【イベント】イベント四方山話?
【イベント】イベント四方山話?
日本語支援スタッフ 言語情報科学博士課程 森谷祥子
言語情報科学博士課程 安藤史帆(2023年1月15日)
日本語支援イベントスタッフの森谷祥子です。「日本語で話そう!」イベントは、東大に所属する留学生の方にオンラインでの日本語での日常会話を楽しんでもらうためのものです。今回はイベントがどのような具合で進んできているのか、志同じくイベント運営に携わっているスタッフ安藤と対話しながらお伝えしたいと思います。
安:こんにちは、OCJ日本語支援スタッフの安藤です。
森:森谷祥子です!今回は、安藤さんを迎えて、イベントの具体的な様子をお伝えできたらと思っているのですが、安藤さんはこれまでのイベントにスタッフとして参加されて、印象に残っていることはありますか?どのようなことをお話の種にしているのでしょうか?
安:話題は様々なのですが、イベントは毎月行っているので、その時期にホットな話題が多いのではないでしょうか。オリンピックやサッカーワールドカップが盛り上がる時期には、その話になります。当たり前と言えば当たり前かもしれないですが、浮世離れしているのに加えて、普段授業やゼミなどでは「学問」を介したコミュニケーションになるので、個人的にはすごく新鮮にお話ができます(笑)
また、まったく研究とは関係ない、個人的な趣味の話をしているのに、そこにその人の「研究」のスタンスみたいなものが見えてくるようなこともあって、そういう小さな発見を得ることに楽しみを感じています。
12月は「冬」、「クリスマス」というシーズンに特化した話題になりまして、クリスマスにどんなケーキを食べるのか、あるいはどういった防寒具を身に着けて過ごしているか、フランス・ドイツ・中国・韓国・日本とを比較するので盛り上がりました。
そういえば、メインの会の後にも「放課後」の時間が設けられていますね。わたしは、そちらでスタッフとして参加することはほとんどないのですが、どのようなお話で盛り上がるのでしょうか?
森:12月のイベントの放課後の時間には、昨年から何度も参加してくださっている留学生の方が残ってくれました。お互いに、ある程度気心知れた同士だったので、非常にリラックスした雰囲気で、日本語の雑談を楽しみました。放課後の時間では、イベント本編から引き続き、参加者の方の将来の進路についての話をしました。その後、結婚や出産の話になりました。私が既婚で育児中だということもあり、個人的な経験談をシェアしたりしました 。また、私自身の大学院修了後のキャリアについて、参加者の方からの質問があり、「今後は地域の国際交流や日本語支援に関わっていきたい」というような話をしました。参加者の方も、将来どのようにキャリアを形成していくか、結婚・出産についてどうアプローチするかなど、迷いながら色々と考えているということを話してくれました。放課後時間の最後には、今後もつながっていけるようにと、お互いに個人的な連絡情報を交換しました。
安:なるほど、けっこう深い話に入り込むのですね。私も自分の今後のキャリア形成に関してはすごく不安がありますが、自分以外の人の経験をシェアしてもらうことで見通しを持つということはとても重要ですよね。放課後も含めたイベント全体を通して、気楽な話題にしろ、まじめな話題にしろ、少しでも共有しあって、小さな発見を得られるような場が社会の中にも開かれてほしいなあと思うようにもなりました。
森:そうですね。「大学」という狭い世界で生きているからかもしれませんが、異種の背景を持つ人との交流って、実際なかなか難しかったりしますよね。私は元々運動をほとんどしなかった方なのですが、初めて就職した時に体力づくりのために空手道場に通い始めたんです。そこで学校外の子どもたちや保護者の方と話したり、全く異業種の人たちと出会ったことで、たくさんの知らない世界について学ぶことがありました。今でも宝物です。でも、研究活動で忙しいと、社会との接点って持ちづらいですよね。
安:少し話がずれてしまったので(笑)、イベントの話に戻って、、、、せっかくですのでこれまでのイベントで盛り上がった話のテーマや、毎度取り上げられる事柄について振り返ってみましょうか。
森:食べ物の話題は、やはり盛り上がりますよね。イベントには、色々な食文化を持つ参加者が集まるので、多様な食についての情報をシェアできます。私は「食」への関心が高めなので(笑)、食の話題はいつも楽しいです。
安:確かに、私も真っ先にそのテーマが思い浮かびました(笑)食べ物の話をしないことはないですよね(笑)
森:また、これまでのイベントで、結構シリアスな話題になることもありましたね。特に印象に残っているトピックの一つは、多国籍の家庭に育つ子どもです。日本や韓国で、「外国人」の子どもに対するいじめがあるという話や、ヨーロッパの国々では少し状況が異なるというような話をしました。
