忘れられた空間の線路
序章
私は電車に乗っていた。
その線路の行先は知らない。
目の前にはオスクリダドがいた。
「あなたは、どうして薔薇を探していたの?」
薔薇。
平行世界のアヤメが接触した"混沌"。
しかし、実数の世界には存在しないはずだった。
「花々は、どこにいっても変わらないよ」
そこは、囲炉裏がある部屋だった。
雷のドメインの、エミュレート空間か...
第Ⅰ話
[ソーサラーの能力テストを開始します。]
そこは、階段があった。
丘の上には、大きなお屋敷があった。
お屋敷の下には多くの家が存在し、
横を見ると森に囲まれた家がある。
どうやらここは山のようだ。
山の中は幾つもの階段があって、
その奥には建物がある。
「...ついてきて」
あれは?
「あなたはもう、こちら側の人間なの...」
「私の名は、"ブライニクル"」
「"ブライニクル"?」
「うん」
「ここは、もう一人のティエラが使っていた、3つ目の場所」
「そうね...」
「私たちは"虚数"の"住人"」
「あなたは"実数"の"住人"」
「ここではなく、異なる物語で、説明しましょう」
第Ⅱ話
エミュレート空間内にて。
旋律の雲海では、管理者同士が交戦していた。
しかし、オスクリダドが勝利し、
そこを脱出する方法を探っていた。
その時、薔薇は咲いた。
「これが、混沌なの?」
第Ⅲ話
アヤメの出自は謎に包まれている。
幽六花の国では、アヤメは幽六花の最後を見届け、
不変の都では、アヤメは"幽数字"の管理者になった。
"隠し扉"を利用して、異なる平行世界の存在が、同じ時空に存在しているのは稀だが、
少なくとも、凪のドメインでは、全てのアヤメは、1つの肉体に集結した。
どうやら、スオーノも同様のようだ。
彼がいつ、アヤメと同じ運命を辿ったかは定かではないが、
スオーノは秘匿と旋律についての知識がある。
炎上する双刃を見届け、
雷のドメインの隠し扉から、トルエノとトネールが凪にたどり着いたように。
雷が落ち、炭となる。
まるで凪に落ちたように。
雷のドメインで、大きな轟音が鳴り響くと、扉は開かれた。
その瞬間、ある"兄弟"は"琴"の音が聞こえたという。