【調査・研究】書を捨てよ、国会図書館へ行こう(後編)
【調査・研究】書を捨てよ、国会図書館へ行こう(後編)
日本語支援スタッフ 超域文化科学専攻 博士課程
陰山 涼(カゲヤマ リョウ)(2023年2月25日)
前編では、国会図書館所蔵資料のオンラインでの調べ方や、デジタル化資料の閲覧について解説しました。後編では、いよいよ施設の利用方法について説明したいと思います。国立国会図書館には、メインとなる本館・新館のほかに、京都府相楽郡にある関西館、東京の上野にある国際子ども図書館という施設が存在します。今回は、私の経験の都合から、また関東の研究者が最も利用するであろう施設ということで、本館・新館の利用に絞ってお話しします。本コラムではこれ以降、「国会図書館」という名称を使うときには、この本館・新館の施設を指すことにします。
入館準備:100円玉を忘れずに
国会図書館は、国会議事堂のすぐ隣に位置しています。東京メトロ有楽町/半蔵門/南北線の永田町駅か、丸の内/千代田線の国会議事堂前駅から歩いて行けるのですが、残念ながらどちらの駅からもさほど近くはありません。東大駒場キャンパスから行く場合は、渋谷で半蔵門線に乗り、永田町駅から歩くのが良いでしょう。周辺は国会議事堂や憲政記念館など国政関連の施設が集まるエリアですので、興味があればついでに散歩してみると面白いかもしれません。
コロナ禍以降、しばらくの間、混雑緩和のために事前の抽選予約制となっていた国会図書館ですが、現在では予約は必要ありません。2023年1月21日から、開館日であればいつでも当日に行って入館できるようになっています。平日は9:30-19:00、土曜日は9:30-17:00が開館時間となっているので、この間に行ってみましょう。
初めて来館する際には、現地で「利用者登録カード」の発行が必要です。事前にオンラインで利用者登録を済ませておくと、発行もスムーズなのではないかと思います。このカードは国会図書館の利用において大変重要なもので、入館や貸出はもちろん、返却や複写の依頼など、何をするにもカードの提示を求められます。すぐに取り出せるところにしまっておくことをおすすめします。
図書館利用者のための入口は、本館の1階にあります。セキュリティ等の観点から館内に持ち込めるものには制限があるので、入る前に荷物をロッカーに預けましょう。このロッカーが少し曲者で、100円玉が必要になります。入れた100円は帰るときに戻ってくるので料金がかかるわけではないのですが、うっかり小銭を忘れると千円札を両替しなくてはいけなくなり、面倒です。最近はキャッシュレス化が進み、小銭を使う機会が減っているため、私もたまに失敗しています。100円玉が財布に入っているか、事前に確認しておきましょう。
筆記用具やパソコンなど館内に持ち込みたい荷物は、ロッカーで用意されているバッグに入れ替えます。以前は使い捨ての薄いビニール袋だったのですが、おそらく環境への配慮もあり、少し前から、簡素ながら繰り返し使えるようなバッグに変わりました。全体はA4のファイルが入るサイズで、500mlのペットボトルにちょうどいいポケットもついており、なかなか使いやすいものです。ちなみに、蓋が閉まる容器であれば飲み物も館内に持ち込むことができます。閲覧スペースは飲食禁止ですので、休憩スペースで飲みましょう。
資料閲覧:待ち時間を有効活用しよう
さて、ここまで確認すれば入館の準備は整うはずです。利用者カードをタッチして、館内に入りましょう。まずやるべきことは、館内のPCを確保することです。国会図書館は原則的に閉架式となっているので、システムで利用したい資料を申し込み、書庫から出してもらう必要があります。館内のPCには全てカードリーダーが接続されているので、そこに利用者カードを置き、ログインします。国会図書館オンラインで資料を探し、閲覧の申請を行えば、資料を用意してもらえます。一度に申し込めるのは、図書(単行本)5点、雑誌10点までです。
