論文等の著作物を公開する際、第三者に対して認める当該著作物の二次利の範囲や条件を、明示しておくことが望ましいと考えられます。
著作物の二次利用が可能な範囲を示すライセンスとして、CCライセンス(クリエィティブ・コモンズ・ライセンス)があります。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのウェブサイトでは、CCライセンスについて「インターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が『この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。』という意思表示をするためのツール」と説明しています[1]。
CCライセンスで示すことのできる二次利用の条件は「表示」「非営利」「改変禁止」「継承」の4種類で、それぞれの意味は下記の通りです。
表示:作品のクレジットを表示すること
非営利:営利目的での利用をしないこと
改変禁止:元の作品を改変しないこと
継承:元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること
これら4つの条件を組み合わせてできるライセンスは、以下の6種類です。
CC BY(表示):原作者のクレジット(氏名やタイトルなど)を表示することを主な条件として、改変や営利目的での二次利用を許可
CC BY-SA(表示-継承):原作者のクレジットを表示し、改変した場合には元の作品と同じCCライセンスで公開することを主な条件として、営利目的での二次利用も許可
CC BY-ND(表示-改変禁止):原作者のクレジットを表示し、元の作品を改変しないことを主な条件として、営利目的での利用(転載、コピー、共有)を許可
CC BY-NC(表示-非営利):原作者のクレジットを表示し、非営利目的であることを主な条件として、改変や再配布を許可
CC BY-NC-SA(表示-非営利-継承):原作者のクレジットを表示し、非営利目的に限り、改変を行った際には元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開することを主な条件として、改変や再配布を許可
CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止):原作者のクレジットを表示し、非営利目的であり、元の作品を改変しないことを主な条件として、再配布を許可
また、著作権による利益を放棄して、著作物をパブリックドメインに置く「CC0」という選択肢もあります。
著作権譲渡契約を結んでいる論文をセルフアーカイブによってグリーンOAとし、かつCCライセンスを付与したい場合、著作権を譲渡した出版社に対して、付与してよいライセンスの種類を確認する必要があります。逆に、元の論文にCCライセンスが付与されている場合は、ライセンスに従えば、著作権譲渡契約を結んでいる場合でも出版社の許諾なくセルフアーカイブを行うことができます。
また、論文をゴールドOAにする場合は、主要出版社の論文のOA出版ではCCライセンスを付与することが標準となっており、出版社が指定したライセンスを付与することになります。こうしたケースでは著者に著作権が残ることが多く、その場合、著者はCCライセンスに関わらずセルフアーカイブを行うことができます。なお、CCライセンスが付与されている場合でも、著作権が出版社に譲渡されている場合は、出版社が許可する条件に従ってセルフアーカイブを行うことになります。
なお、論文中に他者の著作物の画像や図表を含む場合は、その著作物に付与されているCCライセンスや出典をキャプションとして明記し、自著のCCライセンスと明確に区別する必要があります。
研究データについても、著作権がない場合はCCライセンスを付与しても有効ではありませんが、著作権がある場合は自分の望む利用条件に合わせてライセンスを付与することができます。(参照【実践編】5.3 研究データ公開の注意点)オープンサイエンス推進の観点から、CC0適用を推奨する意見もあります。
なお、CCライセンスを一度付与すると、著作権者であっても取り消しができません。許可する二次利用の範囲、出版社や助成機関からのライセンスの指定をよく確認し、適切なライセンスを選択してください。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのウェブサイトに掲載されているFAQもライセンス選択の参考になります。また、クリエイティブ・コモンズのウェブサイトで提供されている「LICENSE CHOOSER」は、許諾する二次利用の条件を選択していくと適切なライセンスをサジェストする機能があります。2024年11月現在「LICENSE CHOOSER」の日本語版は提供されていませんが、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのウェブサイト上のリンクからもアクセスが可能です。
注・引用文献
[1] クリエイティブ・コモンズ・ジャパン. クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは. Retrieved from https://creativecommons.jp/licenses/(2024-10-01最終確認)