13 御前渕  彦部字機織


機織(彦部)館の東側の佐比内川(彦部川)沿いに御前渕という渕がある。その上側に松の古木が生えている。この渕は、機織館主彦部氏が没落の際、お姫様は機を織っていたが、突然の変事で驚き機織り道具の一品(筬(おさ))を持ち外に飛び出たが、到底助かる見込みがないものとあきらめ、その渕に身を投げて死んだとのことである。このことあってまもなく、付近の農家が田植えのとき一人の乞食がとおりかかり、折角食をもとめたので早速赤飯一つを与えた。

ある時付近の人々が御前渕の雑魚を捕ろうと水を掻きはじめたところ、大きな鰻があらわれた。すぐにこの鰻を料理して食べようと割いたところ、中から赤飯があらわれた。これを見た人々は不思議に思って、話し合った。先日の乞食が来た時赤飯を与えた筈、あの乞食はあの渕の主であったのであろう。即ち機織館(彦部館)の御姫様が渕に身を投じて死んだ。その姫の化身であったろうとの説が伝えられている。

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