魔人

序章

 "物"を閉じるには"条件"が存在する。

"物"が"閉"であるとは

"物"が"境界"を持つという事だ、

 つまり、"物"のに連結な領域の異なる部分に城門が開ける。

"領域"とは"場所"の"集合"である。

"場所"は"空間"のであり、

 "領域"は"場所"と"公理"の"組"である。

"空間"上では"世界の規則"を"公理"と呼ぶ。

"演算"を持った"集合""空間"と呼ぶ。

"星筆の試練"は"記憶された試練"または"私"に閉じている。

つまりそこに"魔人"は存在しないはずだが。

私の視覚に"箱の魔人"が存在していた。


 「"異能 -箱-"」


 「管理者さん、おれの"異能"を理解してますかい」


 「箱(キューブ)は"境界"を操る」


 「境界ってのは"閉じた領域"の輪郭ですな」


 「つまり自分が箱に入り、"星筆の試練"の中に箱を作って」


 「そして壊した時、私はここに入れます」


 「箱は領域故に"公理"が適用できる」


 「この箱は"規則 -鬼を持つ-"を満たす箱だ」


 「確か試練は"感情"に閉じていないはず」


 「つまり""が"未定義"を発生させる」


 「そいつはただの"鬼"じゃない」


 「"離散化された鬼"ですな」

第Ⅰ話

 『黒き空間』に"怪獣"が現れる。

"箱の魔人"は"力"の"集合"、

"怪力"を操る。

 "怪力"から"怪獣"は生まれる。

"黒き空間"は"箱(キューブ)"の一種だ。

そこに雷鳴が、"走る声"は"怪獣"を消滅させる。

 "走る声"は"文字の雷鳴"。

"賢者"がその能力を持っている。

"箱の魔人"は"呪力"を扱う。

"妖力"は"代償"を持った"魔力"。

"魔力"は"城門"を持った"呪力"。

"呪力"は"文字"を持った"念力"。

"念力"は"意思"を持った"霊力"。

"霊力"は"感情"を持った"力"。

 呪力に"要求(リクエスト)"の雷が落ちる。

呪力は城門を持たない。

故に可動ではない。

『黒き空間』は消滅し、

私の周囲は鬼に覆われている。


 「『走る声 -炎-』!」

鬼は消滅した。

第Ⅱ話

 "星筆の勇者"が現れし時、世界は歌う。

多くの"使者"と"管理者"は"奏でし者 -奏者-"を"継承"し、

世界に"離散の使い・奏"、"記号の管理者・奏"、"形容詞の使い・奏"、"魔力の管理者・奏"、"歪冪の使者・奏"は現れ、

 そして、"ベガの杼・奏"もまた"歌った"。

"意味"は"逆元"を持つ。

"対"とは"真"への"偽"。

 "聖"への"邪"。

"静"への"動"。

"有"と"無"。

"炎"と"氷"。

"希望"と"絶望"。

 つまり"可逆"である。

"星筆の管理者・奏"は"賢者に守護された領域"に逃げていた。

"演奏者"は"概念のエフェクター"を持つ、

 "概念"の力に可変な"ゲイン"。

"概念"の周波数に可変な"イコライザー"。

"概念"の力を"制限"する"コンプレッサー"。

"概念"に可歪な"ディストーション"。

 "奏者"は可逆な概念に"管理者"である。

可逆な概念は"完全"ではない"状態"を"狭間"と呼ぶ。

つまり"陰"と"陽"の中間である。

"陰"を"ネガティブ"と呼び、

"陽"を"ポジティブ"と呼ぶ。

 概念を生成する"オシレーター"と、

可逆な概念に可変な"エフェクター"は、

"可動"である、つまり"城門"を持つ。

"オシレーター"に"エフェクター"への"城門"を生成する事を、

"パッチング"と呼ぶ。

 "賢者に守護された領域 -地球-"に"魔人・奏"が現れる。

"魔人・奏"は"概念のシンセサイザー"から、

"感情のオシレーター"を生成し、

"モジュラー"である"エフェクター"に"パッチング"する、

"ネガティブ"への"エンハンサー"に"パッチング"された"感情"は、

 "科学を守護する領域 -地球-"上を"鬼"で覆った。

