あふれる影

序章

ここはモンタニャ。


私は1人で"抹茶"という物を飲みながら。


月を見ていた。


そして。


気が付けば眠っていた。




ここは眠りの中。


つまり夢だ。


いろんな植物があり。


虹色にも見える。


川だ。


川もまた虹色。


虹に包まれた、


まさしく文字通りの夢。


しかし。




「なあ」


「夢と現実は何が違う?」




「誰?」



「さあ?」




男だ。


ただ。


人の姿をした影にも見える。


男は双剣を持っている。


「恐れる必要はない」


「連続は影に包まれる」


「そうあふれる影に...」




「あなたに連続を影に包む権利は無い」


魔力の槍で男に攻撃する。


男から影がこぼれる。




「俺は影だ」


「影に痛みは無い」


「だから」




「消せよ」

第Ⅰ話

ここはモンタニャ。


そろそろ帰ろう。




私は転送魔法装置を起動し。


城に帰って寝た。




「なあ」


「夢と現実はどうして違うんだ?」


「もう悪夢は現実になり始めているのに」


男は目を閉じる。


「だから」


「消せよ」




「けど」


男は目を開く。


「お前らもまた世界を偽りの平和で飾る権利は無い」


男だ。


また同じ。


男は双剣で斬りかかってきた。


薙刀を回転させ。


攻撃をはじく。


「また会おうな」


「待て!」


部屋だ。


私の顔には大量の汗が流れていた。


今日は休みの日だ。


買い物にでも行って、


気分を落ち着けよう。


扉を開き、


無理解の廊下を進んで。


浮遊する円盤に乗り、


城の入口へ行った。


「ねえ」


「どうしたのアヤメ」




「悪い夢を見た」


「今日は仕事無い」


「だから買い物に行こう」


「オスクリダド」




「そうね」


「あの知識中毒者を捕まえて」


「最近はずっと平和だからね」




「うん」

第Ⅱ話

ここはビオレタの村。


紫に包まれた森の奥にこの村はある。


限られた人間しかここに立ち入ることは許されない。


"月"の関係者、ベンティスカ王家の関係者、ベンティスカ王国の関係者。


村には滝が多く。


高低差の激しいのが特徴。


植物の中に建物があったり。


魔力で育つ植物が明かりだったり。


この村には妖精と呼ばれる生物が生息している。


妖精の一部はフロル地方にもいる。


フロル地方とビオレタ地方の関係は不明。


そんなビオレタの村に、


オスクリダドと私はお買い物。


紫の薔薇が覆うゲートを過ぎて。


噴水がある広場へ。


ここで自由行動。


あとは指定の時間に食事をとる予定だった。


予定だったのだ。




「じゃあ自由行動ね!」


「うん!」




私は始めに武器屋に向かった。


武器屋は地面の中にある。


「いらっしゃい!」




私は商品を眺める


できれば使い慣れた薙刀が良い。


薙刀は1つしかなかった。


「すみません」


「これは?」




「それは"魔力薔薇の薙刀"」


刀身には薔薇の模様が彫られてあった。


また柄にも薔薇の装飾がされていた。


「それは魔法を使うと赤く光り」


「攻撃の威力を向上させる」




「これください」

第Ⅲ話

次に私は雑貨屋に向かった。


その頃にはもう悪夢の事など忘れていた。




雑貨屋には様々なアクセサリーがあった。


私は髪飾りを探していた。


そんな中、1つの髪飾りに目が留まる。




「これ、なんですか?」


「それは、"紫アヤメの髪飾り"」


「魔法を強化する、宝石が埋め込まれているよ」


素材は魔法ガラスだが、植物らしい生命力も感じた。


どこか雅な雰囲気があり、とても好み。


半透明のアヤメからは、赤い光が漏れていた。


そして魔力も感じた。


「着けていいですか」




「はい」


鏡の前で自分の姿を見る。


にっこり。


お悩み中。


ぷんぷん。


悲しい顔。


驚いた顔。


とても似合っている。


「これください」




「緊急連絡だ」


「ええ?」


「"黒紫の森"に正体不明の魔力異常体の発生」


「アヤメはすぐに向かうように」




「わ、わかった」




まさか。


まさか、あの悪夢は。


それは危険を知らせるメッセージのような物だった。


つまり私の魔力がその存在に気づき。


私も無意識のうちに、装備を整えていたのだ。


むしろ幸運な夢だったと。


そう思うアヤメだった。

第Ⅳ話

ここはビオレタ地方、最深部 "黒紫の森"


