<思考・姿勢>「今のこの人生を、もう一度そっくりそのままくり返してもかまわないという生き方をしてみよ」(白取春彦著『超訳 ニーチェの言葉』)。
1)(1)の正しく生きるための考え方、で述べたように、「『正しく考える』こと
が、人生を幸せに導く…人生は、習慣のコンビネーションです。良い習慣、悪い習慣 のいずれにしても、習慣の源は、考え方の癖―――習慣づいた考えにあります。『正しく考える』ことは、人生でもっとも重要」(ジェームズ・アレン著『答えはすべて あなたの中にある』)で、“正しい考えを持つ”ことは、豊かな人生を送るための必要条件である。
2)「こころはその人をつくりもし、また壊しもするという恐ろしいものなんだ。人生
はまこと心ひとつのおきどころ」(中村天風『成功へ導く言葉』)。加えて「悲し
み、怒りのような感情は、すべて私が自分でつくりだしている。私がいなければ、悲
しみも怒りもない。自分本位のそうした感情は捨て去ることである。(中略)与えら
れていない事柄に不満を持つのではなく、与えられたものに感謝するのが、幸せをつ
かむ唯一の方法であると思う。生きているかぎり、一つや二つの幸せはあるであろ
う」(『生と死が創るもの』)。良心に従い、利他を思い、足るを知る、というこ
と。
3)「みんないっしょ。そのくせ、ほんのわずかな心がけのちがい、考え方のちがい
で、人を幸せにもし、不幸にもする。その差はまた天地ほどもあると言えよう。
みんないっしょであって、しかもみんなちがう。これが自然の理であり、また人の世というものであろうか」(松下幸之助著『続 道をひらく』)。だから「世の中で人間ほどおもしろいものはないと、わたしは思う。利害とか思惑とかがなくなれば、人間の姿がより鮮やかに、よりおもしろく見えてくるはずである」なのである(城山三郎『人生の流儀』)。養老猛氏も「人間というものは本来それぞれの性格を持ち、それぞれの才能や容姿を持っている。それはいいところと悪いところが重なり合っていて、他人から見れば好かれたり嫌われたりしながらも、それがそのまま生きていれば、たいへんおもしろいものだとぼくは考えている。本当に自分を楽しんでおもしろく生きている人は他人が見てもおもしろい。」といっている(『大事な話』)。人生をまじめに楽しむ術を掴んだ人が人生の勝者なのだと思う。
4)「『人にやさしくあれ』『正直であれ』『嘘をつくな』『卑怯なことをするな』
『約束を守れ』『弱い者をいじめるな』『親孝行をしろ』『兄弟仲良く』といったこ
とで、これらの想いを『良心』というのである。それゆえに、われわれはこのモラル
を犯すと、良心の呵責に襲われるのである」(岬龍一郎訳の『武士道』新渡戸稲
造)。また「『良心の声はいかにもか細く、もみ消すことは簡単である。しかしその
声はあまりにも明解で、聞き違えることはない』ということだ。良心とは、私たちの
心が澄んでいるとき、原則に沿っているかどうかを感知させてくれ、原理原則に近づ
かせてくれるために人間に与えられた賜物である」とある(スティーブン・R・コ
ヴィー『7つの習慣』)。こころが濁っている人には良心の呵責はない。悪行を繰り返
すことになる。やはり、人間として正しい道を歩いているという実感なくしては、内
省も良心の呵責もない。
良心を呼び戻す手段として“空”や“無の境地”がある。
5)平成六年天皇・皇后訪米の際に、クリントン大統領が日本文化の精神を表す歌とし
て引用した幕末の歌人橘(たちばな)曙覧(あけみ)という人生の達人についての『橘曙覧
「たのしみ」の思想』(神一行著)に、「人生は一度かぎりなのだから、幸福に生き
るには『好きに生きる』ことしかないというのが、曙覧の人生観なのだが、『どんな
場合でも、理性的判断より魂の判断に従え』ということではないだろうか。(中略)
魂が本心良心の宿るところとするならば、その本心良心に背くような行動や言動は
