フッサールの新資料を読む(8):『論理学:1902/03年の講義』と『1905年判断論講義』

日時:2019年3月17日(日)

*開始・終了時間は,下記の仮タイムテーブルから変更される可能性があります。

* はフッサール研究会企画実行委員

企画趣旨

今世紀に入ってからのフッサール研究に特有の事情の一つとして,全集『フッセリアーナ(Husserliana)』をはじめとした一次資料の刊行される勢いが明らかに増したということがあげられる。1950年の刊行開始から2000年までのちょうど50年では,(分冊も別々に数えるならば)合計32冊が全集として世に送り出されており,フッサールの一次資料が公になるペースは,平均すると一年に0.64冊でしかなかった(『フッセリアーナ記録集(Husserliana Dokmente)』第三巻として刊行された全10冊の書簡集のうち,索引を除く9冊をそこに加えたとしても,平均刊行ペースは一年に一冊に満たない0.82冊である)。それに対して2001年から2018年までの17年間では,『フッセリアーナ』として14冊,2001年に新設された『フッセリアーナ資料集(Husserliana Materialien)』として9冊が出版されている。つまり今世紀に入ってからは,一年に約1.28冊というそれまでの2倍(あるいは1.5倍以上)のペースで一次資料が新たに登場しているのである。もちろんこれらの資料には分量にも難度にもばらつきがあるため,単純な計算だけから結論を導くことはいささか安易ではある。だがそうはいっても,気づけば次の巻が出ているという状況がしばらく続き,途方に暮れていたフッサール研究者は少なくないのではないだろうか。これでは全部を読むことはもちろん,読んだふりをすることさえできないよ,と。

以上のような事情によりよく対処することを目的した研究会の第8弾として,今回は『フッセリアーナ資料集』第2巻『論理学:1902/03年講義』(2001年刊)と,同じく第5巻『判断論:1905年講義』(2002年刊)を取り上げる。

前者の『論理学』は,フッサールが1901年ゲッティンゲンに赴任してすぐに行なわれた1901/02年冬学期の講義「論理学と認識論」に由来し,論理学の身分をめぐる論争や論理学の基本的な諸概念に,『論理学研究』を上梓したばかりのフッサールによって詳しい解説が与えられている。その数年後の1905年に行なわれた講義「判断論」のためのノートが後者の『判断論』である。判断論とは何かを論じた概論部と,判断の現象学を展開した各論部に分けられ,特に概論部では,論理学,認識論,心理学,そして現象学の関係について検討が加えられており,これらの諸学科に対するフッサールの当時のコンセプトを知ることができる。実際,この二つのテキストは,『論理学研究』で述べられた思想にともにその足場を置いてかたちづくられたものである。したがって,『論理学研究』になじみのある者であれば,これらのテキストを読み解くことは,その行間に潜んでいた構想や不明点を明らかにする機縁となるだろうし,あまりなじみのない読者にとってもまた,フッサールの基本的な考え方を知るきっかけとなるだろう。いずれにせよ,両テキストが,『論理学研究』期のフッサールが何をどのように考えていたのかを知るのに欠かせない資料であることに疑いはない。

今回はこの二つのテキストを,『論理学講義』については綿引周氏(東北大学),『判断論講義』については植村玄輝氏(岡山大学)に要約・紹介をしていただき,読解の手がかりを与えていただく。

タイムテーブル

13:00~13:10 企画者による趣旨説明とイントロダクション

13:10~13:50 報告1:綿引周『論理学』

13:50~14:30 報告2:植村玄輝『判断論』

14:30~14:45 休憩

14:45~16:00 ディスカッション