並みの人間には耐えられないとても強力な魔力に満たされている。


魔力をエネルギーとして、成長する植物は、


強すぎる魔力の影響で紫がかった黒に変色する。


だから"黒紫の森"。


そんな紫の光さす黒の森に、この森の木々より黒い影が現れる。




「...」


「私はベンティスカ王国の幽六花隊のアヤメ」


「私の仕事はあなたの調査と戦闘」




「...」


影が躍る。


薙刀に幽六花を宿し。


薙刀が赤く光る。


薙刀で斬る。


影がこぼれて、少しだけ小さくなる。




しかし影は大量の闇の魔法を使用。


私は魔力の槍と躍る。


槍もまた赤く光り。


赤と黒と紫で空間は染まる。


「待たせたね!」


「オスクリダド!」


月の魔術師 オスクリダド と合流する。


「闇の魔法には、闇の魔法を」


オスクリダドは"妖怪"を形成し使役する。


「行きなさい、"雪女"」


空間に白が加わる。


影はさらに魔法の量を増やす。


けれど影はもう小さい。




私は槍を纏い赤の渦を描く。


オスクリダドは雪女に周辺の魔力を吸収させ。


白い線が描かれた。


影は消滅し。


代わりに静寂を得た。

第Ⅴ話

ここはクラーロ神殿。


その中央。


天井は開いていて。


周りには色んな色の花が咲いている。


とくに目立った装飾は無く。


どこか寂しい場所。




なぜ私がここにいるのか。


影は2つ現れたのだ。




静寂に満たされた視覚の中に異常な黒が存在している。


黒からは青い光が伸びていて。


このまま放置するのは危険だ。




今回はトルエノが同行している。


背後から奇襲し、


影は少しだけ小さくなる。




トルエノは瞬間移動の魔法を習得していた。


私の視覚の中で、トルエノが点滅する。


トルエノは点滅し、回転しながら影を斬る。


影もまた瞬間移動をして。


2つが視覚の中で点滅する。




私は影に白い花を咲かせた。


闇は光を嫌う。


私の前に影が現れる。


けれど、


私のいたところには赤しか残っていない。


なぜならば、


影の後ろには2人がいるから。


影は少し小さくなり。


青い光が回転する。


2人はジャンプして。


宙返りをして。


位置を交換して。


影の粉が舞い。


影は小さくなる。


影は闇の線を放った。




空間に黒い線が走る。


回避に集中して。


同時に魔力を発散させる。


影が魔法を休むと。


影の後ろに剣士が現れる。


影はとても小さくなる。


影は赤い槍に覆われて。


影は消えて。




2人も消えた。

第Ⅵ話

幽六花隊の城は4階建て。


その内、2階から4階まで、


全て隊員の部屋。


1階は入口で、食堂などは無かった。


しかし新たに地下1階が増築される事になった。


地下1階の食堂でハンバーグを食べる者がいた。




そうアヤメはハンバーグが大好きなのであった。




アヤメは自室に戻り。


少し眠ることにした。




目覚めた時、隊長から連絡があった。


「魔術世界を破壊してほしい」


「座標を転送する」




魔術世界とは文字通り、魔術によって構成された世界で。


特殊な方法でのみアクセスできる。


幽六花隊の技術なら侵入は簡単だ。


悪意を持って作成された魔術世界も存在し、


そのような世界はすぐに破壊する必要がある。


ほかの世界にも影響を与える可能性があるからだ。


魔術世界は高度な知識がなければ作ることができない。


つまり破壊もまた容易では無い。


私は転送装置に乗り、


視覚に満たされた幾何学模様と、魔術の記号を眺めていた。


離れた世界に移動している間は、常に魔術が走っている。


魔術の記号は"幽字"と言い。


幽字の列を"幽字列"と言う。


文字列よりも幽字列の方が魔術に適しているが。


解読が困難となる。


文字とは会話に必要な情報を持つ記号であり。


幽字は会話に使うのには適していない。