プロローグ

序章

 赤い道。

紫の木々。

大きな滝の下で、戦いは始まっていた。

 銀髪の男、右の髪は編んでいて。左の髪は腰まで伸びていた。

オレンジ色の目を閉じて男は言った。


 「なぜお前は俺と戦う?」

 「仕事!」

 「俺は強さが全てだ、それは理由にはならない!」


 私は答えた。


 「ああ」

 「強さもまた人を傷つける理由にはならない!」


 男は私に急接近し、剣を左右に振る。

私は足を上に向けジャンプした。

上を向いたまま詠唱し。

体を捻り、着地と同時に魔力の槍で、相手を串刺しにしようと試みた。

相手は全ての魔力の槍を切り捨て。

 気づけば私の後ろに男はいた。


 お前にその仕事を成す資格はあるのか?

 「強者を見破れぬお前もまた弱者だ...」


 私は木の上に一瞬で移動し。

文字通り槍が降った。


 「今日は悪天候だな」

 「早めに帰るよ」


 私は言った。


 「まて!」


 声は反響しそこは無人だった。

第Ⅰ話

 無理解で構成された城。

不可侵の魔法に包まれた多くの部屋の一つ。


 「やあアヤメ、どうだった?」

 「だめだった、文字通りの強者」

 「そう...」

 「"奴"は砂漠のほうに逃げた」

 「座標を指定するから、すぐに向かうといいよ」

 「わかった」


 浮遊する円にその身を置き。

自分に与えられた部屋に向かった。

とても長い廊下の先にその部屋はある。

 廊下もまた不可知で構成されていて。

いつも同じリズムで赤と紫が入れ替わる線がある。

それ以外は黒で染められていて、

 全て私の理解の外で、構成された物質で築かれた城。

その一部にすぎない。

 私は無理解の扉を開き、形容しがたき空間にその身を置く。

鏡がある。

私は水色の髪で、肩にかかる三つ編みが二つ。

雪のように白い肌と、ルビーのような赤い目が二つ。

光を放つ緑の四角に足を置いた。

第Ⅱ話

紫の砂漠。


サファイアの砂とでも形容すべき砂漠に、


疲れ果てた男が視覚の中にいる。


「私はアヤメ、幽六花隊のアヤメ」


「私の仕事は咎人を裁くこと!」




男は言った。


「いいんだ」


「覚悟はできている」


「だが」




「最後まで抗う!」


「それが戦場に身を置くもののやり方だ」


男は体に残されたエネルギーを開放し。


私の目の前には男がいた。




「俺の名はトルエノ、力を恐れ。」


「力に溺れた者!」




私は魔法の種をまき。


幽六花という花を咲かせた。


男はジャンプして右から私を斬ろうと試みた。


私はしゃがみ、魔法で後ろへ飛んだ。


着地と同時に男は魔力の槍に覆われた。


男は回転しながら私に接近し。


魔力の槍は斬り捨てた。


男はなけなしの力を使い走り。


男が剣を振ろうとするも。


男は花に包まれ力の低下を感じた。




「隊長からお前を城に連れて行けとのことだ。」


「しばらく眠れ」




男は意識を失った。

第Ⅲ話

「自らの力ほど客観視できないものは無い」




私はフロルという村の食堂で、月を眺めていた。




飲み物を飲み深呼吸した。


ラズベリーの汁の中にミントが沈み、コップには花の模様が描かれている。


メニューは、菜の花のポタージュ、サクラエビのサラダ、マンゴーと春雨のローストビーフ。


どれも甘くてとてもおいしい。




天井には幾何学模様が描かれ。


壁には花の飾りが続いていて。


中央には螺旋階段がある。


今は夜遅く、あたりには誰もいない。




この食堂の名は"百花繚乱のフロル"




