【日本語学習】その一息が大切!?読点の打ち方のコツ
【日本語学習】その一息が大切!?読点の打ち方のコツ
日本語支援スタッフ 言語情報科学博士課程 安藤史帆(2022年11月3日)
こんにちは、日本語支援事業スタッフの安藤です。今回は、最近の個人的な出来事を踏まえつつ、日本語の文章表現において地味だけれども重要な「読点」に着目してみたいと思います!
ここ数年、机や椅子にへばりついて作業することが増え、また「研究」という性質上、常に頭に何かがあるといった状態が常態化していました。最近は、そういった状況を改善するため、定期的にジョギングをしています。もともと体を動かすことが好きな方なので、とても気持ちがよいのですが、走るようになって気づいたことがあります。
走りはじめて10分を越えた当たりから、走ることに伴い生じる疲労感や、だるさ、疲れなどの「不快感」は一切なくなり、全てが「快感」へと変わるのです。そうなると、足を止める必要がなくなってくると言いますか、どこで足を止めてよいかわからなくなって来ます(あくまで個人の感覚ですが)。
しかし、どんなに精神的解放感を得ているからといって、永遠に走り続ければ、心身ともに崩壊してしまうことでしょう。これでは元の木阿弥*注1です。どのように区切りを入れながら(呼吸をしながら)走り終えるか。それが重要になってきます。
*注1:元の木阿弥(もとのもくあみ) ⇒ 一度良い状態になったものが元の状態に戻ること。
この「息」や「区切り」の問題。実は、日本語の文章を書く際、話す際にも重要なんです!
それで今回ご紹介したいのが、「句読点」の打ち方、、、。
「句読点」(くとうてん)と聞けば、「ああ、あの「、」とか「。」とか、文章を区切る記号ね」とだいたいの人が理解できるでしょう。特に、「、」(読点)にかんしては、「あってもなくても通じるじゃん」と思っている方もいると思いますが、実は侮れない存在なんです!
まずは簡単な会話を事例にご紹介して参りましょう。
コマオ「週末、何してた?」
コマコ「ぱんつくった」
「パンつくった」は、「パン、作った」であれば、コマコさんは、「パンを作った」ことになりますが、「パンツ、食った」であれば、「パンツを食べた」ことになります。常識的に考えて後者などあり得ないと考えればそうかもしれませんが、コマオくんは理解に苦しむことでしょう。
このように、区切りが曖昧であるために、意味が伝わりにくくなることは、「ぱんつくった」にとどまらず、日常に意外と溢れる問題です。わたしの身近ではこんなことがありました。
ユリ「修学旅行(奈良・京都)のお土産買ってきたよ~」
母「お金無駄遣いしなかった?」
ユリ「だいぶつかった」
母「大仏?え、大丈夫?」
「だいぶつかった」は、ユリさんは「大分、使った」(お小遣いのうち大幅な額を使った)という意味で発しましたが、お母さんは、「大仏を買った」と勘違いしました。
このように、読み手や聞き手に言いたいことを伝えるために、会話や文章表現において、どこで一息を入れるか。すなわち「読点」を、どのタイミングで打つかが重要になってくるのです。
では具体的にどういったことに気をつけるべきなのか?
「一文を短く区切る」、「息継ぎのタイミングで打つ」、「文章を整理するために打つ」などといったことは、既にみなさん知っていると思いますが、具体的にどうすれば良いのかを把握できていない人も多いのではないでしょうか?
ここでは、私が校正支援をする中で気づいた2つのパターンを例に、簡単に打ち方のコツを纏めてみようと思います。
まず、次の(1)の文章を例に、「、」の前後の関係を観察してみましょう。
例文(1):洋子は母親のように美しくはなかった。
← →
パターンa. 洋子は母親のように、美しくはなかった。
(=洋子は母親に似て美しくない)
← →
パターンb. 洋子は、母親のように美しくはなかった。
(=洋子は母親ほどの美しさを持ち合わせていない)
このように「、」(読点)を打つと、「、」の直前と直後に句切れが生じ、直前が直後を修飾しないことを示すことができます。また、主語を際立たせることができるとも言えるでしょう。
以上の働きを見てわかるように、句切れを作るので、「、」の前後の関係をわかりやすく伝えることにもなります。続く例文(2)を見てみましょう。
例文(2)大雨の影響で、A町とB町の大部分が大きな被害を受けた。
パターンa. 大雨の影響で、A町と、B町の大部分が、大きな被害を受けた。
(=大雨の影響で、A町全体と、B町の大部分が、大きな被害を受けた)
パターンb. 大雨の影響で、AB両町の大部分が、大きな被害を受けた。
ただし、パターンbを見てもわかるように、単純に「、」を入れるだけでは文意が判然としない場合には、書き換える必要も出てきますので注意が必要です。
ここで、今回の「読点」の打ち方の注意をまとめておきます。
「、」(読点)を打つときの注意
①「、」前後の文章の関係を明らかにする
a.並列関係(事柄と事柄が対等)、b.逆接関係(前の事柄⇔後の事柄)、c.因果関係(原因→結果)
②「、」の直前が直後を修飾しないことを示す
③ 一文が短く、入れないで済むなら、入れない(必要最小限に留める)
④「、」を入れるだけでは文意が判然としない場合、文意の通るように適宜書き換える必要あり
影のような存在に見える「句読点」ですが、実は、意外と使いこなすのが難しいのです。以上のコツを、次に日本語を書くとき、あるいは話すときに、ちょっと注意してみるのはいかがでしょうか。
それではまた次回。