離散の使い

序章

三角形の床。


壁には幽字が書かれている。


天井には"離散"と言う、文字が書かれている。


大きな三角形の中央に影がいた。


つまり、この魔術世界は、


周りの世界の魔力を吸収し続けるだけの、シンプルな世界。




影は風の魔法を発動させた。


私は幽六花で風を無効化させ。


影の背後には赤い槍が存在していた。


影は消えたが、


新たに3つの影が現れる。


三角形に幽六花が咲き。


影は消えた。




私は城に帰った。


「"離散の使い"を名乗る人物が現れた」


「被害が大きい」


「私が同行する」


私は再び転送装置に乗った。




そこはフロルの村の近くだった。


このまま放置するのは危険だ。




私の隣には隊長がいた。


隊長とともに異常な魔力の反応がある方へ向かった。




離散の使いを名乗る人物は隣のセルバ森林に移動していた。


目的は不明。




「まて!」


「私は幽六花隊の隊長だ」


「お前の目的はなんだ」


「彼だ」


「彼?」


「彼が法則性の欠落をこの世界から破壊する」


「この不完全な世界は完成された法則性に依存すべきだ」




「完成したものは成長できない」


「お前は成長を放棄するのか?」

第Ⅰ話

「"彼"は連続的で秩序を失った偽りの平和に終わりを与える」


「"彼"の世界こそ本来あるべき世界なのだ」


私は魔力の槍を形成し、


不可視の衣を纏い。


フロルは"百花繚乱のフロル"となった。




隊長は長剣で"離散の使い"の背後から攻撃した。


しかし"離散の使い"は存在しなかった。




「我々は離散の力に満たされている」


「我々は"彼"の力の一部を受け継いでいる」


「"彼"の目覚めが我々の希望」


「"彼"への妨害は...」




私は薙刀で斬りかかった。


当然、"離散の使い"は回避する。


しかし、回避した先に隊長が存在した。




"離散の使い"は空に立っていた。


"離散の使い"から巨大な魔法陣が描かれる。




「簡単な魔法ね」




オスクリダドが魔法陣を改変し、


魔法の対象は"離散の使い"に変更される。


"離散の使い"から黒い光が放たれ。


虹色の粒となり"離散の使い"は世界から消滅した。




「人の姿をしているが」


「もうすでに彼らは死者」


「魔力に生かされている、一種の"亡霊"」


「おそらく"彼"は...」




そういうとオスクリダドは微笑み...




「さあ、帰りましょう」

第Ⅱ話

幽六花隊では"離散の使い"対策のために新開発の、


魔法の訓練が行われていた。




新魔法 「幽六花 "茨"」


幽六花から茨と呼ばれる、属性が付与された、


物理的攻撃力を持つ魔法。




幽六花隊で最も優秀な魔法の使い手、


アヤメもこの魔法を習得した。




「モンタニャ地方で"離散の使い"が確認された」


「トルエノが同行する」




いつものように、転送装置から"モンタニャ"に向かった。




転送先の座標に"離散の使い"が存在していた。




「...」




トルエノが瞬間移動で背後から攻撃する。


幽六花の吹雪から"茨"が生成される。


その後、私たちは衝撃的な事実を知ることになった。




"離散の使い"は茨を全て斬り捨て。


"離散の使い"は魔法を使用し。


私に対して体術を使用した。




それは本来ならば、発生しない状況だった。


なぜならば、"クラス"は同時に1つまでしか扱えない。




つまり、"離散の使い"は「魔法剣士」と「格闘家」。


2つのクラスを同時に扱っていた。


圧倒的に戦力が足りない。




「トルエノ、撤退だ!」

第Ⅲ話

隊長は目を閉じて言った。


「2つのクラスと"影"...」




オスクリダドは言った。


「ねえ、大きな魔術世界の存在を感じる」


「きっと、その魔術世界で魔力を集めている」




「その魔術世界を停止させれば...」




オスクリダドと私は魔術世界に向かった。




そこは塔だった。


地面は白く、空は緑。


塔は桃色で、やはり塔には"離散"と書かれていた。




私たちは塔に入る。


影を斬り、前に進む。


とても高い塔だった。


最上階に到着すると、


大量の影が現れる。


それと最上階には、


魔法陣があった。


魔法陣を破壊すると、


影は消えていた。




城だ。


私は入口に向かった。




「各地で"離散の使い"が弱体化しているようだ」


「ただし、"離散の使い"はまだ活動している」


「再び"モンタニャ地方"に向かってほしい」


「彼も同行する」

第Ⅳ話

トルエノと私は再びモンタニャ地方に向かった。


"離散の使い"が存在していた。




私は薙刀で"離散の使い"に攻撃を試みた。


"離散の使い"は剣で攻撃を無効化した。


背後からトルエノの攻撃。


"離散の使い"は魔力で防御。


しかし、茨に"離散の使い"は包まれた。




幽六花隊の城。


その地下でアヤメはハンバーグを食べていた。




「それにしても、面倒な敵ね」




オスクリダドが地下に来た。




「また、一緒にお買い物しない?」




「うん!」


「装備を整えなきゃ」




フロル地方の防具屋。


多くの防具が並んでいた。


私は防具を眺めていた。




「これは?」




「それは"幽字花のワンピース"」


幽字によって、強力な魔法も扱えるようになりそうだ。




「これください」

第Ⅴ話

静か...