いっさいしないことだ」とある。自由に好きに生きる大前提には、「人間が人間とし
て誇りをもって生きようとするとき、もっとも大切なものは、『かくあるべし』とい
う『自信』と『意志力』。(中略)好きに生きるためには、どこかで自分を律すると
ころがなければならない」のである。自由の履違えがここにある。
6)サミュエル・スマイルズ『自助論』の<高く飛ぼうとしない精神は、やがて地に堕
ちる>の項に、「『知は力なり』といわれる。だがもっと深遠な意味でいえば、人格
こそが力なのである。愛情なき心、行動を伴わぬ知性、やさしさに欠けた才気――こ
れらも確かに力であるが、ヘタをすると害悪をもたらすだけのものになりかねない。
われわれは確かに、このような知性からも何かを学びとり、楽しみを与えられるだろう。だが、それを尊敬できるかといわれればなかなか難しい。ちょうど、器用に人のふところから財布を抜き取るスリや、馬をみごとに操る追いはぎを尊敬しかねるのと話は同じである。
正義や高潔、善意という資質は、単なる言葉のアヤでは語りつくせない。そして、これらの資質こそが人間の人格の根本を形づくっていく。この資質に意志の強さが加われば、それこそ鬼に金棒だ。善を行い悪を拒み、困難や不幸に耐えぬく力は、たちどころにわれわれの体内にみなぎるにちがいない」とある。これは、洋の東西を問わず人間の基本なのだ。
7)「いつも機嫌よく生きていくコツは、人の助けになるか、誰かの役に立つことだ。
そのことで自分という存在の意味が実感され、これが純粋な喜びになる」(『超訳
ニーチェの言葉』)。それに伴い「利他的に考える習慣で、心が広くなり、“人生の
質”が向上する」(ジョン・C・マクスウェル『その他大勢から抜け出す 成功法
則』)。
〇自己中心的な人生ほどむなしい人生はない
〇自己中心的でない人生ほどバランスのとれた人生はない
8)書物名が不確かなのだが、「昨今は、『論理で批判する』ことが、『客観的な正し
い視点』であるかのような風潮がある。だが、『慈(いつく)しみのない正義』にどれほ
どの力があるだろう。権力や団体企業に対しては批判精神も持ち合わせていなければ
ならないが、身近な個人に対しては『優しい目線』をもつように努力したい、それに
よって救われるのは、相手以上に、自分自身なのだろう」・・・いつでもどこでも誰にで
も、まず優しい目線。
9)「すべてがスムーズに進行してしまったのでは、面白みがなくなる。すべてに辻褄
が合ったのでは、拍子抜けしてしまう。そのように考えると、バランスをとったり調
整を図らなくてはならないものがあるという事実が、いかに人生を面白いものにして
いるかがわかる」(山崎武也『本物の生き方』)。これは陶芸と同じだ。釉掛け後の
本焼きで予想外の結果となる。それが面白く楽しめる。だから続く。
10)愛読書『博士の愛した数式』の著者小川洋子氏と臨床心理学者の河合隼雄氏の対談
集『生きるとは、自分の物語をつくること』に、矛盾だらけのこの世と個性について
のくだりがあった。河合氏「人間は矛盾しているから生きている。全く矛盾性のな
い、整合性のあるものは、生き物ではなくて機械です。(中略)『その矛盾を私はこ
う生きました』というところに、個性が光るんじゃないかと思っているんです」。そ
れを受けて小川氏は「矛盾との折り合いのつけ方にこそ、その人の個性が発揮され
る」という。
矛盾、不条理とあるべき姿。その折り合いの付け方。矛盾を黙認するか、 “仁”と“義”を生いかし何とかしようとするかが“個性”の差だ。
11)「人には、年寄りだとか若いとかに関係なく、、、、『これだけは譲れない』とい
うところがぜひあって欲しいものである。そうでないと、人の一生というものが、
まったく生き甲斐のないものになってしまう」(斉藤孝訳『現代語訳 論語と算
盤』)。その不受理が社会的問題、他者を不幸にする問題ならば、信念に基づき不条
理が繰り返されないように抗する“個性”を発揮する人間が多数派になれば社会浄化
