こんにちは、長野大学です!今回は、長野大学新棟建設工事の現場でも活用されている「建設キャリアアップシステム」について、わかりやすくその仕組みや魅力をお届けします。
今回の記事はボリュームがあるため、忙しい方はこれだけでも感じ取ってください!
建設キャリアアップシステムは全国で着々と普及しています!活用が進み、お金も時間もメリットのある、働きやすい建設業界が着々とやって来ています!
「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は建設業に従事する技能者(職人さん)一人ひとりの「仕事の経歴」 「保有資格」 「研修などの受講履歴」 「表彰の履歴」 「保険・退職金制度の加入状況」 「健康診断」等の情報をデジタルで管理・可視化する仕組みです。また、職人さんは自分のICカードを日々現場のカードリーダーにかざし、現場の入退場の状況(就労状況)を記録・蓄積します。
職人さんが通う現場は日々替わりますが、システムを通じて個人の経験や資格を元請け企業や発注者に対し証明できるほか、複数の現場をまたがって就労状況を管理できるため、CCUSはまさに「建設業の履歴書・出勤簿」と言える存在です。
職人さんが持つICカードには技能に応じた4色の色分けがあり、カードの色で職人さんの役割や経験レベルが一目でわかるようになっています。
「白」:レベル1:初級技能者
「青」:レベル2:中堅技能者(一通りの作業が行える者)
「銀」:レベル3:職長・班長として現場に従事できる者
「金」:レベル4:高度なマネジメント能力を有する者
(※まだシステムの普及の途上のため、経験の豊富な職人さんが白カードであることが多いのが現状です・・・)
カードのレベルを上げるには、保有資格や就業年数など、レベルごとに必要となる条件を満たしたうえで、各分野の能力評価団体(例:電気工事の職人さんであれば(一社)日本電設工業協会)へ能力評価申請することでレベルを上げることができます。
また、これまで課題とされた「白カードスタート問題」も、今後はシステムへの新規登録時に自動で能力評価申請まで行われ、各職人さんの技能レベルにあったカードが最初から発行されるようCCUSの改善が行われていくようです!
建設現場では、職人さんの多くが所属する会社ではなく、元請け企業が管理する工事現場で働いています。一日に複数の現場にまたがって作業することもあります。そのため、「今日はどこの現場で何時間勤務したか」の記録や証明が難しく、評価や昇給、キャリア形成といった処遇に繋がりにくいという課題がありました。また、時間外勤務や休日の取得状況の適正管理も難しい環境です。
このような背景のもとで、経歴や技能・資格を可視化し、公正な処遇やキャリアアップを実現すること、また、労務の適正化、ひいては建設現場の従事者が魅力や"やりがい"を感じられる業界へと生まれ変わるために建設キャリアアップシステムが生まれたのです。
建設キャリアアップシステムは業界を変える大きな可能性を秘めていますが、一方で導入に際しハードルとなっている要因もあります。たとえば、職人さんがシステムの登録やカード発行をするのに費用や手間がかかること。また、事業者の各種登録費用、現場でカードリーダーを設置する費用など、コスト面でのハードルがまだまだ高いようです。また、職人さんがシステムに登録するメリットが感じにくいという声もあるようです。
それでも、CCUSは年々普及が進んでおり、制度としての土台が着実に整っています。2025年5月末時点での普及状況は
・技能者登録数:166万1,764人
・事業者登録数:29万4,836者(うち一人親方は約10万2,000人)
・累計就業履歴:2億371万件超
これらの数字は、「業界全体の共通ルール」として受け入れられつつある証拠です!
CCUSのさらなる普及に向け、業界各社では様々な取り組みが行われています!
・カード保有者にカード色に応じた日当手当を支給(数百円~数千円/日)
・CCUS技能者について、建設業退職金共済制度の掛金を全額負担
・元請け企業が協力会社向けに「登録代行サービス」を無償提供(※登録料は各社で実費負担)
・就業履歴を活用し、休日取得が目標に達した協力会社への労務費を上乗せ補正する(数%~十数%)
・CCUSへの登録を優良職長制度の要件とする
・現場の入退場の登録をスマートホンから行えるシステム(QRコード認証、GPSの位置情報+顔認証)の導入
また、今後CCUSのシステム改修が進み
・CCUSと民間の労務安全システムの連携でデータが共有される(労務安全システムへの入力手間の軽減)
・CCUSへ登録した資格者証の画像を画面に表示することで、資格確認が行えるようになる(資格者証の原本を現場に携帯する必要がなくなる)
こうした取り組みは、職人さんと企業の双方にとってCCUSを「使いやすく、活用しやすい仕組み」にしています!
本学の新棟建設工事でも、職人さんがICカードリーダーやスマホを用いて入退場履歴を記録しています。建設キャリアアップシステムは、ただの制度ではありません。職人さんの努力や経験をきちんと伝え、正当に評価し、次のステップにつなげていく、一歩一歩の積み重ねです。現場にある小さなカードリーダーひとつにも“建設業の未来を変える力”が込められています。
これからも「長野大学の未来を築く – 新棟建設日記」では、こうした制度の意味や活用の工夫を、現場の視点も交えて紹介していきたいと考えています。技能者の皆さんも元請けの皆さんも、CCUSを使って、もっと希望や"やりがい"を持って働ける環境が広がることを心から応援しています!