フッサールの新資料を読む(9):『現象学の限界問題(1908-1937)』

  • 日時:2019年11月22日(金),16:00〜

  • 企画:植村玄輝,佐藤駿*

    • 報告者:植村玄輝(岡山大学),八重樫徹(広島工業大学),吉川孝(高知県立大学)

    • 場所:岡山大学津島キャンパス文法経1号館2階文学部会議室(岡山大学HP内「学内案内図・教室配置図」)

    • * はフッサール研究会企画実行委員

企画趣旨

今世紀に入ってからのフッサール研究に特有の事情の一つとして,全集『フッセリアーナ(Husserliana)』をはじめとした一次資料の刊行される勢いが明らかに増したということがあげられる。1950年の刊行開始から2000年までのちょうど50年では,(分冊も別々に数えるならば)合計32冊が全集として世に送り出されており,フッサールの一次資料が公になるペースは,平均すると一年に0.64冊でしかなかった。それに対して2001年から2018年までの17年間では,『フッセリアーナ』として14冊,2001年に新設された『フッセリアーナ資料集(Husserliana Materialien)』として9冊が出版されている。つまり今世紀に入ってからは,一年に約1.28冊というそれまでの2倍のペースで一次資料が新たに登場したのである。気づけば次の巻が出ているという状況がしばらく続き,途方に暮れていたフッサール研究者も少なくないだろう。

ここ数年,その刊行ペースはようやく落ち着いてきたというものの,扱われるテーマが多様で,その独自の難解さも和らぐことを知らないフッサールのテキストに単独で取り組むのは依然として容易ではない。新資料の内容をまとめる報告者を立て,その報告をもとに問題を検討し,参加者全員で理解を深めてゆくというのが本企画シリーズの趣旨であるが,その意義は失なわれずにいる。

とりわけ2014年に公刊された『現象学の限界問題』は慎重な扱いを要するテキストである。含まれている主題は「生・死・無意識・本能」といったそれと,形而上学の問題・倫理‐宗教的な問題を扱ったそれとに大きく分けることができるが,いずれもフッサール自身が公刊した著作では主題化され明示的に論じられることのなかったもの,しかも一般に流布しているフッサール現象学のイメージからするとセンシティブな内容を多分に含んでいる。テーマがテーマであるだけに,それを読解し,さらに何事かを論じようとするのであればいくら用心しても足りないことは誰の眼にも明らかだろう。本企画を通じて参加者がその理解を深め,それぞれの研究の資としていただければと考える次第である。

報告者は植村玄輝,八重樫徹,吉川孝の三氏である。いずれも『限界問題』というこの容易ならざるテキストを読み解くにあたって,堅実で精確な手がかりを与えてくれるであろう。

タイムテーブル

    • 16:00~16:10 趣旨説明とイントロダクション

    • 16:10~18:20 報告(各報告を40分ほど三部に分け,あいまに適宜,休憩をとる)

    • 18:20~ ディスカッション

    • * タイムテーブルは予定のものであり,いくらか変動する可能性があります。