論文をセルフアーカイブする際には、当該の論文の取り扱いに関連して注意すべきポイントが3点あります。
著作権譲渡契約
学術雑誌に論文を投稿すると、多くの場合、論文がアクセプト(受理)された際に論文の著者と出版社との間で、当該論文について著作権を譲渡する契約を結ぶことになります。著作権譲渡契約を結ぶことによって当該論文の著作権は出版社に移り、論文の著者であっても自分の執筆した論文を自由に二次利用することができなくなります。この著作権譲渡契約の契約書は、「Copyright Transfer Agreement」などと呼ばれています。
論文のセルフアーカイブも二次利用に当たるため、セルフアーカイブを行う際には、著作権譲渡契約で認められた条件の範囲内で行う必要があります。著作権譲渡契約で定められるセルフアーカイブの条件の例として、下記のようなものがあります。
・セルフアーカイブ可能な論文のバージョン
・エンバーゴ(公開禁止)期間
・公開先(非営利の機関のウェブサイトに限る、など)
・公開時に注記すべき内容
・公開時に付与すべきライセンス
共著者の許諾
論文が共著の場合は、セルフアーカイブを行うことについて全ての共著者から許諾を得ることが大切です。その際に、書面を用意する必要はありませんが、文面が残るメールなどの形式で許諾を確認できることが望ましいと考えられます。また、許諾を得るタイミングは、セルフアーカイブを行う段階に限らず、論文の執筆時、投稿時などの早い段階で行うことも考えられます。
第三者の著作物の使用
他者の著作物の画像や図表などが論文中に含まれている場合は、その著作権者にセルフアーカイブすることを伝えて許可を得ることも重要です。著作権者は、自らの著作物を含む論文等がOA(Open Access:オープンアクセス)化されて広くアクセス可能になることで、自らの商業的利益が損なわれることを懸念する可能性があるためです。