閲覧を申請してから資料の準備ができるまで、場合によりますが、約20分程度かかります。この待ち時間に、館内限定公開のデジタル資料を見ておくのがおすすめです。デジタル資料には待ち時間がないので、館内のPCでしか閲覧できないものを優先的に調べてみましょう。マンガ研究関連で言えば、例えば戦前期に子供向けのマンガ作品が掲載されていた雑誌として有名な『少年倶楽部』(https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000079252-00)が、館内限定公開のデジタル資料となっています。「のらくろ」など、この雑誌に連載され、1930年代の日本で人気を博したマンガも、館内であれば閲覧することができます。また、デジタル資料のコピーも館内PCから申し込むことができます。申し込んだ資料はプリントアウトカウンターでまとめて印刷してもらう仕組みになっているので、一通り見終わってからカウンターで手続きをするのがおすすめです。
デジタル資料を見ているあいだに、閲覧を申請した資料の準備ができれば、利用している館内PCに通知がきます。雑誌は新館、図書は本館にあるカウンターで資料を受け取りましょう。ただし、一般の公共図書館とは異なり、国会図書館の資料は館外に持ち出すことができません。したがって館内の閲覧スペースでしか見ることができないわけですが、資料をその場でじっくり読む時間的余裕が無いことも多いと思います。そこで、必要な部分をコピーすることが重要になります。
資料複写:カラーコピーの料金に注意
国会図書館の資料コピーは、全てカウンターで依頼して、図書館のスタッフの方に複写を行ってもらう必要があります。複写カウンターは、デジタル資料のプリントアウトカウンターとは別の受付になっているので注意してください。複写依頼に際しては、①館内の端末から複写申込書を作成・印刷し、記入する、②コピーしたい箇所のはじめとおわりにしおりをはさむ、という作業が必要です。いずれも複写カウンターの近くでできるようになっていますので、コピーしたい範囲が決まったら、まずは複写カウンターの方へ行ってみましょう。場合によりますが、複写にもやはり約20分程度の待ち時間がかかります。上限数の資料を利用している場合、借りている資料を返却しなければ新しい資料の閲覧を申請することはできません。複写が終わらない限り、次の資料を申し込むこともできないということになります。貸出件数にまだ余裕がある場合は次の資料の申し込みを、上限まで利用している場合はデジタル資料を閲覧するなどして待ちましょう。時間によっては館内の喫茶や売店が営業しているので、食事や休憩をとるのもおすすめです。
複写ができたら、やはり館内のPCで通知を受け取ることができます。複写カウンターで元の資料とコピーを受け取り、料金を支払いましょう。コピー代は意外とかかることも多く、特に量が多い場合やカラーコピーをする場合は、事前に金額を確かめておいたほうが良いです。支払いは現金のほか、Suicaなどの交通系ICカードを中心に一部電子マネーが使えます。料金は細かい額になることが多いので、電子マネーの利用がおすすめです。最後にカウンターで資料を返却すれば、一連の流れは完了、必要な資料のコピーが手に入っているはずです。利用者カードをタッチして、退館しましょう。ロッカーで荷物を戻し、館内用バッグを返却して、施設を後にします。この時点で夜も遅くなっている可能性が高く、本来であれば近くで夕飯でも食べて帰りたいのですが、残念ながら国会図書館周辺には手ごろな飲食店があまり無さそうです。もし良いお店を見つけたら、ぜひ教えてください。
以上、国会図書館の利用方法を解説してきました。初めて利用するときは勝手がわからずハードルが高く感じるものですが、慣れれば便利な施設です。研究で必要な方はもちろん、直接的に必要があるわけではない方も、ぜひ一度足を運んでみてください。古い資料や珍しい資料などを見てみると、何かしら面白い発見があるはずです。なるべく本は捨てず、一度は国会図書館にも行ってみることをおすすめします。