2022/8/26 浄化槽保守点検の現場見学

こんにちはRyuichiです。久しぶりの更新です。

先日(といっても実際は数ヶ月前なのですが),Harada Labのメンバー数名で,滋賀県内の浄化槽保守点検の現場を見学しました。

浄化槽は生活排水処理のための住宅設備の一つであり,下水道が整備されていない地域で利用されています。現在,日本全国で700万基以上の浄化槽が設置されており,浄化槽の利用者数は1000万人以上とされています(環境省,2022)。また,浄化槽は嫌気ろ床槽,接触曝気槽,沈殿槽,消毒槽など,種々の処理機能を持つタンクが接続された構造をしています。そのため浄化槽の適切な運転のためには「保守点検・清掃・法定検査」による維持管理が重要となります。

ところで,都市の排水処理システムは下水道により集排水し一括処理する「集中型排水処理」と,排水処理設備が都市内に分散して複数稼働する「分散型排水処理」の2つに大別できます。浄化槽は,アジア地域などで広く利用されるセプティックタンク(腐敗槽)と同じく,分散型に分類されます。Harada Labでは,大規模集中型の補完となる分散型の運用・管理に注目し都市排水管理の研究を進めています。

今回見学させていただいた事業者は,浄化槽の保守点検・清掃事業を営んでいます。今回は,家庭用の小型浄化槽と,工場敷地内のし尿・雑排水を処理する大型浄化槽の保守点検を見せていただきました。

小型槽の保守点検では,所有者(つまり,家主さん)への挨拶から始まり,水質測定,浄化槽の物理的異常の確認,ろ床の逆洗,沈殿汚泥からのガス抜き等の作業を進めていきます。事業者のスタッフさんは,私たちへの細かい作業の説明などをはさみながらも,一連の作業を30分程度で完了していました。大型槽の保守点検では,水質測定,槽内水位センサーの異常確認,夾雑物除去用スクリーンの確認・洗浄,制御基盤の異常確認などの作業を行い,こちらも30分程度で完了していました。いずれの作業も,一連のオペレーションが精錬されていて,想像していたよりもスピーディーに完了されていました。また,今回の点検では水質の異常や機器の交換が必要になるような故障等も発見されませんでした。

今回実際に現場を見学して,浄化槽の保守点検業務は,業務経験の蓄積から作業時間などコストに最適化されたオペレーションとして精錬されており,隙のない印象を受けました。一方で,この保守点検業務自体が,現場に赴いて浄化槽を目視確認するところから始まっています。逆に言えば,現場を訪れるまでは,槽内水質に対してどのように運転条件を変えるか,交換が必要な槽内機器のスペアを準備するのかどうかなど,保守点検オペレーションの事前検討が容易でないことが分かってきました。私たちの研究テーマの一つである水質の遠隔リアルタイム監視によって,保守点検オペレーションの仕組みを変えられる可能性を感じられました。



家庭用浄化槽(5人槽)の保守点検

大型浄化槽の保守点検

参考文献

環境省,2022. 令和2年度における都道府県別浄化槽の設置状況等. (https://www.env.go.jp/press/110642.html,最終アクセス:2022/8/26)