未定義の試練

序章

山の中に"歪冪の使者"は存在している。


時間は過去に戻ったり、未来に進んだりする。


僕は山から森に向かって再び"歪冪の使者"と邂逅する。


システムは例外を吐き、未定義の処理を実行し、


"秩序"は失われる。











そして、




"バグ"が試練を覆った。








本来、魔術が"バグ"を持つことは少ない、


しかし、"歪冪の使者"が操る、"未定義"により、


"バグ"は発生する。




歪冪の使者は本来存在しない、


"?属性"を操る。




属性は、


光、闇、風、雷、水、氷、炎、土


の8つしか存在しない。




歪冪の使者は言った。




「上と下の"3次元属性"光、闇」


「角度が作る"2次元属性"風、雷、水、氷、炎、土」




「我々が"魔術"を操る時」


「広がりを持った"数字次元空間"上で魔術を扱う」


「その空間こそが"属性"だ」




「そして」


「その属性は"4次元属性"」


「我々が存在している"3次元世界"には存在しないものだ」




4次元は点の向きを操る。


点の向きや位置は魔術を扱う際、


"四角"の箱に"数字"が並ぶ。




それを"行列"という。









?属性により、"システム"は機能しない。


時間や空間という概念は壊れた。




僕は音から"システム"を作ろうと試みたが、うまくいかない。




この"バグ"を持った世界で、


"色"や"視覚"は機能せず、


まるで別の概念で意識を理解するような感覚になる。




突然世界に意味が戻る。




「ベガは言っていた」




「世界はそこまで脆弱では無い」




この"国"を持った"世界"、


つまり"星"では"ネットワーク"が存在する。




世界の"システム"が壊れる時、


世界が自分を保護するため、"ネットワーク"という"システム"から、


再び自分の"システム"を"ダウンロード"する。




今回は、"コンピュータ"上の"ウィルス"とよく似ている。








「..."システム"が回復したか」

第Ⅰ話

僕は"歪冪の使者"から、


"魔術"を扱う、"権限"を奪われる。




"魔術"を失った僕は、"妖精"の"妖力"を借りて、


"妖術"を試みる。


"妖術"の"代償"は"妖力"を参照し、


"魔力"が"妖術"を実行させる。




「情報では"参照"」


「魔術では"城門"」




"演算"を持った"集合"である"空間"から"空間"へ"写像"はつながる、


それを応用して"場所"の"点"を対応させる。




そして"写像"と"城門"はほとんど違いがない。


しかし"城門"と"参照"には違いがある。




"城門"は"空間"と"空間"の"対応"。


"参照"は"場所"の"型"。




"城門"は元になる"集合"、つまり"空間"が必要だが。


"参照"はその必要が無い。


そして"参照"を"集合"に入れる事も可能だ。




僕は"幽字"を並べ、"妖術"を"定義"する。


"定義"された"妖術"に"魔力"を与え、


"スキル"は完成する。




「"土妖術"!」




重い岩が"歪冪の使者"への階段を作る。




「"深い氷妖術"!」




"魔力"を持った"氷"の糸が僕の"杼"から形成される。


"歪冪の使者"は暖かさを忘れた糸に、その近傍は覆われる。




深い氷の糸は、"糸の海"となる。




しかし"歪冪の使者"は花の階段をのぼり、山は歪冪花に覆われる。














そしてそこには、紅く長い髪に、永遠の紫を持つ男が存在していた。




「...魔王、私がお前の目的を全て肯定しよう」




「私は歪冪」




「"魔王"、"歪冪"」




「我らが"魔界"の"魔力"を肯定し、"世界"を"魔術"の空間」




「つまり、"魔界"が全ての"魔術世界"を支配する」




「私と、あいつの手によってな」

第Ⅱ話

「お前と魔王が"魔界"の"管理者"か?」




「そう私が"管理者"、そしてあいつが"魔界の王"」




管理者?