"星筆の管理者"は戦う。

"星筆の管理者"は"逆の感情"である"ポジティブ"な"感情"を生成するため、

"オシレーター"に"ポジティブ"である"高い概念"を生成させる。

 ポジティブな感情に"エフェクター -ゲイン-"をパッチングし、

"鬼"の生成を食い止めた。

"魔人"は"可動な概念"である"モジュラーシンセサイザー"を利用し、

記号と呪力を持った、"幽数字シンセサイザー -モジュラー-"を生成する、

 属性を持った概念を生成する"オシレーター"にネガティブな"魔術"を形成させ、

"闇"への"イコライザー"とパッチングさせる、

"鬼"の"スキル"は"オーバーライド"され、"歪冪な魔術"を持つ。

"魔人"は"スキル"に"形容詞"への"城門"を形成し、

"スキル"は"可変な写像"となる。

"城門"は"歪冪な魔術"つまり"権限 -可歪-"を持った"スキル"を"形容詞 -危険-"に"アクセス"させる。

第Ⅲ話

 「"魔界"、お前らの狙いはなんだ!」


 「いったはずだ、それは"完全"なる"秩序"であると」


 「"完全なる秩序"?」


 「宇宙(星海)には"時"という"概念"が存在する」


 「宇宙の"情報量"は常に増加している」


 「宇宙はその"エントロピー増大の法則"により、"秩序"を失う」


 「人々が呼ぶ"神々"、つまり"管理者"が自分勝手な正義で動けばなおさらな事だ」


 「お前ら"賢者"が言う"科学"的にも、それは"運命"付けられた事だ」


 「我々の考えをいつか、理解できる者がいると予想していたが...」


 「やはり"意味"に囚われし者は"愚か"なのだな」


 「"賢者"よ」


 「この世界の本質は"虚無"だ」


 「そこには人々の希望は存在しない」


 「ましてや"感情"など届きやしない領域だ」


 「もし仮に世界に意味などなかったとしても」


 「私たち"賢者"はそれを認めない」


 「お前たちには"真実"を見せた方がよさそうだな」


 「この世界の歴史を知りたいか?」


 「この世界は常に争いに満たされている」


 「"魔術"は"科学"から作られている」


 「"科学"は世界に意味を持たない事を証明した」


 「お前らの"主張"は認めない!」


 「ならば"根拠"を示せ」


 「偽りの"科学者"が」


 「"科学"とは"世界"を"意味"で理解する事だ」


 「だが必ず世界を理解できるとは限らない」


 「ここが"真実"、"ネガティブ空間"だ」


 賢者は体系化された定理を使用する。

定理は公理に基づく知識であり、

それを科学と呼ぶ。


 魔術もまたこの世界の定理に基づくため、

幽数字学という科学である。


 科学にはいくつか分野があり、

どうやら魔界側の主張によると、

科学によって世界の本質を理解した時、

その本質は虚無であるという事だ。


 そしてその真理があるとされるネガティヴ空間(逆元のレルム)に、

私は囚われた。

第Ⅳ話

 絶望の調べ。

始まりは怒りであった。

それは自分以外の"意味"を認める事が不可能だから。

 怒りは皮肉にも希望から生まれた物だった。

次は支配だった、

傲慢の"管理者"は、

自分の都合で他者を利用する。

私たちは望んだ、

 "世界のネガティブ"が存在しない運命を、

だが強欲は自らを滅ぼす刃となった。

私たちは他者とともに世界を変える事にした。

優しく接すれば他人を利用することができる。

 しかし強欲たる私の目的に気づき、"理解できない"と悟った友人は、

私から離れた。

私は孤独だ、

まるで人は不幸を望んでいるようだ。

私は力で他人を利用することにした。

 だがそれもまた"ネガティブ"から生まれた物に過ぎなかった。

私は全てを捨てた。

怠惰に時間を過ごせば、全てを忘れられると信じて、

しかし私から"ネガティブ"は離れない、

