04.システムの構成要素

システムの構成

◎クライアントサーバシステム

LAN上で資源を共有してサービスを提供する側をサーバ、そのサービスを利用する側

をクライアントと呼び、それらを組み合わせて構築されたシステムのこと。

プロセス間通信機能を利用し、一連の処理をサービスを受けるプロセスとそのサービス

を提供するプロセスとに分離したものである。

サーバの例)

プリンタサーバ、ファイルサーバ、アプリケーションサーバ

●2層C/Sシステム

データベースにアクセスを行う層をサーバに設け、ほかの処理を行う層をクライア

ントに設けるシステム。ストアドプロシージャを用いない場合、SQL文はクライ

アントからサーバに送出される。

○RPC(Remote Procedure Call)

ネットワーク上で、別のコンピュータ上にあるタスクを呼び出すこと。

○ストアドプロシージャ

SQL文など、サーバに登録するプロシージャ。

プロシージャってなに?

>プログラム内の手続き。

●3層C/Sシステム

下記のように3層にすることで各層の結合度が疎になり、2層よりもシステムの拡

張性と柔軟性がある。データ加工処理をサーバ側で実行するのが特徴。

アプリケーションの修正や追加が頻繁なシステムに有効。

(サーバ)

データ層:データベースアクセス

ファンクション層:データ加工処理

プレゼンテーション層:データのインタフェース機能

(クライアント)

◎Webシステム

ブラウザで閲覧しネットワーク上での通信を介して動作するシステム。

パソコンへのインストールが不要。

◎シンクライアントシステム

企業の情報システムにおいて、社員が使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機

能しか持たせず、サーバ側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理する

システム。

○SAN(Storage Area Network)

ハードディスク装置や磁気テープ装置などのストレージと、サーバなどのコンピュー

タを、ファイバチャネルなどのシリアルSCSIプロトコルを用いてネットワーク化した

システム。

○NAS(Network-Attached Storage)

SANを意識して名付けられたストレージ製品。

○HPC(High Performance Computing)