「"織姫星"の"管理者"も"月"の"管理者"も」




「全ての世界を、星を支配しようなどとは考えないはずだ」




「なのに、どうしてお前は!」




すると"魔界の管理者 -歪冪-"は答える。




「..."月の管理者"はどうだろうな」




「僕は"ベガ"から聞いた、"オスクリダド"は"ベガ"の友達だって...」




「なあ"管理者"って、何なんだ?」










「"管理者"は、"界"と"星"の全ての"権限"を持つ」




「我々はそもそも傲慢なのだ」




僕は言った。




「だったらどうして!」















「世界の秩序は永遠ではない」




「人はかつて"村"や"集落"で争っていた」




「いつしか異なる"大陸"が存在する事を知り、星の"国"もまた戦争を起こす」




「再び歴史は繰り返す」




「人は"宇宙"を知り、かつての"王"」




「つまり"国"の管理者はいつしか"星の管理者"となった」




「世界は常に"混沌"に覆われる」









「だが」




「私が"宇宙"を管理すれば問題ない」




「全ては"永遠"のために、我々は"混沌"から"秩序"を作る」

第Ⅲ話

"歪冪"は"幽文字列次元世界 -形容詞-"に、


魔術との"城門"を作る。


"魔界"の"図書館"に存在する、全ての"形容詞"が扱えるが、


"魔界の管理者"は1つの形容詞しか、使わなかった。




「..."歪んだ闇魔術"」




歪みを持った闇の力は、爆発するかのように増加する。




妖精は"光"の"妖術"を扱い、闇は消える。




「..."歪んだ闇魔術 -行列-"」




...闇の向きは、はるか遠くを見ており、


絶望のみが世界を染める。




僕は深い光の妖力に潜り。


闇の嵐から逃げる。




歪んだ空は大きな闇の大波に覆われる。


光が闇に飲まれる時、僕は光の布の中にいた。


光と闇が衝突する"無"は底が無いように深かった。














「...ベガ?」




「ようやく見つけた」










「まさか、もう1人"管理者"が存在するなんて」











「...歪冪!」




「私もまた"管理者"」




「"魔界"による被害が出ている」




「なら、私にもあなたを止める"権限"がある」

第Ⅳ話

城門の権限が奪われた"未定義の試練"は、


大きな月と日の属性の衝突により、"無"が空間を満たす。




「...管理者の"権限"を使い、"城門"の"権限"を奪ったか」











「僕は城門を開く事は出来なかったけど、"参照"させる事は出来た」








「"脆弱性"か、"幽六花"と同じとは...」







ベガは城門を開いた。




「逃げるよ!」




僕は城門に入ろうとするが、幽字の道はどこまでも続く。




「"処理"の"無限ループ"?」




「これが"離散魔術"?」




離散化された世界上で、計算をする。


それを計算機、つまりコンピュータという。




歪冪が現れる。




「"魔術構造 -無限ループ-"」




僕らがスキルを使う時、


それは"関数"とも表現できる、処理の組み合わせによって結果が現れる。




入力という集合から、出力という集合につなぐには、


いくつかの"処理"が必要だ。




"関数"を"処理"の集合とする時、


その"空間"に対する"スキル"が"魔術構造"だ。




"処理"を作る"意味"を持った"記号"を"字句"と言い。


"字句"の"集合"は"式"となる。


"文"は"式"を持ち、"構造"を作る。


"関数"や"クラス"は"式"と"文"の集合であり、


離散化された、記号の全体を"コンピュータ"の"プログラム"という。




"反復"の"文"により、


"世界"の"構造"が"無限ループ"となる。




"城門"という"世界"を"定義"する"文字"は"反復"となり、


"終わり"が失われた空間は、"時間"という"概念"が成立しない。




「"魔術構造 -分岐-"」




論理は魔術の定義を斬り、矛盾しバラバラになった意味は未定義となり、


バグを作る。















「残念だけど、ここまでは私の想定内ね!」

第Ⅴ話

世界に存在する多くの魔術師。


彼らはこのような考えを持っている。




「全ての物は"衝突"する"属性"の"集合"に作られる」

















ベガは僕が知らない、魔法陣を織った。




視覚を満たす、論理の記号は失われ。




"嘘"や"本当"ではない"矛盾"の"型"は消滅する。




「これは"論理"に対して"毒"を持った"物質"」




「まさか、"錬金術"!」




錬金術は知っている、


"術"の内、"応用術"に属する物だ。


ベガは"妖術"から"錬金術"を定義した。




"術"は大きく分けて"基礎術"と"応用術"が存在する。


"基礎術"は魔術、妖術、霊術、呪術などが有名だ。


"応用術"は錬金術、占星術、付与術、召喚術などがある。




あとは魔術の特殊な状態である幻術あたりだろうか。


また"術"と"法"の定義の違いは"スキル"と"技"の違いと同じだ。


"技"と"法"は"互換性"を持たないが、


"スキル"と"術"は"互換性"を持つ。


だがほとんど区別される事は無い。




ベガの錬金術により、


"向き"を持った"妖力"は、"融合"せず"衝突"する。


"結合"された"属性"は"物"となり、


"毒"が"空間"を満たす。


"妖術"の"代償"に"プログラム"は停止し、


"城門"により"天衣無縫の星"へ移動する。




「どうにか逃げれたね」




「そういえば"魔力の管理者"は?」




「"第Ⅱ歪冪花城"」




「そこに彼らは存在している」




最終章に続く