1.3.1 OAの定義
OAについては、さまざまな定義付けが試みられ、その種類も変化してきました。
OAの定義として最も広く受け入れられているのは、2002年に発布されたBOAIです。BOAIでは、すべてのユーザが文献に対して、インターネット上で自由に次のことができることを、OAと定義づけています。
・金銭的、法的、技術的な障壁なしに、全文を読める。
・再利用(ダウンロード、コピー、配布、印刷)できる。
・検索、リンク、索引付けのためのクロール、ソフトウェアにデータとして渡す、その他の合法的な目的のために利用することができる。
OAを広義に「インターネット上で論文を無償で読めること」と定義づけられている場合があります。一方で、BOAIでは、「法的制限のない自由な再利用」を含めているため、論文の使用に関するライセンスが付与されていない状態は、パブリックアクセス、またはフリーアクセスとして、OAと区別する立場もあります。
1.3.2 OAの種類
2002年に発布されたBOAIでは、OAの実現手段として、BOAI-I(セルフアーカイブ)とBOAI-II(OA雑誌)を示しました。これらは、それぞれ現在のグリーンOA、ゴールドOAにつながります。さらに、さまざまなOAモデルが誕生し、本稿執筆の2024年現在では、一般的に次のようにOAの種類は区分されています。なお、フルOAとハイブリッドOAをあわせて、ゴールドOAと呼ばれています。
・グリーンOA
機関リポジトリや分野別リポジトリなどに、著者が論文をセルフアーカイブする。雑誌や出版社のポリシーによって、公開できる論文の種類が著者最終稿と指定されたり、公開にエンバーゴ期間の設定を求められたりする場合が多い。
・ゴールドOA
学術雑誌上で論文をOAにする。現在は、著者がAPC(Article Processing Charge:オープンアクセス掲載公開料)を支払うことで、出版費用をまかなうモデルが主流である。これにより、読者は 購読料を支払うことなく論文へアクセスできる。OA論文の掲載誌には、以下の種類がある。
・フルOA誌
掲載される全ての論文がOA。フルOA誌に論文を掲載することのみを指して、ゴールドOAと呼ぶ場合もある。
・ハイブリッドOA誌
OA論文と購読者のみアクセスできる非OA論文が混在。購読誌にて、著者がOAオプションを選択し、APCを支払うことで、論文単位でOAにできる。
・ダイヤモンドOA
著者のAPC負担なく、学術雑誌上で論文をOAにする。出版費用は、学会等の第三者(著者・読者以外)が負担する。掲載誌上の論文は、原則としてすべてOA。(参照【解説編】2.5 ダイヤモンドOA)
・ブロンズOA
出版社の判断で、一時的に特定の論文が無料公開される。論文掲載後、一定期間経過後に公開される場合も含む。ライセンスが付与されていない場合が多く、OAとみなさない立場もある。
フルOA誌の中でも、年間数万本単位の大量の論文を掲載するジャーナルをOAメガジャーナルと呼びます。2006年にPLoS(現在はPLOS)より創刊されたPLOS ONEが、最初のOAメガジャーナルです。OAメガジャーナルは、掲載基準を科学的な妥当性におき、論文のインパクトの有無を問わない方針をとっています。また、特定の分野に限定せず、幅広い分野の論文を掲載対象としています。このような簡素な査読と対象分野の広さが、大量の論文を掲載可能とすることにつながっています。2011年にNature Publishing Group(現在はSpringer Nature)より創刊された、Scientific ReportsもOAメガジャーナルとして有名です。