荘子:斉物論第二(10) 天地一指也,萬物一馬也

荘子:斉物論第二(10) 天地一指也,萬物一馬也

2008年10月28日 00時00分14秒 | 漢籍

荘子:斉物論第二(10)

以 指 喻 指 之 非 指 , 不 若 以 非 指 喻 指 之 非 指 也 ; 以 馬 喻 馬 之 非 馬 , 不 若 以 非 馬 喻 馬 之 非 馬 也 。天 地 一 指 也 , 萬 物 一 馬 也 。

[荘子:「斉物論篇」もくじ]

指を以て指の指に非ざるを喩(さと)すは、指に非ざるを以て指の指に非ざるを喩すに若(し)かざるなり、馬を以て馬の馬に非ざるを喩すは、馬に非ざるを以て馬の馬に非ざるを喩すに若かざるなり。天地は一指なり、萬物は一馬なり。

詭弁学派のうちには、まず指という個物の存在を認めたあとで、指が指でないことを論証しようとするものがある。しかしそれは、最初から指という個物を越えた一般者から出発して、そのあとで指が指でないことを論証するのには及ばない。

また、まず馬という個物の存在を認めたあとで、馬が馬でないことを論証しようとするものがある。しかしそれは、最初から馬という個物を越えた一般者から出発して、そのあとで馬が馬でないことを論証するのには及ばない。

無差別の道枢の立場からみれば、天地は一本の指であるともいえるし、万物は一頭の馬であるともいえるのである。

■音

【ピンイン】[yu4]

【呉音・漢音】

【訓読み】さとす、さとる、たとえる、たとえ

■解字

会意兼形声。兪(ユ)は中身をくりぬいてつくった丸木舟。じゃまな部分を抜きとる意を含む。

喩は「口+音符兪」で、疑問やしこりを抜き去ること。

■意味

さとす。さとる。疑問を解いてはっきりとわからせる。はっきりとわかる。《同義語》⇒諭。

「君子喩於義=君子は義に喩る」〔論語・里仁〕

▼「指を以て指の指に非ざるを(あき)らかにするは、指に非ざるを以て指の指に非ざるを(あき)らかにするに若(し)かざるなり」(福永光司)

⇒ [斉物論第二(11)]・[荘子:内篇の素読]