5.1.1研究データとは
研究データとは、研究の過程、または研究の結果として収集・生成される情報を指します。具体的に指示する対象は、機関や研究領域、また言及される文脈などによって異なります。「東京大学 研究データ管理・利活用ポリシー」では、研究データを次のように解説しています。
形態としてデジタル・非デジタルを問わず、数値、画像、テキスト、有体物など、あらゆる形態を含める。
研究データを説明する資料、メタ情報、研究データの収集条件も研究データに含める。
研究成果が有体物の場合、その有体物を説明するために付随するメタ情報が、その有体物と一対を成して研究データとしての管理対象となる。
すでに存在する一次的な研究データを加工・解釈した二次データ、統計解析の結果、当該研究データにかかる数理モデルその他のプログラムも研究データとして取り扱う。その際、その一次的な研究データの信頼性を担保するメタ情報も必要となる。
本ポリシーが対象とする研究データには、研究全体の成果物である著作物である研究成果(論文や講演資料等)を含まない。
5.1.2研究データ公開を求める動き
研究データ公開が求められる背景として、(1)オープンサイエンスの世界的な潮流、(2)研究成果の透明性と公正性の確保、(3)公的資金にもとづく研究成果の国民・社会への還元、があります。
オープンサイエンスとは、OA(Open Access:オープンアクセス)と研究データの公開を含む概念です。研究活動全体が、あらゆる人々に開かれることで、研究者の所属機関、専門分野、国境を越えた共同研究、次世代の研究者の利活用への貢献が可能となります。
研究成果の透明性と公正性を確保する観点からは、近年、研究助成機関や学術雑誌が、研究成果論文のエビデンスとなる研究データの公開を求めるようになってきています。
また「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」 (令和3年4月27日 内閣府統合イノベーション戦略推進会議)では、公的資金による研究データの公開が推奨されています。「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」では、科学研究費助成事業を含む一部の競争的資金の2025年度以降の公募で採択された研究に対して、その成果である査読付き学術論文の根拠データをオープンアクセスにすることが義務付けられています。
5.1.3研究データ公開の意義
研究データの公開には、次のような意義があります。
異なる分野の研究者が、異なる観点から研究データを分析することで、新たな研究成果や研究コミュニティが創出される可能性があり、研究の発展につながる。
研究データに関心を持った企業等との共同研究(産学連携)など、新たなイノベーションにつながる可能性がある。
研究データの再利用が可能となり、既存のデータを再度収集する必要がなくなるため、時間、費用、資源を節約できる。
研究を再現しやすくなり、研究成果の透明性や公正性の確保につながる。
市民や納税者からの研究に対する理解が向上する。