前回の【2025年7月24日】【空へ、柱を運ぶ】巨大クレーンと“人の技”――操作席のその先へ では、鉄骨を吊り上げる巨大クレーンと、とび職人との息の合った連携にスポットを当てました。
今回はその続編として、鉄骨を支える「空の仕事場」、クレーンのコックピットに迫ります。
地上から見上げると大迫力のクレーン。だが、その高所にあるコックピットの中は、緊張感と集中力が張り詰めた別世界です。
「一度作業に入ると、2時間くらいはずっと集中して続けますよ」と語るのは、クレーンオペレーターの方。操作中は主にモニターを注視しており、吊り荷の位置や動きはカメラ映像で確認します。
ところが、この“映像”も簡単ではありません。カメラが近すぎると酔ってしまうため、「画角を自分でちょうどいい位置に調整するのが、実はけっこう大変なんです」とのこと。
視覚だけに頼る高度な操作が求められる現場では、こうした微調整も技術のうちです。
現場は毎日が“初めて”の連続。クレーンの動きは風や地盤の状態に大きく影響を受けます。
「どれだけ経験を積んでも、いつまでたっても勉強なんです」
そう語る姿から、現場に対する真摯な姿勢と、気象や地形の変化を読む感覚の鋭さが伝わってきました。
中でも一番気を遣っているのは「安全」。特に、とび職人との連携には細心の注意を払っているとのこと。
「とびさんにケガをさせないように、本当に毎回気を張ってます。だから大変。でも、それが大事なことですから」
荷の揺れ、風の変化、職人の動き――すべてに気を配るその姿勢が、安全の土台を支えています。
「吊荷がきれいに納まったときですね。ああ、うまくいったな、って思います」
ほんの数秒のその瞬間に、緻密な操作と感覚の積み重ねが報われる。
そして、「やっぱり建物が完成したときが一番うれしいですね」と笑顔を見せてくれました。
新棟建設は、こうした“見えない仕事”に支えられています。
巨大な鉄骨が宙を舞う背景には、ひとつの操作席で繰り広げられる職人の技と緊張のドラマがあるのです。