プロローグ

序章

 「不思議な街…」


 「でもどうしてだろう、何処か安心感も覚える」


 そこは不変の都、

かつて第Ⅰカヴンと魔界の使者である暗黒世隊が戦った場所。


 「気をつけて!」


 「”終焉”!?」


 「まさか”終焉転調”の刻が…」


 「須臾の六花に幸運を願って」


 星筆の管理者、織姫、アヤメは”終焉”と戦っている。

“終焉”はカタストロフィー空間を作り出す。


 「管理者権限使用、試練の生成」


 “終焉”は妖術世界である試練失敗の代償で消滅する。

パチパチパチパチと音がする。


 「おめでとう、君たちは”群舞の進行”を見届けた」


 星筆の管理者は言った。


 「”混沌の管理者”!」


 「”進行”?」


 「ああ物事にはフェーズという段階があるだろう」


 「群舞の因子の和音の進行は理論を成す」


 私に指をさした。


 「星筆の管理者!」


 「君は我々に試練を与えていると思っているようだが」


 「試練を与えているのはこの俺だ」


 「進行開始、マイナーの鍵」


 和音は“進行”する。


 「ゲームを理解した者が群舞を手にする」


 「だがまだ終焉は群舞しない」


 「では、また会おう」


 私は混沌の管理者を攻撃しようとするが…

逃げられた…

第Ⅰ話

 「不変の都…」


 「これがこの街の名前…」


 「報告します」


 「勇者は世界樹に存在しているようです」


 「そうであるべきなのかも知れませんね」


 モンタニャ戦士団は、

世界樹の蝶の塔を起点としている。


 「そう言えば”隠し扉”を使えば時空を超えられんじゃないの?」


 「私の時空を越える能力は”閉じた平行世界”に制限される…」


 「つまり開いた平行世界に移動する事は出来ないのか…」


 閉じた平行世界は同じ時空の異なる選択を辿る世界だ、

開いた平行世界は同じ時空の異なる運命を辿る世界だ。


 「おそらく先程会った超能力者達は時空を越えれます」


 「世界転調…それはある種のコラージュ化を意味します」


 「おそらく彼らが居た時空こそがこの不変の都なのでしょう」


 魔物が現れた。


 「そう言えば今のカヴンの継承武器は?」


 「”継承武器”…」


 「私は星筆を守護しています」


 「管理者の力ならソルの筆とルナの筆も強制的に継承できるはず」


 「いや、それは難しいかも」


 管理者達は魔物を倒した。

幾ら管理者でも、"王の継承武器"を構成する接続物質の操作は難しいはずだ。


 「なんとか勇者達と連絡出来ればなぁ…」


 「私達管理者でさえも時空を越えることができない…」


 時空を超えたり、

平行世界に移動するには"隠し扉"を使う必要がある。


 「いずれ彼らとも再会できるでしょう」


 無人の街だ。


 「あれはカフェ?」


 「どうして人が居ないの?」


 「アカシックレコード(圕の圏)に全ての記録が記されているはず…」


 「?」


 巫女は首を傾げる。


 「どしたの?」


 「不自然です」


 「うん?」


 「この空間は境界が不安定…」


 「境界が?」


 「あと、”層”も特異…つまり正常ではありません」


 「そんな事を出来るのは混沌だけか」


 「しかしこの街に来た目的がわからないと」

第Ⅱ話

 「ここは?」


 「”隠し扉”の先に…」


 それは”鎖晶”でできた船だった。


 「”境界”を泳ぐ船…」


 「悪かった、戦士団」


 「誰!?」


 「魔王!?」


 魔王は肯定する。


 「今後は私も同行させてくれないか」


 「あなたは幽六花を滅ぼした…」


 「悪い…」


 幽六花の国。

本来は私が女王になるはずだった。

しかし全て”魔界”に奪われた。

だが、魔王は混沌の意志(ボイド)に囚われていた。


 「俺はただ友と共に居たかった」


 「しかし混沌は余りにも強大すぎた」


 「いいでしょう」


 「ベガ!」


 「今は皆が”混沌”と決着をつける時」


 「もう魔界も戦士団も関係ない」


 「感謝する」


 こうして”魔界”は戦士団と共に”混沌”に抗う者となった。


 「気をつけろ」


 「もはや本当の敵は”混沌”ではない」


 「えっ?」


 「どう言う意味ですか?」


 月明かりに照らされる部屋。


 「油断するなぁ!戦士団!」


 魔王は結界を形成し攻撃を防ぐ。


 「”幽数字の管理者”」


 「私は平行世界のアヤメ」


 「…やはりか」


 「全ては混沌に帰り、世界は永遠の闘争を続けるのだろう」


 暗黒物質からなる意志、それが混沌(ボイド)。

幽数字の管理者、いや平行世界のアヤメは魔力の槍を放つ。

こちらの世界のアヤメも魔力の槍で防御する。


 「律動よ!」


 律動は平行世界のアヤメの魔力の槍を破壊する。


 「歪め!」


 「群舞せよ六花」


 平行世界のアヤメの”歪冪花”を”幽六花”で破壊する。

そして薙刀で鍔迫り合い。


 「”反物魔法”」


 錦が平行世界のアヤメを覆う。


 「数的に不利だ」


 「確かにな」


 「だが混沌はもう始めてしまった」


 「歪冪の魔術世界化の事か?」


