう。
その後の滝はロープなしで、白い岩と透明ま水を楽しみながら進んだ。薮漕ぎはつらかったけど、途中、オムシャや野塚が見え慰められた。
稜線で30分休憩。下りは落石が多く、横に並んで降りた。次は懸垂下降のロープ設定。 結構太い灌木があったが、練習のため捨て縄を巻き付た。
ロープがうまく投げられず、すぐに引っかかってしまう。
なんとか降りられたが懸垂下降で初めて「こわい」と感じた。
太田さんと交代で練習し、思いつきり時間をかけて(みんなは食事をとっていた)、ダブルロープも練習した。
右股もはじめの6m、15mの滝を登り、時間になったので折り返した。
最後は泳ぎ納めをし、記念写真をとって終了。
トップで登って、ものすごくこわいと思った。
あたりまえの事を沢山知らなくて身体も頭も疲れた。緊張感が全然違った
教えてくれたみんなありがとう。震えながら長時間待たせてすみません。感謝します。
(茶房多種No.219記録・水野)