1 論争の歴史
・ 行動ファイナンスが認知されるまでは、1960年代以降、数学的に扱いやすく美しい理論モデルを構築した、現代ファイナンスが、ファイナンス学界を席巻した。
・ 行動ファイナンスは、1981年にShillerが報告したことから始まった。
・ 行動ファイナンスの最初の貢献は、現代ファイナンスでは説明できない現象を説明することであった。例えば、ROLL(1984,1988)、Cutler et al.(1991)。
2 行動ファイナンスからみた現代ファイナンス理論の整理
・ 現代ファイナンス(証券の市場価格)は、シンプルに言うと、キャッシュフローとリスクだけで決まる、と考える。
・ 行動ファイナンスは、2002年に、経済心理学者とも呼ぶことができるカーネマンがノーベル経済学賞を受賞したことから、一般的にも注目を集めるようになった。
3 行動ファイナンスとは: 現代ファイナンス理論との違い、経済心理学との違い
・ 行動ファイナンスは、伝統的ファイナナス理論の核となっている2つの要素に対して根本的な疑問を投げている。
一つは、完全な証券市場(frictionless market )は存在しない。現実の市場とは異なる。
もう一つは、投資家は常に経済合理的に行動するわけではない。
・ 行動ファイナンスは、現実の市場において、裁定取引には限界があると考える。
現実の証券市場において、リスク、リターンの完全に代替的な証券が存在しないことと、
非合理な投資家(ノイズトレーダー)の行動は予測できず、市場価格がファンダメンタルズに基づく価格に回帰する時期や確率にはリスクがあること、
の2つにより、裁定取引者もリスク回避的に行動するため、裁定取引には限界があり、不十分にしか行われないことになる。
・ 経済心理学(あるいは投資家心理学)と行動ファイナンスは違う。
・ 名称もファイナンス心理学ではなく、行動ファイナンス(Behaioral Finance )となる。
>第3章 裁定取引の限界(Limited Sentiment)(証券アナリスト2次レベル)
Contents > 2sp.証券分析とポートフォリオ・マネジメント(証券アナリスト2次レベル) > 第11回 行動ファイナンス(証券アナリスト2次レベル) >