ピリカヌプリ
○1995年8月15日~16日
○メンバー
L三浦央 三浦明(男1名女1名)
○コースタイム
15日
06:00 Co330m二股
08:30 Co507m二股
12:10 Co790m二股(C1)
13:30~15:00 ソエマツに向かう沢を途中まで往復
16日
06:00 C1
09:00 ピリカヌプリ頂上(P1631m)
12:00~13:00 Clで休息と撤収
15:30 Co507m二股
17:45 Co330m二股
○食料計画
15日夕 炊き込み御飯
乾燥ほうれん草ピーナッツあえ
16日朝 ざる蕎麦 鯖味噌煮缶詰 蜜柑
昨年は天候不順と穂積の忘れ物と私の気合いの無さで撤退したヌビナイに今年も挑戦した。
実は今年8月1日から3日間ここに入る予定であったが、増水がすさまじくCo507m二股にもたどり着けないで撤退した。
これがまさに三度目の正直である。
15日 3時過ぎに家を出る。
上士幌は相変わらず天気が悪い。それでも希望を持って南下を続ける。
更別のあたりで晴れ間が見えてきた。「やった一」と思いながらヌビナイ方面に曲がるT字路に近付くと見覚えある車が。
案の定それは腰痛で我々とヌビナイ行きを断念した大山さんであった。
彼からの不参加連絡が前夜遅く、もう連合いと私パッキングを全て終わってからだったので、その電話のあと睡眠時間を11間以上削って我々は荷物の詰め直しをしたのだった。 しかし誠実マン大山氏は、それではすまないと思ったのか差し入れを持って待っていたのである。
私達は昨夜何度「おおやま一!」と怒りの絶叫をしながパッキングし直しをしたことも忘れて彼に感謝するのであった。
さて、昨年はCo330m二股から車で川を渡って1kmほど得をしたが、今年は倒木あって車が入れない。
Co507m二股の近くではブル道があちこちにあってかなり時を稼げる。ただし景観の悪化は否めない。
Co507mから上は昨年同様美しく深い函や、淵を次々と高巻いていく。
1つ目の右岸の高巻きは昨年こんなに苦労した覚えが無かった。おそらくガレていることから見てこの1年以内に崖崩れが広がったからだろう。掴む木は多いが足元が崩れやすい。
2つ目はよく覚えている。
昨年は右岸を高巻いてちょうど一番高い所で幅1.5mぐらいの手も足も掛けるところがない場所に現れ、飛び移るのも怖くて結局戻って対岸の3mほどの崖に取り付いたのだ(上にもテープがある)。ところが今年はその取付き点の釜の水が深くて崖に登れない。
しかたなく去年挫折した右岸の高巻きをして行くと、やはり1.5mの渡れない部分は健
在だった。
意を決してロープを出しトラバース的懸垂降下を行いクリア。高巻きの出口には赤テープがある。
3つ目は3~4mほどの岩を何とか登り、その後は心臓に悪い草付の崖を高巻く。
遥か下(といっても15m位だが)に、それは美しいエメラルドグリーンの水が流れている。「美人をゲットするにはリスクが伴うのう」と訳のわかんないことを考えながら、掴むものが何もなく滑りやすい足元に注意して歩く。
50mほど行くと木が生えた「安全地帯」があって、そこを抜けて同じような危ない高巻きをもう1回。
抜け口は泥で滑りやすく私も3mほど滑落したが無事だった。そこから先はもう楽なものだ。白い川底に緑の水が流れている美しい滑床である。
高巻きから見た白と緑のコントラストに連れ合いはすっかり感動していた。
こうして昼頃には核心部を抜けてCo790m二股に着き、合流点の少し上に一張りほどのテン場を見つけテントを張る。時刻はまだ早い。
空身でソエマツ岳の方に行ってみた。さほど美しいわけではないが、Co950m二股から上は、ナメ滝というには傾斜のきつい滝が連続して現れ大変おもしろい。
両脇にはしっかりした木もはえているので降りるのも安全そうだ。
それまで時折り日の射す曇りだったがCo1000mほどでガスってきて引き返した。
16日 04時過ぎに起きる。通算で10時間近く寝ただろうか?天気は相変わらず曇り、下の方は晴れているが稜線上はガスだ。
06時過ぎに出発。昨日くらいのすごい核心部が出ると思いきや、ちょっと緊張する高巻きが2回ほどであとは平凡な沢歩きと上部で30分位の薮こぎ。ピリカの頂上には3時間少々で着いてしまう。
ガスで全くまわりが見えず、強風のため二人でツエルトをかぶって休憩する。
予定では、この日Co790mで1泊し翌17日ソエマツを往復して一気に下山するというつもりでいた。
が、私の悪い癖で明後日から仕事だから17日はゆっくりしたいと思い、ソエマツは捨ててこの日のうちに下山する予定に変更する。
下りは東の方に踏み跡を見つけ、それがやや下ったところで道を左にそれて谷に向かい、できるだけ薮こぎを避けた。登るときはCo1230m二股を右のガレガレの沢に入りその後で左の小さな支流に入ると良い。
下るにしたがって雲が晴れ、時折り向かいのソエマツが見え隠れする。下るのを早まったかと思ったが、もう余裕のない予定変更をしたので下るしかない。
順調に下り、昼頃にはテン場に到達する。そこを13時過ぎに出ていよいよ核心部だ。2つめの
高巻きは登りと左右を変えたため、「1.5m」を渡らなくて良かったが、昨年同様3mほどの懸垂降下をする(そのまま釜に飛び込んでも良い)。
