鉄軌道方式鉄道世界最速記録、仏TGV574.8km/h(2007年)を上回る世界最速の600㎞/hへの挑戦を目指します。
JR東日本は来る北海道新幹線札幌開業に向けてE10系の開発をリリース、また内々にE11系(仮称)の開発計画を立てていた。
だが日本政府は新幹線技術の海外輸出計画において対抗する中国新幹線の速度面の優位(営業最高速度350km/h)を崩すべきと考え、JR東日本に新型新幹線で350㎞/hオーバーの性能を発揮することを要望した。JR東日本も東京-札幌の通し運転充当列車ではそれぐらいの高速性能をもつべきと考えていた。しかしそれにはさらなる騒音低減と非常制動時の制動距離短縮が急務であった。
そのため建造したALFA-Xの走行試験での技術知見を生かすことにしていたが、いかんせん技術実証としてはALFA-Xの速度域では不十分なところが出てきた。特に札幌開業の遅れでALFA-X基準の車両では将来となった開業時に想定される技術水準では物足りなくなることが想定された。かといってALFA-Xを超える高性能の新型試験車を建造するにはJR東日本は東日本大震災とコロナ禍のダメージが大きすぎて国が資金注入を行うとしても資金不足であった。
そこでJR東日本と国交省・経産省が目を付けたのが北急電鉄周遊列車事業部であった。北急電鉄は在来線周遊列車のパイオニアであり現在フラッグシップ「あまつかぜ」を運用するとともに寝台周遊新幹線「あたらよ」周遊新幹線「ハイパーこまち」を擁する北急電鉄は、先行投資によって昨今のインバウンド需要もうまく取り入れ、国内で設備投資の遅れたところに需要急増となってオーバーツーリズムに苦しむ他社と対照的に収益の飛躍的な拡大に成功していた。
だがもともと国交省は北急電鉄の過剰に革新的・野心的な鉄道経営に批判的であり、周遊列車「あまつかぜ2」の就役時には小さいものではあるが妨害も行っていた。それは北急電鉄が国際資本との逆転的な提携により押し切ったのだが、国交省と北急電鉄の関係には溝が生じていた。
そこに国が国策のために頼み込む形となるので国交省のメンツは丸つぶれであるが、中国の鉄道輸出に対抗するにはそうするしかなかった。
しかし北急電鉄はその提案をまったく抵抗なく受け入れるどころか、新試験車は鉄道のさらなる未来を切り拓く挑戦で希望そのものであると位置づけ、JR東日本や山崎重工・目立製作所とオールジャパンのプロジェクトチームを組織、新試験車開発計画を「V計画」と名付け強力に推進することにした。
その計画目標として、整備新幹線区間での300キロ運転解禁、従来の320キロ運転区間での370キロ営業運転の実用化などの果敢な挑戦が並んだが、その最たるものが仏TGVが2007年に樹立した鉄軌道鉄道の最高速度記録574.8キロを超える実験最高速度600キロへの挑戦であった。あまりに過激な計画であったが、370キロ運転の分厚い安全率を確保するためには必要とされた。また北海道新幹線札幌開業と中央リニア品川ー名古屋開業が大きく遅れ、鉄道技術の国際市場での日本技術についての有利なセールス材料が不足していることもあり、600キロチャレンジはその逆転のために必須となり、V計画の最大の目標となった。
そのために山崎・目立に発注され建造が開始されたのがH957形超高速度限界試験新幹線電車である。
車体の先頭形状はアクティブ制御動翼を多用した「アクティブスプリットノーズ」と2両にまたがるノーズ形状をつかった「パッシブスーパーロングノーズ」を採用。車体構造は超大型鉄道車両用3Dプリンタをつかった超軽量カーボンヘリカルボディとされ、変圧器・インバータ・モーターすべてに日本鉄道史上最高性能のものを選定した。
主電動機はMT999X6極三相かご型誘導電動機(出力500kW)を採用、WN駆動方式で600㎞に挑む。主変換装置・制御インバーターはフルSiC・VVVFインバータCI977型、主変圧器は6500kVAのHTTM9Xを搭載。それぞれの機器はメンテナンス性向上技術開発の一環としての改善が図られ、それぞれH-IVICSⅡによる統合高度情報軌道系自己診断ネットワークに組み入れた管理の下に置かれる。ちなみに在来線機関車EF510の主電動機FMT4は565kw、主変圧器3490kVAであるので、いかに本形式の性能が壮絶なものであるか理解できよう。
台車は動力台車DT900、付随台車TR1901、アクティブスプリットノーズ車の先頭台車はTRX1902を採用。台車周りには車体傾斜機能付きフルアクティブサスペンションを導入。異常時には外部給電なしに自走救出運転可能なバッテリー自走システムも装備している。またパンタグラフもたわみすり板を採用し架線追従性を向上させたコンパクトなものを採用している。
保安装置はJR東日本とJR東海・JR西日本の各新幹線用保安装置にすべて対応し、受電設備も交流25000v50Hz/60Hz両対応としている。起動加速度は2.6km/h/s、減速度は常用2.7km/h/s非常4.2㎞/h/s、設計運転最高速度は620㎞/hである。
また新幹線車載通信設備の試験もALFA-Xに続いて実施することとなり、引き続きの5G移動体通信はもとよりスターリンクを含めた各種衛星コンステレーション通信への対応も実験する。
車内には普通車・グリーン車と次期グランクラス席の内装が試験のために設置される。とくに次期グランクラス席は札幌開業に向けての装備で『スイートフルフラットシート』と呼ぶ横たわって寝ることも可能な半個室構造となっているものが実験的に搭載される。これは東京-札幌間の所要時間が4時間30分とされているなかで必須の設備として現在鋭意開発中である。
この列車の愛称は「ヴァルキリー」とされ、パールブロンズにシルバーメタル・ドーンブラックのカラーリングにシンボルの有翼の騎士ヴァルキリーのイラストを配したロゴを側面に設置する。
所属基地は仙台利府新幹線総合車両センター、運転時の編成記号は幹セシ所属XV編成となる。
片方の先頭車(スーパーロングノーズ)は2両にまたがった超々ロングノーズ形状をとりました。
反対側の先頭車(スプリットノーズ)は動翼アクティブ制御を駆使し、ノーズこそ1両の長さに収めましたが600㎞hでの安定走行を実現します。
緊急制動時の制動距離短縮のため、格納・展開動作するエアブレーキを搭載します。
ノーズ下にフロントウイングを吊り下げ(スプリットノーズ)、台車は車体から独立露出し、カバーでおおわれる形式(オープンボギー)になります。
運転室に赤ランプを設置します。