フッサールの新資料を読む(7):『本質の理論と形相的変更の方法について:遺稿からのテクスト(1891–1935)』

企画・司会・提題者(*印はフッサール研究会企画実行委員)

企画:植村玄輝(岡山大学)、*八重樫徹(広島工業大学)

司会:植村玄輝

報告者:*橋詰史晶(早稲田大学)・*栁川耕平(立命館大学)

開催趣旨

今世紀に入ってからのフッサール研究に特有の事情の一つとして、全集『フッセリアーナ(Husserliana)』をはじめとした一次資料の刊行される勢いが明らかに増したということがあげられる。1950年の刊行開始から2000年までのちょうど50年では、(分冊も別々に数えるならば)合計32冊が全集として世に送り出されており、フッサールの一次資料が公になるペースは、平均すると一年に0.64冊でしかなかった(『フッセリアーナ記録集(Husserliana Dokmente)』第三巻として刊行された全10冊の書簡集のうち、索引を除く9冊をそこに加えたとしても、平均刊行ペースは一年に一冊に満たない0.82冊である)。それに対して2001年から2017年までの16年間では、『フッセリアーナ』として14冊、2001年に新設された『フッセリアーナ資料集(Husserliana Materialien)』として9冊が出版されている。つまり今世紀に入ってからは、一年に約1.44冊というそれまでの2倍以上(あるいは約1.8倍)のペースで一次資料が新たに登場しているのである。もちろんこれらの資料には分量にも難度にもばらつきがあるため、単純な計算だけから結論を導くことはいささか安易ではある。だがそうはいっても、気づけば次の巻が出ているというここ十年あまりの状況を目の当たりにして途方に暮れたフッサール研究者は少なくないのではないだろうか。これでは全部を読むことはもちろん、読んだふりをすることさえできないよ、と。

以上のような事情によりよく対処することを目的した研究会の第七弾として、今回は『フッセリアーナ』第41巻『本質の理論と形相的変更の方法について:遺稿からのテクスト(1891–1935)』を取り上げる。本質とその把握に関するフッサールの草稿を集成した本巻は、時系列にそって全5部に分けられている。そのそれぞれで中心となるテーマは以下の通りである。

  1. フッサール初期の大著『論理学研究』における普遍者(スペチエス)に関する見解の成立(1891–1901)。

    1. 本質の把握に関する初期から中期にかけての取り組み(1891–1917)。

    2. 『ベルナウ草稿』における個体化論とも関連した、最低次の本質(いわゆる「形相的単独態」)および本質把握における想像の役割に関する議論(1917/18)。

    3. 「形相的変更」についての本格的な議論が展開された『現象学的心理学』講義へと至る取り組み(1918–1925)。

    4. 『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』における「生活世界の存在論」や「自己省察としての現象学」といったトピックへと至る、世界と自我の本質に関する考察(1926–1935)。

このように、採録されたテクストは『算術の哲学』期から晩年の長い期間にわたるが、このことは、「本質に関する形相的探求としての現象学」という考えが、フッサールが追求し続けた学問としての哲学というプロジェクトにとって中心的な役割を果たしていたという事実を思い出せば、驚くべきものではないだろう。では、フッサールはこのプロジェクトをどこまで追究できたのだろうか。橋詰と栁川による本巻の報告は、いまだ評価の定まらないこの問題を論じるにあたって今後のフッサール研究が踏まえるべき事柄を明らかにするはずである。

開催日時・会場

2017年11月10日(金)16:40-19:20

大阪大学吹田キャンパス・人間科学研究科303教室

交通アクセス及びキャンパスマップ

http://www.hus.osaka-u.ac.jp/ja/access.html

タイムテーブル

16:40~16:50 司会者による趣旨説明とイントロダクション

16:50~17:30 報告1:橋詰史晶

17:30~18:10 報告2:栁川耕平

18:10~18:20 休憩

18:20~19:20 ディスカッション