学術雑誌に掲載された論文は、著作権譲渡契約によって出版社や学協会が著作権者となっているケースが大半です。UTokyo Repositoryに論文を登録する前に、当該論文の著作権者が機関リポジトリ上での公開を許可しているかを確認する必要があります。出版社・学協会、また場合によっては学術雑誌のタイトルごとに公開の条件は異なり、この条件をOA(Open Access:オープンアクセス)に関するポリシーとしてまとめている出版社・学協会もあります。
2.2.1ポリシー検索データベース:Open policy finderとSCPJ
各出版社・学協会のポリシーを雑誌単位で検索するためのデータベースとして、Open policy finderとSCPJ(Society Copyright Policies in Japan:学協会著作権ポリシーデータベース)がよく知られています。
Open policy finder(旧SHERPA RoMEO)は、イギリスのJiscという機関が運営している、世界の出版社等のポリシーを調べることのできるデータベースです。有効なISSNが付与されていて、編集委員会が明示され、かつOAに関するポリシー等がオンラインで容易に確認できる学術雑誌が収録対象になっています。収録されたポリシーは学術雑誌のタイトルごとにまとめられており、論文のバージョン(Submitted/Accepted/Published)と、エンバーゴ(公開禁止)期間や選択したライセンスに応じた公開条件(Option)がそれぞれの見出しにまとめられています。詳細な条件は、見出しをクリックすると確認することができます。
ポリシーは、雑誌名、ISSN、出版社名をキーとして検索することが可能です。ただし、掲載されている情報は最新のものではないこともあるため、各ページに掲載されているURLをクリックして、出版社のウェブサイトで最新の情報を確認すると安心です。
SCPJは、日本のオープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR: Japan Consortium for Open Access Repositories)が運営している、日本国内の学協会等のポリシーを調べることのできるデータベースです。『学会名鑑2007~2009年版』に掲載された団体、及び日本学術会議協力研究団体を対象としたアンケート結果を基にして成り立っています。各学協会から刊行されている学術雑誌とそのポリシーをリスト化してGoogleスプレッドシートにまとめられています。利用条件は、論文のバージョンごとの著者による掲載可否や、掲載場所(機関リポジトリ等)、掲載条件等の情報が1列ずつ分けて記載されています。まとめられたポリシーは「SCPJ Search」を使用して、雑誌名や学協会名、付与されていればISSNなどをキーとして検索をすることが可能です。また、ISSNが付与されている雑誌については、スプレッドシートをダウンロードした後に、「チェックシート (DL利用専用) 」シートの所定の欄にISSNを入力することで、当該の雑誌の利用条件のみ表示することができます。SCPJも掲載情報は最新のものではないこともあるため、学協会のウェブサイトで最新の情報を確認するのが安心です。SCPJでは学協会ウェブサイトのURLが掲載されていない場合もありますので、その場合は学協会名をキーワードとしてインターネットで検索してください。
2.2.2公開可能なバージョンについて
各出版社のポリシーでは、論文のバージョンによってセルフアーカイブを許諾するかどうかが異なります。アクセプトされる前のバージョンである「プレプリント」、アクセプト直前の提出バージョンの「著者最終稿」、アクセプトされ校正も済んだバージョンの「出版社版」のそれぞれの段階でどのような取扱いが許諾されているかを確認する必要があります。
それぞれのバージョンは、英語では以下のように表記されます。
プレプリント:Preprint
著者最終稿:(Author)Accepted Manuscript、Accepted Articleなど
出版社版:Version of Record、Final Published Versionなど
2.2.3出版社ウェブサイトでの確認方法
各出版社・学協会のウェブサイトでは、「Open Access」や「Rights and Permissions」といったタイトルのページにセルフアーカイブの可否や条件がまとめて掲載されていることもありますが、掲載箇所が見つけられないこともあります。そのような場合は、「(Green) Open Access」「Self-archiving」「(Institutional)Repository」といった用語や、公開対象の論文のバージョンを指す用語などと出版社名・雑誌タイトルをセットでキーワードにして検索をかけると、公開条件の情報をまとめたページが見つかることがあります。日本の出版社・学協会の場合は、「オープンアクセス」「オープンアクセス方針(ポリシー)」などを検索のキーワードにできます。
また、出版社のウェブサイトではなく、各雑誌のウェブサイトに公開条件がまとめられていることもあります。ウェブサイト内で情報が見つからない場合は、メールや問い合わせフォームなどで直接に問い合わせたり、あるいは契約書の内容を確認したりすることで公開の条件が分かります。