こんにちは、長野大学です!
今回は、新棟建設の現場で重要な役割を担う「墨出し職人」さんにお話を伺いました。建物づくりの“基準”を作り出すこの仕事。その正確さと信頼の積み重ねが、現場全体を支えています。
今回ご紹介するのは、B・POINTさん。ご夫婦でお仕事をされており、その息の合った連携はまさに職人の鏡です。
お二人はこの道28年の大ベテラン。
これまで数多くの現場を手掛けてきた経験から、現場の状況を瞬時に読み取り、正確な墨出しを行っています。
取材時には、新棟5階で「床のレベル合わせ」の作業をされていました。
墨出しとは、設計図の情報を現場に正確に写し取る仕事です。建物の骨組み、壁、床、設備など、あらゆる工事の起点となる「基準線」を現場に記すことで、各職種の職人が同じ基準のもとで作業できるようにします。
「1ミリの誤差が仕上がりのズレにつながるので、常に緊張感があります」と語るB・POINTさん。まさに、建物の“正確さ”を支える縁の下の力持ちです。
【ちょっとした裏話】
「墨出し」という仕事は、実は一般の方にはあまり知られていません。
B・POINTさんも、地域でバスケットボールの指導をしていた際に「仕事は何をされているんですか?」と聞かれ、「墨出しをしています」と答えたところ、「入れ墨を掘る人かと思いました」と勘違いされたそうです。
笑いながらそのエピソードを話してくださったお二人。現場では真剣そのものですが、そんなユーモアのある一面にも、人柄の温かさがにじみ出ていました。
レベル
墨出しの現場では、伝統的な「墨つぼ」や「糸」を使って直線を引くこともありますが、今回のB・POINTさんの作業では、「レベル」と「スタッフ」と呼ばれる道具を使っていました。
「レベル」は、望遠鏡のような形をした機器で、床や構造部分の水平を正確に確認するための道具です。そして「スタッフ」は、目盛りのついた長い棒で、レベルと組み合わせて高さを測定します。
取材時も、このレベルとスタッフを使い、床の高さを1ミリ単位で丁寧に確認しながら作業を進めていました。
お二人が息を合わせ、数値を読み取り合う姿は、まさに熟練の技。精度を追求する職人の集中力と信頼の深さが感じられる場面でした。
スタッフ
B・POINTさんは、「他の職人さんとのコミュニケーションも大事なんです」と話します。
「うまく連携できないと、作業場所に材料が置かれてしまって仕事が進まないこともあるんですよ」と笑いながら教えてくれました。
墨出しは多くの工程に関わるため、現場の中心で“調整役”としての力も発揮されています。
また、職人同士のやり取りの中で特に印象的だったのが、**「信頼はするけれど、信用はしない」**という言葉。
「相手を信頼して任せる気持ちは大事。でも“たぶんできているだろう”という思い込みは危険なんです。だから自分の目と手でしっかり測って、確実に墨を出す。」
その言葉には、長年の経験に裏打ちされた職人としての誇りと責任感が込められていました。
今回の長野大学新棟は、1号館と5号館を連絡通路でつなぐ構造。
既存建物とのレベル(高さ)を正確に合わせる必要があり、建物の形も複雑なため、墨出し作業も難易度が高いそうです。
それでも、「図面通りに建物が立ち上がり、完成した時の達成感はやっぱりすごい」と笑顔で語ってくれました。
今回の現場を担当するJV北野建設の現場所長さんとは、なんと30年以上の付き合いになるそうです。
これまでに20現場以上で共に仕事をしてきた仲であり、長い年月をかけて築かれた信頼関係が、現場の空気を支えています。
墨出し職人は、工事の始まりからほぼ最後まで現場に関わる仕事のため、新棟建設工事における約3年にわたる長期工期の中でも、この信頼関係が何よりの支えになっているそうです。
建築の基準を“描く”墨出し職人。その一線一線の積み重ねが、新しい学びの場の形を作り出しています。
B・POINTさんの丁寧な仕事が、長野大学新棟の確かな未来を支えています。
これからも、「長野大学の未来を築く – 新棟建設日記」では、現場で活躍する職人の皆さんの姿をお届けしていきます。どうぞお楽しみに!