JR東日本は、2000年策定の中期経営構想「ニューフロンティア21」で「世界一の鉄道システムの構築」として新幹線の最高速度360キロ営業運転を目標とした。そして2002年に新幹線高速化プロジェクトが発足。FASTECH360(E954・E955)を開発、2005年から地上設備を含めた各種試験を行い、結果320キロ運転が妥当と判断、E5とペアを組む新在直通新幹線としてE6系が開発され、2013年に営業運転を開始した。
そして北海道新幹線札幌開業を視野に360キロ営業運転可能な車両開発を目的として、2019年、ALFA-Xが登場する。
360キロ営業運転計画は一度諦めることとなったが、それでも2000年代、いずれ360キロ、ゆくゆくは400キロ運転を目指すべきだという高速化を強く求める意見は強くあった。
しかしそう速いペースで試験新幹線編成をいくつも建造する力はJR東日本にはない。
そこでJR東日本は周遊列車事業でかねてより協力関係にある北急電鉄との協力で、試験目的任務を付与したハイグレード新在直通周遊新幹線の開発を計画した。
それがE6系Z25編成である。そのなかでも特徴的な車両が15号車E637-901の先進形ビュフェ車と17号車E621-901先進形先頭車である。
E621-901はFASTECH360でできなかった超ロングノーズ形状と先進形車両姿勢制御技術とアクティブ空力制御カナードを試験する目的で、思い切ったスタイルとした。
先頭車の試験であればそのために試験編成を1本仕立てるのは投資過大であり、また試験先頭車を試験後に毎回廃棄するのも本来なら好ましくないというJR側の思惑と、周遊新幹線事業のスタートにはっきりとわかりやすいアイコンが欲しかった北急の思惑が一致したのだ。
そこで試験先頭車であるが試験終了後は営業運転に投入する前提での開発が行われた。
車体傾斜機能付き姿勢制御アクティブサスは試験用として通常より物理的に可動域が拡大され、また前頭部には空力乱流制御と非常ブレーキ時にエアブレーキとして作動するカナード(ATCWS:Anti Turbulence Control Wing System)が設けられた。これらは営業運転時には機能しないように封印されることとなった。
外装の塗装については、試験車両であるが既存のE6系に合わせた塗色となった。
また新在直通でありまた試験と営業運転どちらもこなすことから、マルチロール車と通称され、愛称はMulti Advanced Role Shinkansen type E6(MARS-E6)マルスE6とされた。
車内は側窓4つ分しかない客室のほかはすべてノーズ構造となっていて、ノーズ内は機器を若干搭載したほかは空洞である。
運転室の乗務員扉は省略されていて、乗務員の乗降は後尾側の客用扉を使う。
小さな客室は計測機器搭載スペースとしてであったが営業運転時にはパーティションなど内装を追加されて中央通路の左右に2部屋の区分室として運用された。
E637-901はフリースペースと簡易厨房を備えたビュフェ車である。原形のE6系には存在しないが、周遊新幹線運用のためのサービス基地としても機能するように設計され、新幹線のさらに新しいサービスを模索する材料となった。
このZ25編成は試験を終え目的を果たした後、さらなる速度向上試験をALFA-Xに引き継ぎ、現在は在来線用の北急周遊列車「あまつかぜ」のバックアップとして、また周遊ツアー列車として営業運転を行っている。そして数々の先進機能は封印され使われずに眠り続けている、と公式にはされている。また試験車両運用でどれだけの高速性能を発揮したかについても公表されていない。