安:いまは簡単にいろんな情報にアクセスできてしまうから、広範囲でその情報や見解などが共有されていると思われがちだけれど、その情報に対するまなざしは各国、各個人で異なる。そういうことに気付ける瞬間が確かに私にもありましたね。様々な国での解釈やほかの人の目から見えてくる問題を共有できましたね。
森:そうなんですよね。センシティブな話でもありましたが、議論というよりも、いろんな経験をシェアしあってわいわい話すという雰囲気で、、、。イベントの終了時間になってしまったので、「もっと話したい〜」と思いながら会話を終えたことを覚えています。
安:日本語のレベル、研究の分野、お住まいの地域など、様々な観点で見て「多様」であるからこそ話し尽くせないのかもしれないですね。
森:参加者の傾向に関していえば、東大に所属する留学生の方と一口に言っても専攻する分野は様々で、日本語支援事業が総合文化研究科を拠点としているためか、文系の参加者が集まりやすい状況ではありますが、理系の留学生の方もこれまで何名か参加してくださっています。また、本イベントには、GPEAKの学生など、普段は英語のみで授業が行われているようなプログラムの留学生も参加し、数少ない日本語学習機会として利用してくれているようです。
安:「学習の機会」として役立ててくださっている方が実際にいらっしゃるというのは一つの励みですよね。
森:はい、本当にそのように思います。参加者の日本語会話能力のレベルも様々ですから、大変スムーズに日常会話をされる方もいれば、実践的な日本語会話にはまだ慣れておらず、時間をかけながら会話をする方もおられます。イベントスタッフとしては、日本語能力レベルに関係なく誰もが日本語会話を楽しめるように、ファシリテートして会話をリードできるように努めています。
安:それを聞いて少し安心しました。イベントも2年目に突入してようやく板についてきたのですが、やはりスタッフとしてどのようにイベント参加者の方々をサポートしていったらよいのかには毎回悩みますし、不安があります。試行錯誤の中、臨機応変に対応し、お話ししてけるようにしていますが、イベントスタッフとしての一つの「姿勢」を確認することができてよかったです。
何が言いたかったんだろう、、、、ええっと、つまり、イベントスタッフは、マニュアル通りに動いているわけではなくて、各回の参加者の皆さんの気になるトピックや日本語能力レベルを尊重する「姿勢」を共有しているので、安心して参加してほしいということが言いたかったんだと思います。
森:いえいえ、大丈夫ですよ。また、更に、昨年はコロナ禍で、東大に入学しながらも、日本に入国することが叶わず、海外からイベントに参加していた留学生も多くいました。海外組の参加者の方々には、他の留学生の方から、来日する際に役立つ情報がシェアされていました。
安:海外からイベント運営に携わってくださっているスタッフもいるので、ズーム上ではありますが、世界各地と繋がる国際交流の経験でもありますよね。
森:海外留学中のスタッフの存在は、時に、日本人スタッフと留学生の参加者との間の橋渡しの役割をしてくれたりもします。さらに、留学生として海外に滞在していた、または現在滞在中であるスタッフもおり、同じ留学生という立場から、イベント参加者と共通する経験があります。例えば、海外で自炊する時はどうする、家を探す時にどうする、現地の学生と知り合うためにどういう活動に参加したら良い、などの話題で盛り上がることもありました。
安:そうですね。ここまでお話ししてきたことをまとめると、イベントの参加者とスタッフ間、参加者と参加者間あるいは、スタッフとスタッフ間で双方向的に(きっかけに過ぎないかもしれないけれど)「学び」や「発見」、「気づき」が得られるようなものとしてある、といえそうですかね。ここまで、会話をファシリテートしていくというような偉そうな立場からものを言ってしまったような気がするので、イベントは、トップダウンするというような上下の関係が構築された学びの場では決してない、ということを断っておく必要があるかもしれません。さて、今年度のイベントも残りあと2回となりましたが、どのような会にしていきたいとお考えかを最後にお聞きして終わりにしたいと思います。
森:残りあと2回となりましたが、これまで興味はあるけど、忙しかったり、タイミングが合わなかったりという理由で実際には参加できなかったという方に、是非是非是非参加してほしいと思っています!
短い時間かも知れませんが、思いがけず濃厚な話ができたり、そうでなくても、知らなかった日本語を学ぶ、または新しい分野の話を聞くというような機会に、きっとなると思います。
イベントスタッフとしては、せっかく貴重な時間を割いて参加してくれた方のために、安心して、日本語での会話を楽しめる場所づくりを心がけて行こうと思っています。みんなが話しやすいトピックなども準備して待っています。