影域花

序章

 「”花”とはもっとも複雑で混沌なるもの」


 「特に善悪が絡むと厄介だ」


 「人は幾度も衝突するのだろう」


 「お前は”混沌”にふさわしい」


 “門”が開かれる。

影。

影の場所。

影の領域。

影の世界。

リミナル世界。


 ここは影。


 「ようこそ、”影域”へ」


 「”影域”?」


 「ここは無限に続く影の場所」


 「お前が”戦士団”にふさわしいとでも?」


 “花”が咲く。


 「”影域花”は全てを奪う」


 私は影域花を歪冪筆で消滅させる。


 「影には勝てない」


 球が生まれ、球を形が泳ぐ。

影はどこまでも続き、

秩序は排除される。

影域花は薔薇を成し、

薔薇の吹雪は群舞する。


 「影に溺れよ」


 影域の者は海を形成した。

海は文字液体を成すが…

私は意識を失う。


 「夢?」


 「ああ」


 「誰?」


 「お前の旋律の花への侵入者」


 「旋律の花…」


 「お前は混沌に選ばれた」


 「お前の歌は混沌を奏でるだろう」


 私は意識を取り戻す。


 !?


 影域の者の口元に無風の幽字が刻まれていた。


 「ほう無風の力を有するのか」


 「お前の力はあまりにも重すぎる」


 「混沌と無風の力…」


 「お前は自らの力に溺れるだろう」


 「私は”影域の管理者”」


 「お前は元の世界に戻るといい」


 「”試練”を攻略できればな!」


 “影域の試練”は始まる。

影域の管理者は代数の律動の存在。

凪の計画に利用されているアヤメを救うために、

アヤメに影域の試練を与えたのだった。

第Ⅰ話

 「スオーノ、無事だった?」


 「まあね」


 「ここは”影域”」


 “未定義”が現れる。

スオーノは律動を放ち、

未定義を消滅させる。

私たちは”影域の試練”を攻略した。


 そこは世界樹だった。


 「再び出会うとはな」


 「あなたは?」


 「モンタニャの女神」


 「私はお前と戦う必要がある」


 「えー、ここまで一緒に戦ってきたのに」


 「世の混沌を覚悟せよ」


 菖蒲は歪冪の花を咲かせる。


 「もうお前は混沌の者だ」


 「じゃあ僕の味方だね」


 「お前は?」


 「逃げるぞ!」


 赤く青い渓谷にたどり着く。


 「ありがとう」


 「あなたは?」


 「”赤き薔薇”って呼んでくれ」


 「薔薇…」


 「お前はもう混沌側の存在だ」


 「私は迷ってる」


 「そうか」


 「それはカスタネット?」


 「ああ継承武器の一つだ」


 「歪冪のカスタネット」


 「お前は賢者と戦う事になる」


 「歪冪の力を使いこなせるようにならないとな」


 「まずは拠点に帰る」


 門があった。

不変の都。

近代的な摩天楼が並ぶ。

クランに帰ると鎖晶船が存在していた。


 「警告、”影域”の検出」


 「空間が不安定だな」


 「行こう」

第Ⅱ話

 不変の都では鎖晶が影域を生んでいた。

“歪冪のカスタネット”が律動を生成すると、薔薇が鎖晶を覆い、

影域を消滅させた。


 「この”鎖晶”を破壊するといい」


 「ええ」


 私たちが鎖晶を破壊し続ける。

“門”が開いた気がする。


 「ここは?」


 「旗?」


 「コラージュ化していない…」


 「ここは”境界”だな」


 「鎖晶の破壊が原因か」


 「発散する”極限”まで向かえばこの世界を出れるはずだ」


 「軽微な混沌か」


 「スオーノ、奏でろ」


 「うん?」


 赤き薔薇は私を見る。


 「お前は無風の衣を纏っているからな」


 「”膜”によって境界を成す」


 「極限に向かうには?」


 「影の力があればいいのだが…」


 「混沌を辿るか」


 混沌を辿ると城門が存在した。


 「これが”星の国”に繋がる門…」


 「だが近傍もまた境界に満たされているのか」


 「”世界の波”の狭間…」


 「風の波に乗ろうよ」


 「お前には無理だ」


 「この城門を通ろう」


 無事に不変の都に着いた。


 「境界に入らないようにしないとか」


 「お前が破壊しろ、鎖晶を」


 「うん」

第Ⅲ話

 「あいつは!?」


 旗には時筆歪隊と書かれていた。


 「クランか!?」


 赤き薔薇は混沌の刃を作る。

スオーノは律動で覆う。


 「我は”門番”」


 「”隠し扉”を開きし者よ」


 「我が”試練”を与えよう!」


 “門番”の試練が始まった。


 「おや、楽しい事になっていますね」


 「あなたは!?」


 そこには影域の管理者が存在していた。

影域が形成され、未定義は生まれる。


 「これを使え」


 赤き薔薇はスオーノに歪冪のカスタネットを渡す。


 「ああ」


 空間の境界が破れる。

凪の計画は、平行世界のアヤメを利用する事だ。


 「終焉だ」


 「我ら混沌の最期の目的は”終焉転調”の刻」


 「最期の世界転調」


 「戦士団の終わりだ」


 「世界は混沌に満たされ、終焉が永遠の魔術世界を作る」


 「離散化されし永遠の終焉…」


 「混沌の者はその本質により各々に目的の違いが認められるが…」


 「終焉転調、”カタストロフィ転調”が全てを収束させるだろう!」


 魔法陣は声を増幅させ、こちらまでも聞こえて来る。


 「行くぞ」


 「”影域”を倒せ」


 「いやお前には不可能だ」


 「警告、無風の検知」

第Ⅳ話

 ここは旋律の領域。


 「我は”離散の管理者”」


 データの断片が飛び散る。


 「これは”離散の試練”」


 「我を退けよ!」


 離散の管理者は歪冪花を形成し、

竜を成す。


 「勘違いするな、私も混沌だ!」


 歪冪筆と終わりの杼で攻撃する。


 「この杼…もしかして」


 「いやお前には扱えない」


 「菖蒲は薔薇を成し、戦士団を滅ぼす」


 「お前は優秀なのだ」


 「どういう意味?」


 「ふふ」


 「ここはお前の”旋律の花”」


 「つまりお前の”精神世界”…」


 花は薔薇に変化している。


 「混沌はお前と戦っていたのではない」


 「お前を育てたのだ」


 「お前を優秀な駒としてね」


 「私は離散の管理者にして、”離散の使い”…」


 「隠し扉を通るのは自分…」


 「そう自分が門番だ」


 「私は…」


 “幽数字の管理者 -アヤメ-”は完成した。


後編に続く