12月初旬、そろそろ寒さを感じる時期になってからの実技教習です。
集合場所は浜離宮横、クルーズ船を出している築地ボートクラブの桟橋です。まさかクルーズ船で教習?と思いきや、海の向こうから教習艇がやってきました。4人乗りの小さなボート、LS-16だと思います。
受講者は3名、2艇に分かれ、私は2人組みの一人になりました。
一通りの点検の後、教官が操縦して沖に出発。日の出桟橋沖、晴海埠頭沖に向かいます。
海の釣り船は何十回と乗ったことがありますが、ボートは初めて。まず最初に驚いたのは、エンジン音の大きさです。小さなボートとはいえ、3000ccとかのバカでかいディーゼルエンジンを載せているので、音と振動がビリビリ伝わってきます。
そしてスピード感。小さなボートは海面が近く、ちょっとしたスピードでも迫力満点でした。
沖に出ると、教官がいきなり「じゃ、操縦替わって」と私にハンドルを。いきなりはないでしょう、と思いつつ、言われるがままに直進、変針、停止の練習をすることになりました。
ボートの操縦設備は極めて単純で、ハンドルの他にはスロットルレバーしかありません。スロットルレバーは、真ん中が中立(ニュートラル)、前(後)に軽く倒すとクラッチが繋がり微速前(後)進、更に押し込むと回転数上昇という仕組みです。たったこれだけなので簡単といえば簡単なのですが、難しいのは「ボートを思い通りの方向に操縦すること」です。
車と異なり、ハンドルを真っ直ぐにしていてもボートは真っ直ぐには進まず、風波の影響を受けて必ず左右のどちらかにブレてしまいます。また、ハンドルを切っても反応は緩慢であり、「あれ、ハンドルが効かない」と思って切り増しするといきなり思い切り反応してして焦ってしまうものです。
低速走行だとこの傾向は更に激しくなりますが、プロペラの推力が弱いときは舵の効きが悪くなるのは仕組みとして当然と言えば当然のこと。でも、車に慣れていると感覚の違いが最初の難敵といえるでしょう。
実技教習のポイントは3つ、蛇行、人(に見立てたブイ)の救助、着桟(着岸)です。
まず蛇行ですが、右図のようにブイ2つの間を蛇行する、それだけといえばそれだけで、車でやれと言われればいとも簡単にできることです。しかしボートだと、そもそもブイを視認するのが難しいとか、広い海の上で30mってどれぐらいなのかがわからないとか、ボートの激しい傾きに転覆しないかとビビるとか...。3回ぐらいで何とかできるようになったものの、思わぬ難しさを感じました。
次は人命救助。低速で風上側から近づいてブイを拾う、これもたったこれだけのことです。しかしながら、上述したようにボートは低速だと舵が効きにくくなりますし、ブイも風に流されて移動していますので、これも結構難しいもの。最初は、そもそも風上ってどっちだ??からスタート、教官に「波が押し寄せてくる元が風上ですよ」と教えて頂きました。
そして最後が着桟です。これは難しいと噂には聞いていました。
教官に、「はいここでシフト中立、舵を左に切って...舵を戻して、はい、シフト後進。」といったように具体的な指示を受けながらだと、最初からいとも簡単に決まります。こんなので大丈夫なのかな...と思いつつ、あっという間に実技教習が終了。
さて、学科同様、教習に続けてすぐに実技試験です。
初めてボートを操縦したまさにその日ですから、本当に大丈夫かよと思いつつの挑戦でしたが、とりあえず一発でクリア。人命救助だけ1度目は失敗、やり直しをお願いして2回目で何とか成功でした。
ポイントになるのは、操縦技術だけでなく安全確認とのこと。針路を変える際、前後左右を指差し確認すること、停止の際は後方を確認すること(追突防止のため)が重要です。
合格率は相当高いのでしょうけど、同じボートで実技試験を受けた人は別日程で再度挑戦、ということに...。
そう言っては悪いですが、私から見てもかなり危なっかしさを感じました。右に変針すべきところを左に変針、後進ではクルクル廻り続け、蛇行ではブイを跳ね飛ばす、着桟では桟橋間近でフルスロットルといった具合でしたから、同乗していたわたしもちょっとヒヤヒヤしました。
車の運転もほとんど経験ないということでしたし、私と同様相当に緊張していたのでしょう。彼にとっても、国家試験免除の恩恵はあったものと思います。
たった5日の教習で免許出して良いのかと大いに疑問は感じるものの、これで私も1級小型船舶操縦士の仲間入りです。