セルフアーカイブの他に論文をOA(Open Access:オープンアクセス)化する主な手段として、読者が購読料を支払うことなく読むことのできるオープンアクセス誌(OA誌)に論文を投稿・掲載するOA出版があり、ゴールドOAと呼ばれます。ジャーナルに掲載された出版社版(参照【実践編】2.2セルフアーカイブ時の注意点①出版社ポリシー)により、掲載時点で即時にOA化できる点が利点です。
OA誌では読者が購読料を支払わない代わりに、著者がAPC(Article Processing Charge:オープンアクセス掲載公開料)と呼ばれる掲載料を支払うことで出版費用を負担する方法が現在では主流ですが、近年では新たな形のOA誌も登場しています。
フルOA誌とハイブリッドOA誌
掲載される全ての論文がOA出版されるジャーナルを、フルOA誌と呼びます。一方で、購読誌への論文投稿時(あるいは論文受理時)にOAオプションを選択し、APCを支払うことで、論文単位でOAにできるジャーナルもあり、ハイブリッドOA誌と呼んで区別されます。ハイブリッドOA誌には、OA論文と購読者のみアクセス可能な非OA論文が混在することになります。
APC支援
APCの価格はジャーナルによって異なりますが、ハイブリッドOA誌の方が高額な場合が多く、主要出版社における2024年時点での最高価格は12,290ドルにもなります。さらに、APCは年々値上がり傾向にあり、世界全体でのAPC支出も増加しつつあります(参照【解説編】3.APC支出増加)。
こうした状況を受けて、研究助成機関や大学がAPCの支払いを支援する動きが増えてきました。東京大学でも、電子ジャーナルの購読契約に伴うAPCの免除・割引支援を附属図書館が実施しています。(参照【実践編】3.2 東京大学のAPC支援)
OA誌の新しい動き
APCによって出版費用を負担するOA誌のほかに、近年では新たな形態のOA誌も登場しています。出版にかかるコストを購読料にもAPCにも依存せず、学会や図書館等のコミュニティで負担するダイヤモンドOAや、従来の図書館からの購読料をベースに、その収入が一定の基準額を超えた場合に掲載論文がOA化されるS2O(Subscribe to Open)があります(参照【解説編】2.5「ダイヤモンドOA」、2.4「Subscribe to Open」)。こうした動きは、ジャーナルの出版費用を学術コミュニティがどのように支えていくかを模索する過程であるとも言えます。