蝶の塔

序章

 「場の門の異常!?」


 奇妙な笑い声が聞こえ"門"が開かれた。

螺旋に落ちて、

虹色の幻に溺れて。

 奇妙な摩天楼を走って。

墜ちる、落ちる。


 「...ここは?」


 「みんなは?」


 「あなたは!?」


 「"織姫"?」


 「どうやってここに?」


 それは"元形容詞の使い(サファイア)"だった。


 「あなたはあの時の...」


 「"人"は"門"を開けないはず」


 「参照先が"領域"でないと"例外"」


 「となると"混沌"による干渉かしら」


 そこは形容することはできない物質の集合(公理異常)だった。


 「こっちに来なさい」


 「あなたでも少しは居心地がいいでしょう」


 「"アカシックレコード(圏の圏)"の断片へ...」


 純粋な魔法の場だ。


 「どうしてアカシックレコードの欠片が?」


 「この混沌の場に存在しない物はないわ」


 そこには勇者に倒されたはずのある人物が存在していた。

その者は歪冪。


 「どうしてあなたが!?」


 「簡単な事だ」


 「この世界は幽世と繋がっている」


 「だが今はお前と遊んでいる暇は無い」


 「待て!」


 "門"が開かれた。


 「みんなは?」


 「隣接している幽世にいるみたい」


 「幽世は魂のみが入る事ができるわ」


 「って事は肉体はあの世界に?」


 「あなたは少しだけ混沌に耐性があるらしいわ」


 「"門"は混沌の力」


 「混沌は肉体に興味はない」


 「どうやってみんなを...」


 そこには戦士団の姿があった。


 「え?」

第Ⅰ話

 「これこそが私たち"巫女"の力...」


 「ほう」


 「お前は!?」


 混沌の管理者(魔王)が姿を現した。

混沌の管理者は"無風"の力を操る。

 私は"無風"に溺れる。

"無風"それは黒い場所。

"無風"それは"変化なき世界"。

 "無風"それは"凪"。

"無風"こそが生命の脆弱性。

"無風"の奥底の闇の深淵に落ちて。

"混沌"への寛容。

 避けられぬ敗北。

強者へ抱く恐怖の感情を。

巫女により混沌の領域を出る。


 「ここが虚世界の都...」


 「"循環参照の国"」


 「"ラルガ・ベアヘ"の時空に隣接する世界(レヴァリエ空間)」


 「"時空"?」


 「異なる層」


 「実世界、虚世界、幽世、現世」


 「実世界の現世が元居た世界なら」


 「他の名はすべて異世界、異空間の名」


 「"賢者"でさえも未定義の世界...」


 突如、循環参照に凪が訪れ、

"無風"に飲まれた。


 「第Ⅰカヴンと暗黒世隊の戦いは長く続いている」


 「世の混沌は賢者の敵だ」


 「賢者の使者こそが戦士団」


 戦士団は第Ⅰカヴンが結成したクラン(組織)だ。

賢者を主として、混沌(魔王)との交戦が続いている。


 「我が勤めを果たそう」

第Ⅱ話

 “巫女”は”暗黒世隊”へ”ネガティブ世界(逆元のレルム)”への”時の城門”を開いた。


 「今はどこに行っても混沌の使者からは逃れられぬ」


 「ああ、そうだな」


 「時間切れだ」


 世界のエントロピーが急増し、焦点(軸の交点)へと続く隠し扉とつながる。


 「せめてもの抵抗として記憶を辿り状況を整理しよう」


 “巫女”は戦士団を自身の旋律の花へと城門を開いた。


 「第Ⅲモンタニャ時代の回想だ」


 「初めに”星筆の最終試練”を”元ソルの筆守護者”が攻略した」


 「次に”世界転調”が繰り返し、世界に”未定義”と”混沌”が発生した」


 「この時空軸は”最後の世界転調”たる”焦点”に向かうだろう」


 「焦点?」


 「混沌の狙いは焦点より生まれる”コラージュの時空”だ」


 「”コラージュ時空”…」


 「まだあなた達は理解できない事が多いでしょうが」


 「時間がくれば全て理解できるでしょう」


 「最も混沌は”無理解の領域(闇)”に存在せし者…」


 城門が開かれる。


 「数多の”世界転調”を迎え、今焦点の時間軸へとたどり着く」


 「時間、空間、次元、宇宙、世界、領域、そして時空」


 「これらの”計算”は”幽数字の管理者”の尽力により」


 「最後の世界転調を迎える」


 「世界転調…それは『今ある時空が異なる時空と融合せし時…』」


 「今こそ”焦点”の刻…」


 循環参照の領域に水の花が現れる。


 「あら”混沌”、私を裏切るつもりですか?」


 「人魚姫!」


 「さあ、最後の”戦士団とその敵対者”の戦いだ」


 「悪しき戦士団の命運も今、終わりを告げる」


 「今こそ”混沌の時代”」


 戦いだ。

第Ⅲ話

 混沌が時空を歪める…

混沌が歪冪花を形成する。

