深海に向かう花
序章
ある"時空"は"層"からなる。
ここでは一般的な時空の"層"構造から話そう。
"最上層 レイヤー0"は"肉体"が存在する、通常のレイヤーだ。
次にレイヤー1は旋律の花である。
これは個人に割り当てられた精神の領域だ。
その下に"レイヤー2 旋律の雲海"が存在し、
このレイヤーにソーサラーがいる時、全ての意識と混ざり合った状態になる。
その下は"幽世"であり、"死"と隣接する領域である、
そのため、このレイヤーに移動、あるいはこれ以上の領域に移動するのは危険だ。
記憶因子を再生する。
"レイヤー i"
[賢者システム] ログイン成功。
[星筆の管理者] ok, 私の旋律領域に切り替えます。
おかしい。
レイヤー i、
つまりレイヤーが虚数の領域...
ここは一体?
第Ⅰ話
まずは私は"推論"を行うことにした。
レイヤーがiである。
つまりここは"虚の場"である可能性が高い。
しかし、このエミュレート空間内のメモリにそのような"場"が存在するのだろうか?
多くの時空は"圏"のように、異なる場へのアクセスが可能である。
しかし、この時空内のメモリ上にこの場所が存在しているとは考えにくい。
!
"亡霊"が出現した。
亡霊は、"さマ92"を実行した。
"さマ92"?
実行されるスキルの名称がおかしい...
私は氷の魔術を使用した。
すると炎が出現し、亡霊は消滅した。
どうやら、虚界の中では、実数世界の人間から見ると正常に振る舞っていないように見える。
第Ⅱ話
私はデータを収集した。
自身のステータスを確認する。
本来、自身に割り当てられたステータスは閲覧することはできないが、
私はそれへの権限を有していた。
"生命力" 1+3i
"体力" 3-2i
どうやら、自身の現在のステータスは複素数のようだ。
私たちは、実数の世界の管理者であり、
実数の世界を守護する"王"である。
しかし、実数の世界の存在は、"虚数の世界"、
つまり、"外の世界"を知らない。
そこでは、実数の世界の存在が知りえない、事象が発生するのかもしれない。
"存在"とは、"因子"の集合である。
存在は、メモリの座標であり、
メモリの座標を知る事は不可能だが、
存在しない領域を参照すると、
異なるメモリの座標を参照することになる。
そのため、因子はその"構造"を保存していると"公理"が見做し、
再生するが、
実はこれは"公理"も想定していない"未定義の動作"である。
第Ⅲ話
ある時空の性質について話そう。
時空には"メモリ"が存在する。
存在はそのメモリの中にある、アドレスを基準に再生された因子の列である。
メモリはアクセスが想定されいる場所と、想定されていない場所が存在する。
また、ある因子の列、"データ"には、"変数"と"定数"が存在し、
"定数"は不変だが、"変数"は可変である。
"文字列"はある意味、因子の列が成す、構造の1つである。
データの種類を"型"と呼ぶ。
この場所は、一体?
私は自身の"継承武器"を生成できないかを試みる。
現在、私の本来の継承武器である、"星筆"の現使用者は、"ティエラ・タ・ニャタンモ"だ。
その結果、"オリジナルの杼"が生成された。
これは、ソーサラーが継承する、プロトタイプで、
"古の不変量"が使用していた、"始まりの杼"。
私は、古の不変量のメンバーだったために、この継承武器を使用できるそうだ。
そういえば、記録には"アヤメ"は"終わりの杼"を使用したと、記載されている。
この場所に一冊の本があった。
それは"幽字"、"古の不変量"が魔術を記すために使った文字が使われていた。