最後の右岸のガレガレの高巻きは足元が崩れてヤバイ場面もあったが、なんとか乗り切ってCo507m二股に着いた。
(茶房多種No.206記録・三浦央)
トヨニ~ピリカヌプリ(トヨニ南東尾根~主稜線往復)
○1996年5月3日~5日
○L大山 穂積 道辻(男1名 女2名)
○コースタイム
3日
19:40 広尾町豊似市街
20:20 車止め(R236号早ケ瀬トンネル)
4日
04:00 車止め
06:00 トヨ三岳南東尾根取り付き
10:30 トヨ三岳頂上(P1493m)
11:40 トヨニ北峰頂上(P1529m)
14:15 Co1500m(C1)
5日
04:20 C1
07:00 ピリカヌプリ頂上(P1631m)
07:30 〃 発
10:10~10:45 C1
12:47 トヨニ北峰頂上(P1529m)
13:53 トヨニ岳頂上(P1493m)
15:53 トヨニ岳南東尾根取り付き
17:03 車止め
○食糧計画
4日夕 豚汁(肉と乾燥野菜)
アルファ米
5日朝 もち入りラーメン
今回の山行計画は、本当は無謀でありながら、とても緻密という計画であった。
そのため好条件が重なって、無事5日の17時に車止めに辿り着けた。
しかし、計画では5日は04時~18時までの14時間行動の予定であり、悪条件が重なれば、18時下山は難しかったことになる。
一方、ポイントからポイント毎の行動時間の計画のとり方がほぼ的確であったため、好条件が重なることによって、少しづつ時間を短縮し、18時下山が17時となった。と言っても1時間の違いである。
【装備で工夫した点】
○川の渡渉の支えとなるストックを2本持っていった。登りにも役だった。
○軽量化に努めた。乾燥野菜、アルファ米、お酒はほんのなめるくらい、3人用だがコンパクトなテント、真ん中に寝る人は夏用シュラフとシュラフカバー、カメラは写ルンデ スのミニ、お気に入りのテントシューズも持たずオーバーミトンで代用、車止めのテン トと登りに持つテントを別にして湿気分をなくしたことなど。
【重なる好条件】
○渡渉が2回で済む車止めから一気に川へ降りることができた。トンネルの脇の崖にうまく降りられる雪がちゃんと残っていた。
この雪がないと崖や川へは降りられないし、帰りにも困る。
○水量は多い方だったが、靴を脱いで、ももまでズボンをまくれば何とか渡ることができた。
○お天気が良く視界は良好だった。陽が長く04時には明るく朝焼けだった。
○雪は極端に埋まって仕方がないという程ではなかった。ピリカからの下山は風がとても強かったが、その分雪がある程度硬く、歩きやすかった。
○ピリカの頂上直下は、難しく危険だと言われていたが、南西斜面の雪が融けてハイマツや草付きなど登りやすい状態だったので急登できたし、下ることもできた。もしこれに雪が付いていたら…と思う傾斜だった。
○風は強くても、やはり春の気温だった。
でも目出帽の風にあたる面がシュカブラ状態になっていた。
これらの好条件のうち、まずトンネル脇の雪が無いと、川をもっと歩くことになるのでこの時間では難しい。水量が少なければ、靴を脱いだり履いたりのロスは無くなるが、この時以上の水量だと?など、この時期は、雪質や雪の量にもすごく影響される。
帯広労山では、一昨年のGW、去年の正月山行と2回もピリカにあこがれ続けながらも、2回とも片想いのままに終わっていた。
私はGWだけで、今回が2回目だが、大山さんも穂づちゃんも3度目、悲願の片想いは成就されるであろうか?!
ピリカヌプリは私たちにその美しい姿を見せてくれるだろうか、頂上を踏ませてくれるだろうか。
そんなつのる想いで今回はスタートした。そして、その切なる想いが通じたのか…今回は本当に幸運だった。
トヨニからずっとその姿を見ながら稜線を歩くことができた。夕暮れの淡いピンクに染まるピリカも、朝焼けに染まるピリカも見ることができた。頂上近くの急峻なところがらのピリカも見ることができた。
さらに、頂上にずっと、雲がす一つと流れて、ソエマツ、中ノ岳、ペテガリ、1839峰、カムエク私にとっては初めて見るこちら側からの高の山々に本当に感動してしまった。
振り向くと歩いてきた稜線、さらにその向こうには、野塚、オムシャ、十勝、楽古と続く南日高の稜線の山々も美しい。
もう一度、ゆっくりと眺めに行ってもいいといえる本当に素晴らしい景観だった。
夏、ヌビナイから行くのは私には無理なので、この時期このルートから頂上に立ち、この景色を眺めることができたのは、まったく幸いである。
下山途中、ハイマツをこぎながら、心中でドリカムの『うれし!たのしい!大好き』を口ずさんでいた。『やっぱりそう。めぐり会えたんだずっと探してた人(山)にいつもこんなにシアワセな気ち持ち続けていられる』を繰り返し歌ついた。
ピリカヌプリを教えてくれたの大沼さんで「ピリカはアイヌ語で"美し"ヌプリはアイヌ語で“山"。だから"美しい山"なんだ。本当に美しい山だ」とり返し説明してくれるが"美しい"としか形容しないその山の姿を、実は私は今までわからなかった。
前回も霧で見えず、下界から指されてもわからなかった。そし今回、ついにその“美しい山"ピリカヌプリに逢えた。"美しい"という言葉の意味がしみじみと伝わってきた。
(茶房多種No.215記録・道辻)