【調査・研究】修士課程の振り返り〜春休みを迎えるまで〜
【調査・研究】修士課程の振り返り〜春休みを迎えるまで〜
日本語支援スタッフ 地域文化研究専攻修士課程
武田彩花(たけださやか)(2024年3月31日)
今回は私の修士課程(2022-2023年度)を振り返ろうと思う。修士論文を執筆するまでのことは、人それぞれのペースがあるだろうから簡単に触れるつもりだ。修士論文は、12月上旬に提出する。しかし、それで終わりではない。1月後半には口頭試験が待っている。口頭試験が終わっても、その結果がわかるまでは真に心は休まらない。同じ専攻の博士課程に進む者は、2月の後半に進学の可否が、社会人や別の大学院博士課程に進む者は3月の1週目に修了の可否が告知される。その日を迎えてようやく、春休みが到来する。
1. テーマ決定から論文提出まで
私の修士課程は常に緊張感があるものだった。私はスペイン17世紀の文学作品を研究している。ミゲル・デ・セルバンテス(1547-1616)の『ドン・キホーテ』が研究対象だ。この研究対象は1年目の最初から決まっていたが、具体的な研究テーマは定まっていなかった。何を、どのように書こうか、構想は何もみえていなかった。1年目の前期は、指導教員に研究書をお借りしてひたすら読んだ。そして夏休みには1ヶ月ほどスペインに滞在した。『ドン・キホーテ』と関わりの深い地域を巡り、作品の舞台となる地域を肌で感じることと研究に役立つ書籍を購入することが目的だった。購入した書籍はダンボールに詰めて日本に送った。帰国後、残りの夏休み1ヶ月を使って、研究書を読みながら、修士論文のテーマを絞っていった。作品に描かれる社会構造に着目し、社会が作品に与えた影響を考察しよう、と漠然とした構想を描き始めた。しかし、社会のパノラマのような作中でこのテーマはあまりにも膨大だったため、さらにテーマを絞ることにした。紆余曲折、幾多もの方向転換を経て、主人公の社会身分を考察することに決めた。
指導教員に相談しながら構想を立てては見直して、はや2年目の6月、タイトルを決めて中間発表の準備に取り掛かった。発表資料を準備していると、内容がまとまっていった。5分以内にまとめた自身の論文内容の発表に対して、残り15分程度で複数の先生からコメントをいただく。私は中間発表と同じタイミングで、スペイン語圏の研究会で自身の研究を発表した。このような発表の場で得られる評価は有意義で、自身の論文内容のブラッシュアップにも大いに役立った。
夏休みに入ると、研究書を読んで、論展開の筋道を立てていった。実際に論文を書き始めたのは、9月半だったと思う。1章を書き終えたところで、指導教員に提出した。フィードバックをいただいて再度見直す。そうして11月中頃に、全てを書き終えた。多忙な指導教員からフィードバックをもらうのに少々時間がかかり、提出期限まで残り5日と迫る中、全体の直しに取り掛かった。提出期間の初日論文を提出しようと意気込んでいた私だが、提出したのは最終日の午後だった。とにかく、期限に間に合えてよかった。無事に提出できたことに、自分を称えた。
2.論文提出後
私は博士課程への進学を希望していた。修士論文提出と同時に、博士課程への進学手続きをしなければならない。地域文化研究専攻の場合、進学手続きとして必要なものは、願書の他、修士論文、論文要旨、論文要旨のスペイン語版(英語版でも可)、そして研究計画書だ。それらを無事に提出し終えた時、それまでの緊張感が解き放たれてほっとした。その後しばらくは、気になっていた本を読み、博士課程の研究テーマに必要な書籍集めなどをしていた。そして年が明ける再び緊張感が張り詰める。1月後半には口頭試験が控えている。口頭試験は、全体で40分。オンラインで実施された。最初に5分程度で修士論文の内容や今後の研究計画について話す。1月に入り、この5分スピーチの練習に取り掛かった。5分で話す内容をまとめて、ひたすらタイマーで時間を計測しながら練習する。そうして臨んだ口頭試験、オンラインであっても先生方を前にして緊張した。試験中は、指導教員を含めた3人の先生方から論文に対してコメントおよび質問を受ける。コメントはメモに残し、質問にはしどろもどろに回答して、あっという間に40分が過ぎ去った。終えて後、コメントメモを見ながら、論文の欠点を見直した。その後、気持ちはすっきりしたものの、今度は結果が気になって仕方がない。「一月往ぬる二月逃げる三月去る」というものの、1月29日に終えた口頭試験から2月29日の結果発表まで、長い長い月日に感じた。その間、アルバイトや博士課程でやろうとしている研究に取組んでいるうちに気は紛れたが、その日が近づくにつれて心休まらない日々が続いた。無事に博士課程進学が決まると、肩の力が一気に抜けて、安心したせいか、20時ごろに眠気に襲われて翌日朝8時まで熟睡した。
進学が決まると、進学手続きやら博士課程の準備に追われる。それらを終えた今、博士課程で研究できることの喜びを噛み締めている。