「任務を終えたの?アヤメ」




黒髪の女が現れる。


女の髪は肩までかかり、ベンティスカ地方でよくみられる服装をしている。




「ええ」




女のリボンが風で揺れる。


「私を城まで連れて行って」




「ええ?」

第Ⅳ話

「それでアヤメちゃんの特訓なのよ!」


幽六花隊の城でそう叫ぶ女がいた。


「しかしアヤメはこの幽六花隊でも優秀な魔術師」


「世界は多くの悪意に満ちています」




「じゃあ、あの新入りの男に任せようよ!」




「オスクリダド様がそこまでおっしゃるなら...」


「じゃあ、決定ね!」




「ええと私は?」


「モンタニャの村で特訓!」


そう言うと2人は消えた。




「オスクリダド、どうして!」


「嫌な予感がするの」


「嫌な魔力の流れが...」




「あなた、魔法は上手だけど武器が無い」


「あなた、武器を使うなら?」




「話を勝手に進めない!」




私は考えた。


武器には多くの種類が存在している。


片手剣、両手剣、短剣、長剣、槍、斧、ハンマー、弓、銃、手裏剣.....




「決めた!」


「これください!」




「ああ、これは銀貨30枚ね」


武器屋の男はそう言った。




そしてオスクリダドは。




「じゃあ、モンタニャの戦士のもとで訓練!」

第Ⅴ話

モンタニャ山。


別名"橙色の山"


一年中紅葉がみられる。


理由は魔力の流れの影響とみられる。


紅い吹雪の中、ある武器の練習をしている2人がいた。




「お前やるな!」


「疲れたら休んでいいんだよ?」


「お前、魔法使いだろ?」




「いえ」


「魔法使いほど楽なクラスは無いわ」




魔力という名の、


不可視の衣を纏い、衣は魔術師とともに踊る。




「お前のそれは才能だろう...」




「しかし便利なものだ」




「そうだ、模擬戦をしよう」




「おたがいケガしないようにね!」




戦士は大きな剣を構える。


戦士が近づいてくる。


私は魔力の衣を纏い、


戦士の攻撃を防ぎながら宙返り。


私は戦士に近づきながら宙返り。


戦士は下の隙を狙う。


私は魔法で回避し。


戦士の背後を狙う。


戦士は後ろを振り返り。


鍔迫り合い。




「短期間の練習でここまで...」




「アヤメ、すぐに来て!」

第Ⅵ話

黄色。


黄色い湖。


黄色い木々。


そこには魔力で暴走した大きな鳥がいた。


鳥は虹色の羽を纏い。


鳥は大きな角が生え。


鳥にないはずの扇状に伸びた爪があった。




鳥は私に突進してきた。


薙刀で防御し。


爪を宙返りで回避。


頭突きを魔法で回避。


幽六花で魔力を吸収し弱らせようと試みる。


しかし魔力は無尽蔵、体力も無尽蔵。




「長期戦になりそうね」




私は相手に視認できる距離で、遠くに離れ。


疲労させるために誘導を試みる。


魔力は無尽蔵、体力も無尽蔵。




何度も、何度も試みる。


何度も、何度も。


そう何度も。




「苦戦しているようね。」




「オスクリダド!」




「私が魔力を奪うわ」


「あなたは睡眠魔法で眠らせて!」




「わかった!」




それは長い戦いの始まりであった。

第Ⅶ話

「初めての任務ね」




「トルエノ」




「トルエノ?」




「トルエノは少し前までは拘束されていた」


「しかし、その実力と強さへの意思から」


「幽六花隊に所属する事となった」




トルエノが暴走した鳥の注意をそらし。


オスクリダドが魔力を奪う。


私は体力と魔力ともに疲弊した所で、


睡眠魔法を発動させる。




私は木の裏で強力な睡眠魔法の詠唱を始めている。


オスクリダドから巨大な魔法陣が展開され。


トルエノは暴走した鳥の注意を引いて、


体力を疲弊させる。




長い時間をかけて、


オスクリダドの魔法陣が発動。


鳥は魔力低下の影響で暴走状態が一部解除。


トルエノに向かって高速飛行を続けた影響で、


鳥は疲弊している。


そして。




私の魔法が発動し。


鳥は眠りについた。