 「いや」


 不変の都に和音が轟く。


 「”終末へのディミニッシュ”」


 「ディミニッシュ?」


 「ああ」


 「終末の響きだ」


 門は開かれる。


 「ここは?」


 「報告、次元の型は文字列型」


 「”ディミニッシュ次元空間”です」


 「ディミニッシュの場にして、ディミニッシュの世界か」


 「ディミニッシュそれは”経過”する和音」


 「最後の和音と最後の転調が行われた時」


 「終焉転調の時…」


 「世界は全て混沌に飲まれるのだ!」


 「そうだったのか」


 「どうした」


 「恐怖の余り、何も感じられないのか?」


 「いや」


 「お前達の”計画”を真に理解した」


 「各時代の”世界転調”は真の終焉を迎えるために」


 「”終焉転調”のために存在していたのか」


 「ならお前達に勝ち目はない」


 「それはどうだろう」


 「行け!人魚姫!」

第Ⅲ話

 「戦士団の世界転調」


 空間の”階”、つまり”スケール”が変化する。


 「本物の管理者に勝てると思っているのか?」


 「お前が最初の”旋律の管理者”か」


 「だが管理者は一人ではない」


 「轟け!和音よ!」


 「これは次元が”希望”のオーギュメントか」


 「”文字次元の和音”すらも操れるとはな」


 「まあいいさ、また私とは再会する」


 「待て!」


 元いた空間に戻った。


 「なあこの船使えるんじゃ無いか?」


 「”鎖晶”の船か」


 「これなら境界を越えられるはずだ」


 「鎖晶船、システム起動します」


 「座標を指定してください」


 「”カレント時空のアカシックレコード”と」


 「了解です」


 「報告、境界領域の無風化」


 「対凪マスクを使用しますか?」


 「アヤメ、スオーノ、これを」


 「これは?」


 「管理者には問題ないけど、旋律の花に影響を与えるから」


 「わかった」


 花の様な結晶はまるで旋律の花の様。


 「ここは?」


 「鎖晶世界」


 「境界の領域」


 「境界…」


 「もうすぐ着くよ」


 各時空に存在している”ライブラリ(圕)”。

“ライブラリ(圕)”にはその時空で起きた事象を全て記録されている。


 「スオーノ、アヤメ」


 「ここから先は管理者と上位クラスの存在しかアクセス権限を与えられていない」


 「2人は好きに閲覧しているといいよ」


 「しばらく時間がかかるよ」


 「ああ」


 「ここにある”書”にアクセスすると」


 「書に存在している旋律の花に魂のみを移動する”回想”を行える」


 「要するに意識のみが書に入れる訳か」


 「混沌の勢力はどうするの?」


 「元混沌サイドの俺が見張る」


 「混沌の力に最も熟知しているのは俺だからな」


 「巫女、この時空の記録を辿って」


 「はい」


 「私たちはこの時空に存在していたはずのあの超能力者達の記録を閲覧しましょう」


 「あら、楽しそうじゃない」


 「オスクリダド?」


 「勇者にルナの筆を継承させた後何をしていた?」


 「スパイかしら」


 「なんだと?」


 「でもいい情報を聞き出せました」


 「混沌の本当の意味を」

第Ⅳ話

 「混沌の本質は・・・」


 「真偽の型である真偽値同士の演算」


 「連続する”論理演算”ね」


 「論理演算って離散的なんじゃないの?」


 「ええ、混沌のみが論理演算を連続化する事ができるわ」


 「各世界で論理演算を扱う場合、連続の値を扱う事は想定されていない」


 「要するに脆弱性を操る事ができるのよ」


 なぜならラルガ・ベアヘの世界は元は仮想世界であるため、

ラルガ・ベアヘの演算は"本来連続ではない"。


 「幽六花の国と同じか」


 「ええ、私が教えた魔法は尖り、”尖点”を持たない事を想定している」


 「優秀なハッカーの集団の様ね」


 「じゃあどうすればいいんだ?」


 「毒には毒を返すのが私の趣味よ」


 「混沌の世界をハッキングすればいいだけ」


 「どうやって?」


 「実は混沌の住民は呪われている」


 「旋律の花を離散化し、論理演算で不正なプログラムを実行できる呪いを」


 「離散化された旋律の花に於いては連続の値を扱う事を想定していない」


 「その場合、全ての原因を齎す”効果”は無効となる」


 離散化された旋律の花は効果を持ち、

その効果の条件を満足しない場合、その効果はその時点で失効<ディスペル>される。


 「効果を失効させられるのか」


 「それともう一つ」


 「”星音”は管理者よ」


 「ただ彼の力は余りにも強大ね」


 「”幻影の猫”の名前は聞いた事があるかしら」


 「伝承に伝わる伝説の存在か」


 「ええ」


 「そして失われた”召喚術”を操る」


 「ほう、”召喚”が出来るのか」


 「私の知っている事は以上よ」


 「オスクリダド、貴女はこれからどうするの?」


 「私が幽六花を滅ぼした恨みを忘れているとでも?」


 「魔王、本当は貴方が嫌いよ」


 「でも…」


 「…私は”賢者”と共に”秘薬”を作るわ」


 「ああ」