OA誌の一部には、OA(Open Access:オープンアクセス)のビジネスモデルを悪用し、APC(Article Processing Charge:オープンアクセス掲載公開料)の収益のみを目的とする悪質な学術誌が存在します。このような出版社のOA 誌は粗悪学術誌と呼ばれ、「ハゲタカジャーナル」「捕食ジャーナル」と呼ばれることもあります。粗悪学術誌の大きな特徴として、適切な査読が行われていない点が指摘されています。質が保証されていない論文で構成される粗悪学術誌に論文を掲載すると、著者やその所属機関の学術的・社会的な評価が低下するリスクがあります。また、出版社から著者に対して不当に高額な APC が請求される可能性もあります。さらには、APCを支払っても論文が掲載されなかったり、アーカイブが適切に行われずに論文が消失してしまったりする可能性もあります。
粗悪学術誌は一見健全なOA誌であること装い、著者に論文の投稿を促します。そのため以下のようなチェックリストやデータベースを活用し、投稿誌を選ぶ段階で各誌の信頼度を見極める必要があります。
Think Check Submit
Think Check Submitは論文投稿先候補、の中から、信頼できるジャーナルを選別するためのチェックリストです。Think Check Submitは英語だけでなく、日本語を含む48か国語(2024年現在)に対応しており、出版社とジャーナルの信頼度チェックリストを提供しています。リストには、「あなたやあなたの同僚は、そのジャーナルを知っていますか?」、「そのジャーナルはどのような形式の査読を採用しているか明確ですか?」といった具体的な質問が並んでおり、投稿誌を選ぶ際にこれらの質問に当てはめて判定を行うことで、著者は誤って粗悪学術誌に投稿する可能性を下げることができます。
DOAJ (Directory of Open Access Journals)
DOAJはOA誌のデータベースで、独自の審査基準をクリアした、質の高い査読付きのOA誌を収録しています。タイトル、出版社、ISSN、主題等からジャーナルを探すことができ、OAのタイプ、ライセンス、著作権、質保証プロセスについて確認が可能です。ただし、最新情報は各ジャーナルのウェブサイトを確認する必要があります。
SciRev
SciRevは研究者が自身の論文投稿経験に基づいて、各ジャーナルの査読プロセス情報を投稿するレビューサイトです。研究者の被査読経験共有によって、査読プロセスが透明化されることを目的としており、論文を投稿した研究者の経験に基づいた、査読期間や査読に対する評価を閲覧できます。分野ごとの平均の査読にかかる期間も集計されているため、他と比べて明らかに期間が短い場合は、適切に査読が行われていない可能性もあり注意が必要です。