混沌は竜を呼ぶ。


 「来たれ始祖の”杼”」


 走る声が響き渡る。

始域への城門が開かれ、始祖の杼が創造される。


 「我が幽六花よ」


 魔力が満ち溢れる。


 「白露より見やる月華のように…」


 「悲しいな訴ふる六花は泡に消ゆ」


 竜は”幽六花”の呼び答えに答えている。


 「それが賢者の力か」


 不明な”門”が広がった。

この焦点は超虚構であり、

公理が矛盾を許容する。


 「こちら賢者システム…」


 「次元の検知、異常な空間に接しています」


 「”type コラージュ時空”、報告、世界転調、世界転調発生」


 「エネルギーの異常、検知したエネルギーは正則の」


 「魔力、妖力、呪力、霊力等のいずれにも属さない」


 「”異なる時空”のエネルギーです」


 「わかった」


 「ここはコラージュ時空…」


 「ついに我々の時空軸を外れたのね」


 軸の節目には結び目が存在し、

軸の交点は焦点である。

つまり混沌は時空をコラージュ化するつもりだ。


 「あれは?」


 「それより混沌は!?」


 「おそらく今の時間には存在していない」


 「あいつを倒しましょう」


 見知らぬ人物がこちらに来る。


 「お前達は誰?」


 「私はアヤメ」


 「どうやら違う時空の人間ね」


 「異なる時空?まさか」


 「俺たちはただの超能力者だ」


 「スオーノ?どうしてあなたが?」


 「スオーノってベガの杼の?」


 「スオーノが2人…」


 それは平行世界の同じ魂を持つ異なる人物であった。


 「それともう1人は?」


 「僕は”星音”、占星術師 兼 超能力者だ」


 「”星音”と”もう1人のスオーノ”ね」


 「さあみんなで戦いましょう!」

第Ⅳ話

 「待ってもう1人”管理者権限を付与されし者”が…」


 「二手に別れるよ!」


 それぞれ第Ⅱカヴン、第Ⅲカヴン、2人のスオーノと白霧。

“勇者”、ヴェルデ、星筆の管理者、人魚姫、星音と月華に分かれた。

“幽六花サイド”

 “異時空のスオーノ”は”超能力 -テレキネシス-“を使い、

“スオーノ”が走る声を展開する。

“織姫”と鶴により”管理者”を幽六花の布で織る。

幽六花を展開しているのはアヤメとトルエノ。

 トネールは白霧の”巫女の杼”を借りて、

白霧は霊力を展開し、”巫女の力”より付与術を全体に付与している。

スキルたる付与術の”効果”により”賢者の力”はより強化される。


 「私は反転の管理者、世の混沌に反転は必要不可欠だ」


 攻撃の対象が反転する。

 しかし、奏でる力は”スキル”発動を”拒否(ディスペル)”した。


 「“管理者権限”が効かないだと!?」


 「今は混沌の世、あなたさえも”不変”の”規則”に従うの?」


 「あの時と同じですね」


 「”離散”は常に管理者の意思に従うわけではない」


 「…カタストロフィー展開」


 カタストロフィー空間の空間の効果により、全スキルの効果が無効となった。

そこで『チーム幽六花』は効果や権限の影響を受けない純粋なる意志の力…

いや”意思”に忠実で”運命”すらも変える、

 そう”表現”の力を使った。

第Ⅱカヴン、幽六花隊は”花”を、

第Ⅲカヴン、ベガの杼は”布”と”歌”を、

 そして2人のスオーノは表現を付与された斬撃を放ち、

“反転の管理者”への勝利を試みる。

しかし”反転の管理者権限”により”効果 -反転せし花火-”の条件を、

強制的に満たした。

 だが人の意志は効果を無効化し、

そこに”反転の管理者”はいなかった。

“戦士団サイド”


 「そういえば管理者って1人しかいないの?」


 「いや権限さえあれば誰でも管理者だ」


 「ああ、その通り」


 権限を持つ管理者は異なる者に権限を分与できる。


 「私が”幽数字の管理者 -アヤメ-“」


 「アヤメ!?」


 「彼女は我々を裏切ったよ」


 「なんか”焦点”のためとかなんとか」


 「多分、”ネガティブ”つまり反転の影響じゃね」


 「まあ、俺強いから」


 星音は兎の模様を展開し、星空が見える…


 「占星術起動」


 「さあ連続で行くぞ」


 「パイロキネシス!」


 “星座”を描くように”星”を辿る。

兎は”超能力”を放ち、そこには”音”の表現が存在する。

次に星音は”猫”を召喚する。


 「それって人魚姫と同じ”召喚術”?」


 「めっちゃ可愛いじゃん!」


 「次々行くよエレクトロキネシス!」


 そして全てのエネルギーを収束させ、


 「剣よ!テレキネシス!」


 超人の如く力で超能力を操り、

管理者に致命傷を与えた。


 「…不利ね」


 「あ!おい待てよ!」


 「なんだ…」