ただ、静か。


ここはベンティスカ大雪原。


この地にも"離散の使い"が現れた。


私は幽字を纏い、現実を受け入れる。




"離散の使い"は"幽六花"を模した何かを操っている。




「ああ、これこそが"歪冪花"」




"離散の使い"は"幽六花"を模した"歪冪花"を操る。




咲く。


ベンティスカに二種類の花が咲いた。




「ああ、訴ふる六花は泡沫に消ゆ」


「さあ、炎よ天をも破れ!」




白は赤い"歪冪花"に染まる。




「問おう、何故"命"は死と共存できないか」


「我々は"不完全"なのか?」




「ああ、そうだ」


「不完全ゆえに、感情に依存する」


「感情は"生"と共存できない」




「答えよう、"感情"が"命"と"死"を共に肯定することを」


「今ここで、証明しよう」






静か...


ただ静か。


けれどもベンティスカの地にて、


戦闘は長く続いた。




「"歪冪花"...」


「歪み、蝕み...なぜお前はそれを肯定する?」




「"幽六花"...」


「"幽世"に咲く、火を消す"六花"、"亡霊"はお前だ!」




「忘れたか?」


「"感情"は"命"も"死"も肯定する」


「"離散"もまた肯定する」


「けれども"否定"はできない...」




「"否定"もまた"肯定"されなければ...」


「それは、"矛盾"だ!」




「いいえ」


「"矛盾"はしていない」


「ただ...」


「"否定"はできる」


「つまり」


「"不完全"ゆえに"反論"できる」


「そして」


「お前もまた、こうして"反論"できる」


「ならば」


「"正解"は無い」

第Ⅵ話

「感情は罪だから、否定しなければとは」


「"耳が苦い"人だね」




「ベンティスカの言葉か」




「君の居る世界は真っ暗なんだね」




「何故、冬は永遠では無いのか」




冬は好き。


雨が好き。


私は少し変わっている。




アヤメはとても怒っていた。


アヤメは感情を大切にしている。




ここは花に包まれていた。


最初から最後まで。




「約束しよう、"歪冪花"は全て散る」


「証明しよう、"幽六花"よ」




影が現れる。


"離散の使い"は影も操る。




「いつまで、"離散の使い"は存在している?」




「今は眠るよ」




「けれども、季節のように何度も現れる」




「なぜ、教える?」




「季節はある意味、不老不死だ」




「季節が尽きる時、それは時が止まった時」




雪に包まれると微笑みはより輝く。




私が、この地に幽六花という花を咲かせた。




影は消え。


"離散の使い"はしばらく現れることは無かった。


けれども、


1つ気になる事を言っていた。




「季節が尽きる時、それは時が止まった時」




この地に残された僅かな幽字。


私は時が止まったかのような感覚に包まれた。




その幽字に"彼"の復活の情報が存在していた。




「しかし」


「彼らは"眠った"」


「ならば」


「"目覚める"までに私たちが...」


「"離散の使い"はとても強かった」




「つまり」


「まだ私たちは成長できる」


「"不完全"ゆえに」

第Ⅶ話

ここは幽六花隊の城の地下2階、


再び幽六花隊の城は増築されたのだった。




「"歪冪"な部屋だなあ」




彼は幽六花隊の隊長。




「"歪冪"な?」




「"歪冪"の定義!」


「好ましく無い物が増えること」




「使う機会、あるのかな」




実験用の機械で、


とても歪冪な空間だった。




「機械って、ほんとに大丈夫なの?」




私は首を傾げる。




「量を管理すればな」




「トルエノ!」




「何故、機械を?」




「これはオスクリダド様からの指示」




「オスクリダド?」




「ええと、"城門"だか?」




「あるいは"星筆"とか...」




「よくわからん!」






「ええ、本当に歪冪な空間だわ」




「オスクリダド!」




「"星筆"無くして"彼"は滅びぬ」




オスクリダドによる説明が始まった。


私のみがその意味を理解できた。




月が管理する"ルナの筆"。


太陽が管理する"ソルの筆"。




世界にはいつの日か"ソルの筆"の守護者が現れる。


オスクリダドは"ルナの筆"の守護者。




2つが世界に存在している状態で"星筆"は現れる。


私たち幽六花隊は"星筆の試練"を実行できるように。


"城門"を開く必要があった。




第2章に続く