荘子:養生主第三(2) 庖丁為文惠君解牛

荘子:養生主第三(2) 庖丁為文惠君解牛

2009年07月24日 10時13分31秒 | 漢籍

荘子:養生主第三(2)

庖丁為文惠君解牛,手之所觸,肩之所倚,足之所履,膝之所踦,砉然響然,奏刀騞然,莫不中音,合於桑林之舞,乃中經首之會。

[荘子:「養生主篇」もくじ]

庖丁(ホウテイ)、文恵君のために牛を解(と)けり。手の触るる所、肩の倚(よ)る所、足の履(ふ)む所、膝(ひざ)の踦(かが)まる所、砉然(カクゼン)たり、響然(キョウゼン)たり。刀(トウ)を奏(すす)むること騞然(カクゼン)として音に中(あた)らざること莫(な)く、桑林(ソウリン)の舞(まい)に合(かな)い、乃(すなわ)ち経首(ケイシュ)の会(カイ・しらべ)に中(あた)る。

ある時、庖丁(ホウテイ)が文恵君のために牛を料理して見せたことがあった。

庖丁の手がふれるところ、肩を寄せるところ、足をふんばるところ、膝(ひざ)をかがめるところなど、(その身のこなしは、なんともいえず見事である)

彼が牛刀(ギュウトウ)を動かし進めるにつれて肉がザクリザクリ(騞然)と切り裂かれてゆく、その手さばきがみな音律(リズム)にかなって快く、身のこなしは「桑林の舞」という、昔、商(=殷)の湯王が桑林という土地で雨乞いをした時用いたという舞楽もかくやと思わせるほどであり、そのリズミカルな手さばきは、堯の時代の音楽「咸池」の一楽章である「経首」を演奏するときのオーケストラの旋律そのものであった。

庖丁(ホウテイ)

庖丁は、人(ホウジン)つまり料理人の(テイ)さん ということ。

くりや。台所。

会意兼形声。包(ホウ)は、外から包む意を含む。

庖は「广(いえ)+音符包」で、食物を包んで保存する場所の意。

文惠君(ブンケイクン)

・梁の恵王のこと。(逍遥遊篇)

砉然(カクゼン)

・かつかつ。刀で牛などを切りさく音の形容。(=騞然)

・砉 くわっと切りこみを入れる。

「砉然(ケキゼン・カクゼン)」とは、骨と皮が離れるときに出る音の形容。

会意兼形声。「石+(音符)丯(カイ=害・割。切りこみを入れる)」。

◆丯 指事。ぎざぎざの刻み目をつけることを示す。契(ケイ)の原字。

騞然

・=砉然。かつかつ。刀で牛などを切りさく音の形容。「奏刀、騞然莫不中音=刀を奏むるに、騞然として音に中たらざるなし」

・勢いするどくはやいさま。

嚮然(キョウゼン)

・音の響くさま。(「響」に当てた用法)

桑林(ソウリン)

・商(殷 イン)の湯(トウ)王がひでりのとき、雨ごいをした場所。商の聖地で土地神のまつられた所。

・商の王の用いた音楽・歌舞の名。

經首(ケイシュ)

・帝尭(ギョウ)時代の音楽の名。

⇒ [養生主第三(3)]・[荘子:内篇の素読]