が進む。
12)ウエイン・W・ダイアー『自分のための人生』の<自分流のやり方をもつ>の項
に、「道理にかなっていなければ、些細な規則は無視してしまえるし、伝統的なしき
たりで人生に重要な意味を持つものであっても、それが自分にとってつまらないもの
であれば、静かに肩をすくめて拒絶してみせる。(中略)どんな問題であれ、自分な
りのやり方で処理する。…だから、あらゆることに独創的なアプローチができるので
ある。一定のやり方でものごとをやらなければならないと思っていない」とあった。
本質的ではないことや自分の生き方、信条に関して意味の薄いものにはこだわらない
ということだろう。
13)次の文章は、二つの文ともに結論の部分を本文で引用した。改めて強調したい。
「他人に対して誠実になれば、心を開いた信頼関係が築かれ、言葉のあるなしに関係
なくコミュニケーションはうまくいく。言葉には何も意味もない。人間に意味がある
だけだ」(コリン・ターナー『あなたに奇跡を起こす小さな100の知恵』)。人間
に意味とは、その人の存在価値で、「人間は、どれほど具体的に役立つかによって価
値がきまるものではない。何よりもその存在のしかた、その中でもとくに情緒面のあ
りかたが、人格の存在意義を決定するたいせつな要素の一つであると信ずる」(『新
版 人間をみつめて』)。
14)「人間には、自分を疚(やま)しく思う部分が必要だ。自分は正しいことしかしてこ
なかった、と思うような人になったら、周りの者が迷惑する。自分の内面の美学や哲
学には不純であってはならないけれど、生きていくための方途については誰も理想ど
おりにはやっていないのだから、その誤差をおおらかに許せる人のほうが好きなので
ある」(『敬友録 「いい人」をやめると楽になる』)。自分に厳しく、他者に優し
く、ですね。
15)「教養とは、自分とは別の価値観も許容するということだ。自分だけの狭い価値観
にとらわれず、別の価値観を理解し、広い立場に立って判断できるということだ。
(中略)自分の価値観はしっかりもちながらも、別の価値観の人間の行動も理解し、
その上でどちらが正しいかを判断するというのが、最も知的な人間のすることだ」
(『頭がいい人、悪い人の話し方』)。国の将来を決める重要な立場にある今の政治
家によ~く聞かせたい。
16)扇谷正造氏は『自己啓発百科』の中で、自己啓発のバネとして次の五つをあげてい
る。
①本を読め。②事実を鋭く観察せよ。③人の話をよく聞け。④なるたけ大勢の人と話し合え。⑤ときどきたった一人になってモノを考えてみよ。常にこの段取りを踏みたい。
船井幸雄著の『完結編・上に立つ者の人間学』に、万人が認める上手に生きている人々の特性として、①楽しく生きている ②明るく人相がよい ③生き方が納得できる ④よく学び、よく働く ⑤安心でき、信頼できる、とある。
何かを決めるとき、上記のルールに従ってもう一度考える。立ち止まり安全サイドで決断する。
17)「子の曰わく、道に志(こころざ)し、徳に拠(よ)り、仁に拠(よ)り、藝に依り、藝に
遊(あそ)ぶ」(『論語』)=先生がいわれた、「正しい道を目ざし、〔わが身に修め
た〕徳を根拠とし、〔諸徳のなかで最も重要な〕仁によりそって、芸(げい)〔すなわち
教養のなか〕に遊ぶ」が出来れば最高の人生!
18)老子は、「わたしは、ゆったりと、春の海のように生きたい。あてどなくのんびりと吹く風のように、さらさらと生きたい」(『老子・荘子の言葉100選』と。これは老境に入ってから?また「人生の旅を幸福にするためには、一日一日の景色をゆっくり眺め、ゆっくり味わわなければならない」とあり、これなら老境前でも出来そうだ。そうすれば、「時の流れを知り、その意義を理解したとき、枯れ草の温かさは一段と意味を持ち、感動を一層大きくしてくれ」(『現代に生きる無門関』)人生が味わい深いものになるに違いない。