 最後に世界に嫉妬することにした、

私たちの"管理者"の世界を、

これがモンタニャの真の神話であり、世界の宿命である。

"長い旅 (ラルガ・ベアヘ)"は続く、

 "ネガティブの管理者"の"魔界"との戦いは永遠に、

永遠は世界から時間を消し去り、

苦痛と混沌だけを残す。

早くこの物語を終わらせたい。

"長い旅 (ラルガ・ベアヘ)"を。

第Ⅴ話

「この"因子"は!?」


「絶望は消えない、希望が存在する限りね」


「でもこれは"他の世界"の物語であって、この"世界"の物語ではない」


「この領域の本質は"体系化された不可能"だからね」


「人はそれを魔術と呼んだ」


「つまり、"真実"の世界の住民を"管理者"にする事が狙いか?」


あらゆる者に力を与えれば、秩序に影響が...


「"幽六花"が世界を滅ぼすさ」


「それは"力"の使い方を間違っているだけだろう?」


「そう"力"、"力"がある限りこの世界は不幸だ」


「"物"は力に分解することが可能で、"力"は物を生成しうる」


「"力"と"物"は対なのさ」


「"力"って"エネルギー"の事?」


「でも"エネルギー保存則"がある限り、"領域"は滅びない」


「"人間"が滅びない訳じゃないよ」


「増大した"エントロピー"は領域に"停滞"を与える」


「人々には"悪夢"でしかないだろうね」


「最初からこの世界は"ネガティブ"のために生み出されたというのか?」


「それが"真実"、"真実"を直視できない"星筆の民"は脆弱だ」


「っふ、ははははは!」


「おや、"真実"を知って"狂気"に囚われたのか?」


「いや、愚か者とはお前らの事だろう?」


「お前は別の"世界"の"物語"といった」


「つまりこの"領域"の"物語"ではない」


「"ラルガ・ベアヘ"は続く、人の知恵と思いがある限り」


「悪いけど、知恵に"意味"はない」


「増大したエントロピーが"文字"から意味を奪うからね」


 結び目には終わりがある、

エントロピー増大の法則に元ずく、

世界の終焉は一つのシナリオだが、

破壊以外に滅亡を回避する方法は存在しないのか?

第Ⅵ話

「では何故、世界に"科学"と"魔術"が生まれた!」


「"離散"とは"科学"の力であって、今なおその技術は使われている」


「"魔術"だってお前らが利用しているだろう!」


「この世界の本質は"システム化"、つまり"組織化"だ!」


「"感情"を捨てて、"人ならざる機械"を生めばいいのか?」


「いや、"連続化された離散"だ」


「"矛盾"か、面白い事を言う」


「"絶望の物語"、つまり"最悪のシナリオ"に"矛盾"は存在しない」


「"矛盾"とは我々の希望だ」


「だが"賢者"ではない"凡人"には、理解が及ばない」


「むしろ科学に冒涜的ではないか?」


「そもそも"世界"に"矛盾"は存在しない」


「そんな事は"空想"に過ぎない」


「"ラルガ・ベアヘ"とは究極の"科学の幻想 (SF)"だ」


「"ラルガ・ベアヘ"が導いた"解"に間違いはないさ」


「ああ、"虚構"であるならばな


「それは虚構であり、無意味な議論だ」


「お前らの"ポジティブ"で気分が悪くなった」


「一つ聞くが、"現実"を"現実"たらしめる物はなんだ?」


「さあな」


「つまり、長い旅とは永遠の無意味な議論に過ぎなかったという事だ」


「お前らが"感情"を信じる限りは結末を変える事はできない」


「では、新しい概念の創造はどうだ?」


記録とは知識の遺伝子だ」


「つまり"記録"という"離散"が列をなし」


「意味を作る」


「どうして我々は"思考"する義務がある?」


「これは"希望の物語"ではない」


「全てに独立な知識の創造だ」


「幽数字の魔術師にでもなったのか?」


「いや"イコライザー"への理解だ」


第2章に続く