自然現象のシミュレートや生物構造の解析など非常に計算量が多い計算処理のこと。

◎システムの構成方式・処理形態

●システムの構成方式

○シンプレックスシステム

通信制御装置──CPU──ファイル

○デュアルシステム

全く同一の2つのシステムが同じ業務を行う方式。結果に不一致が生じたときには

原因を究明して故障したシステムを自動的に切り離す。信頼性は高いがコストも高

い。下記の図は「密結合プロセッサ」であり、主記憶を共有している。

▲▲▲

┌─CPU──ファイル

│ ↑

通信制御装置─┤ │処理結果照合

│ ↓

└─CPU──ファイル

○デュプレックスシステム

正規システムと予備システムの2つのシステムで構成される方式。

普通は予備システム(待機系とも言う)は別業務を行っている。

正規システムが停止した場合、ただちに予備システムが処理を続行する。

※ホットスタンバイ

待機系には処理をさせずに、常時電源ONにして切り替えの準備をしていて、

実運用系にトラブルが生じたときに、自動的にバックアップ系に切り替わる

仕組み。

┌─通信制御装置──CPU─┐ ┌─ファイル

切替装置─┤ ├─切替装置─┤

└─通信制御装置──CPU─┘ └─ファイル

○マルチプロセッサシステム

・多重化システム方式

CPUの機能を拡張する複数の付加プロセッサが同じ命令を処理して、その結果

を多数決回路で判定する方式。

・密結合マルチプロセッサ方式

必要なオペランド(演算データ)がそろっている命令を、空いているプロセッサ

へ転送して実行させる方式。

・疎結合マルチプロセッサ方式

二つ以上のプロセッサがそれぞれ独立した主記憶を備え、プロセッサ間の通信は

高速バス又は通信リンクで行う方式。

・コプロセッサ方式

浮動小数点数演算プロセッサに代表されるようにCPUの機能を拡張する付加

プロセッサを、共通バスで結合した方式。

┌─CPU─┐

│ | │

通信制御装置─┤ 主記憶 ├─ファイル

│ | │

└─CPU─┘

○パラレルリランダントシステム

┌─CPU─┐

通信制御装置─┤ ├─ファイル

└─CPU─┘

○タンデムシステム

通信制御装置──小型CPU──主CPU──ファイル

●システムの処理形態

○集中処理

1台のコンピュータに処理を集中させたシステム。

<特徴>

システム規模:非常に大きい。

ホストの負荷:非常に大きい。

データの一貫性:リアルタイムにデータを更新できる。

拡張性:拡張しにくい。

信頼性:ホストがダウンすると全て使用不可になる。

安全性:特定のユーザーしかアクセスできないので高い。

<各種集中処理>

・参照応答型処理

端末とホスト間でホスト宛ての1つのメッセージの対し、それに対する応答

メッセージが返される。

例)データベース検索サービス

・データ収集処理

端末から送られてきたデータをホストに蓄積し、あとでまとめて処理する。

端末からホストへの片方向伝送。

例)POS(Point Of Sales:販売時点管理情報)

・メッセージ交換処理

複数の端末がホストを経由して相互にデータ交換を行う処理。

例)電子メール

・リモートバッチ処理

遠隔端末からバッチ(一括)処理を行う処理。

例)RJE(Remote Job Entry:遠隔端末から端末をコントロールして仕事

を行う処理方式)

<ネットワーク構成>

・ポイントツーポイント構成

ホストと端末がそれぞれ独立した回線で接続される。

例)回線交換

・マルチポイント構成

1本の通信回線を通じて、複数端末のデータを多重化。

例)パケット交換

<ネットワーク選定基準>

・トラヒック特性

データ量、応答時間、伝送密度

・コスト

回線や機器の費用

・ネットワーク特性

品質、信頼性

○分散処理

LANやインターネットなど。

対象とシステム形態で、下記のように4種類に分かれる。

<分散対象>

・機能分散

機能ごとに処理するプロセッサを分散させる。

・負荷分散

一つの機能を複数のプロセッサにより分担させる。

<分散システム>

・垂直分散システム

複数のプロセッサを階層化して接続。

[ネットワーク形態]

スター型

・水平分散システム

複数のプロセッサが対等に接続。

[ネットワーク形態]

ピアツーピア型

カスケード型

リング型

メッシュ型

システムの評価指標

◎システムの性能計算・性能設計・性能指標・性能評価

●性能設計

キャパシティプランニング

>「何を、どのくらい、どこに配置すれば良いか」を決めること。

決定する要件としては下記がある。

○CPU命令実行性能 → CPU資源の競合状態を表す

○チャネル転送速度 → 入出力装置の競合状態を表す

○トランザクション応答時間 → システムの総合的な処理状況を表す

○ページング発生頻度 → メモリ資源の競合状態を表す

○アドレス空間

○メモリアクセス時間

○入出力データ転送速度

○通信速度

●性能指標

○MIPS

1秒間に実行できる命令数を100万単位で示したもの。

○FLOPS

1秒間に実行される浮動小数点演算回数。

ベクトルコンピュータの演算性能指標。

○命令(インストラクション)ミックス

命令の出現頻度分布による重み付け。

・ギブソンミックス(科学技術計算用)

・コマーシャルミックス(事務計算用)

