・2017年08月20日 MP3 ヨハネによる福音書 13:21-30
「夜の出来事」 広田叔弘牧師 日本キリスト教団 梅ヶ丘教会 https://www.church.ne.jp/umegaoka/index.html
礼拝メッセージ(音声)
https://www.church.ne.jp/umegaoka/20170820.mp3
10:40~熱心に信じる信仰生活の中で「神さま信じて何かいいことあるんだろうか」思うことはないでしょうか。
新宿って街があります。新宿。私、子供の頃この街が嫌いでした。雑多で人が多くて怖かった。けれども今では、新宿という街の魅力というのか力というのかこれはわかります。
銀座っていう街があります。銀座と新宿は全然違います。銀座だとお金が無いと行ってもしょうがないようなとこがあります。けれども新宿っていう街は、すべてを飲み込んでしまう。お金があっても無くても、地位があっても無くても、すべてを飲み込んでしまう。街だと思う。闇は闇に溶けます。闇と光は交わらない。
17:30~では、その闇を照らす光ってなんだろうか。ここで十分に理解することが必要です。
イエスさま光なんだ。私たちの闇を照らす光だ。だから信じよう。こう書いてある。けれども、これで終わったら実は救いにはなりません。
闇があってイエスさま、それを照らす光です。さあイエスさま信じましょう。それでは救いはならないんです。なるわけがない。私たちに抱く闇。闇っていうと否定されるんですけれども、実はその闇っていうのは、とても大事なものです。
例えば絶望する。希望持てない。このこと自体幸いじゃないし、絶望から何かが生まれるってことはないでしょう。けれども人は簡単に絶望しません。
何かあったんです。沢山の努力をして実らなかった。時間をかけ心を砕き頭を使い手を動かして一生懸命やってきた。
あるいはその努力は、物じゃなくて、あるいは仕事じゃなくて、人に費やされたものかもしれない。しかし実らなかった。正当に受け止めてもらうことが出来なかった。
絶望自体。希望持てないってこと自体は、辛いことです。肯定されることじゃないでしょう。けれども、そこに至ったプロセスっていうのは大事なことです。生きてきた日々なんですから、よく言います。愛することが出来ないんだ。赦すことが出来ないんだ。
もしかしたらその人は、愛せないんじゃなくて、愛されて来なかったのかもしれません。愛したいんだけれども愛し方がわからないっていうことがある。あるいは愛したんだけど、信頼して貰えなかった。あるいは裏切られたのかもしれない。
「愛せないんです」「赦せないんです」イコール冷たい人だ。未成熟です。そんなことじゃない。愛せないって嘆く人は、愛すること、愛されることを願って実現されて行かない。苦しんでいる人でしょう。
闇って簡単じゃないです。暗い、いけないものだ。確かに闇は自分を苦しめるんですけれども、しかし単純に否定して闇だから光を当てればいいんだ。聖書はそういうことを語っているわけではない。
ユダは闇を抱えて夜の中へ行く。彼にとっては夜が安心できる。そういう心があったんでしょう。そして「あいつは光よりも闇を好んだ。だから滅びるんだ」。聖書はそんなこと言ってないです。闇を持っているからダメなんだ。そんなこと言ってない。
どうしてそんなこと言えるのか。イエスご自信が闇の中に入って行くからです。イエスさま光。ユダは闇。「暗い夜の中に紛れてどこかへ行っちゃった」そんなこと書いてないです。
主イエスご自信がユダが入って行く夜の中へ行くんです。イエスさま、どこで死んだかゴルゴダの丘ですよ。処刑場です。
家族や弟子に囲まれて布団の上で亡くなったわけじゃない。弟子に裏切られ、弟子から見捨てられ、仕えた者たち、愛した者たち、福音を伝えて来た者たち、彼らに見捨てられた。何ひとつ悪いことはしていない。
神と人との愛をあらわし続けて、このお方は十字架に上げられて行った。人を愛し神を愛し人生を砕いて人々に与えた人。その報いは手と足に鉄の釘を打たれることだった。まさに暗黒です。
キリストっていうお方は闇の中に入って行く人です。そして闇の中に入って「お前たちのしたことはこういうことだ」告発して裁きを与えるのではない。
闇の中に入って、その中で人間の闇を引き受けるわけです。キリストが光。暗いところをピカピカ照らすような蛍光灯の光じゃない。闇の窮みの中にキリストは立つんです。
そしてその中で自分を十字架に付けた人々を裏切った者たちを愛するんです。そこで灯りが点るんです。小さな光です。それは暗闇の中にロウソクを一本点けたような、燈したような小さな光が灯るんです。
ゴルゴダの丘というこの世の地獄。暗黒の窮みの中で、なおキリストが闇を抱えたひとりひとりを愛する。そこで神の愛という小さな光が灯るんです。
光は小さいんですけれども闇の中に輝く光が一本灯る。そしてその光は、闇に飲み込まれ闇の中で輝くんです。
暗いもの辛いものを抱えているからダメなんだ。じゃないんです。そういう私だから、そういうあなただから、キリストは世に来たんです。
あなたの闇。あなたそのものを引き受けて愛し続ける。暗いもの、言いえないものを持っているあなただからキリストは十字架に付いて、なおあなたを愛し続ける。
このイエスさまを知る時に、あなたの中に小さな光が宿る。消えない明かりが宿る。