○ベンチマーク

標準的なプログラムの実行時間を測定してコンピュータの性能を評価・比較。

応用範囲はあまり広くない。

・SPEC:ベンチマークを標準化し、テストによる性能評価を行うグループ。

・SPECratios:SPECmark(整数演算や浮動小数点演算用の性能評価)を求めるため

の要素変数。

●性能評価

○シミュレーション

システムパラメータにより適切な値を求めたり、システムの限界性能を知ったり

する。

○モニタリング

プログラムの実行状態や各資源の利用状況などを測定すること。

・ソフトウェアモニタ:プログラムで実施

・ハードウェアモニタ:機器を使用して実施

○OLTP(オンライントランザクション処理)性能評価

・TPC-A:標準的なトランザクション処理能力を評価

・TPC-B:バッチ処理能力を評価

・TPC-C:業務処理能力を評価

・TPC-D:意思決定支援システムを評価

※端末、ネットワーク、ソフトウェアなども含んだシステム全体の性能評価。

◎待ち行列理論

待ち行列ができたときの平均待ち時間や平均応答時間を求める手法。

●M/M/1モデル

ある窓口サービスの客の到着分布、サービスがされている時間分布、およびその

サービスの窓口数が下記の状態のときの平均待ち時間や平均応答時間をシステム

性能に応用したモデル。

トランザクション到着分布:M(ポアソン分布)

回線利用分布 :M(指数分布)

通信回線数 :1

N:発生件数、T:平均処理時間 とすると、

○回線利用率=NT

NT

○待ち行列長=────

1-NT

NT

○平均待ち時間=待ち行列長×平均処理時間=────×T

1-NT

NT T

○平均応答時間=平均待ち時間+平均処理時間=────×T+T=────

1-NT 1-NT

※プロセッサの利用率(X)と応答時間(Y)の関係グラフ

回線利用率が1に近づくに従って無限大になっていく。(漸近線あり)

↑ *:

│ *:

│ *:

│ * :

│ * :

│ ** :

*** :

0└───────┴→X

◎システムの信頼性計算・信頼性設計・信頼性指標・信頼性評価・経済性

●信頼性計算

稼働率(アベイラビリティ)、故障率を用いて計算する。

稼働率=MTBF/(MTBF+MTTR)

故障率=MTTR/(MTBF+MTTR)

稼働率+故障率=1

(MTBF(Mean Time Between Failures):平均故障間隔)

(MTTR(Mean Time To Repair) :平均修復時間)

故障率=1/MTBF

○バスタブ曲線

故↑* *

障│ * *

率│ * *

│ * *

│ * *

│ ** **

│ ***

└──────────────→

初期 偶発的 磨耗 時間

故障期 故障期 故障期

●信頼性設計

<高信頼性技術の目標特性「RASIS」>

R(Reliability):信頼性

A(Availability):可用性

S(Serviceability):保守性

I(Integrity):保全性

S(Security):安全性

<信頼性の重視ポイント>

○フェールソフト(継続重視)

システムの全ての機能・性能の維持が困難なときに故障部分を切り離し、たとえ

性能が低下しても部分的に動作を続行する。

※フォールバック

フェールソフトのシステムにおいて故障した装置を切り離して運用すること。

○フェールセーフ(安全重視)

システムを常に定められた安全状態に保つこと。たとえシステムを停止させても

安全性が確保されるまで稼動させない。

例)鉄道の信号システム(事故発生時に全て赤になる。)

<信頼性技術>

○フォールト・トレラント

構成要素の各構成レベルに冗長性を導入し、構成要素の故障があってもシステム

全体としては正しく動作する状態に保つことをいう。

※フォールト・イン・トレラント

システム構成要素に故障しにくいものを選びシステム全体の動作を正常に行う

よう設計すること。

※フォールトアポイダンス

システムに故障が起きないように、故障そのものを排除すること。

○フールプルーフ

誤操作によるトラブルの発生が起こらないような仕組みを指す。

メニュー画面上の使用権限のない機能は実行できないようにする、など。

直訳は「馬鹿でも何とかなる」。

※ホットサイト方式

災害発生時にも中断をできるだけ少なくして処理を継続させる方式。

※コールドサイト方式

遠隔地に場所と建物を確保しておき、災害発生時に初めて被災地に機材を搬入して

バックアップセンタとして利用する方式。