前回紹介した 評価の高いコーヒーとは の改訂版です。前回のは2015年までのCoEオークションの結果についての分析でしたが,今回は2016年~2022年についての分析結果です。CoE開催国も27か国(2024年9月現在)に増えました。日本でも第三波が浸透しつつあり,品種もゲイシャなどが注目され,嫌気性発酵の精製方法なんかも出てきました。データを新しくして,もう一回同じような分析をやってみた最新の結果です。(このページの記事は当分野の山本杏奈さんの修士論文の結果です。修士論文は,そのうち京都大学から全文公表されますが,まだのようです。)
前回の 評価の高いコーヒーとは は,Traore et al. (2018)の結果でした。これは,2004年から2015年までのカップオブエクセレンス(CoE)オークションの結果を使った分析でした。今回のは,2016~2022年の間の分析です。この間,CoEにいくつかの変化がありました。
ひとつはCoE開催国の増加です。2015年段階で,開催国は21か国でしたが,2022年には4か国増えて25か国となりました。2017年ペールーが加わり,2020年にはエチオピア,2021年にインドネシアとエクアドルが加わりました。
CoE品評会の国際審査のスコアの下限が84点から87点まで引き上げられました。CoEを獲得し,オークションにたどりつく道がだいぶ厳しくなったということです。CoE品評会は,予備審査,第1次国内審査,第2次国内審査を経て,ようやく第1次国際審査に掛けられます。CoEオークションに出品されるコーヒーは,第2次審査で87点以上で上位30位以内のものです。この上位30以内というのも途中から出てきた基準のようです。
CoEオークションの落札者として日本の地位が高まってきました。CoEオークションでは,複数の業者が共同で入札することが多く,しかもそれが国籍を超えた共同である場合も多いので一概には言えないのですが,筆頭入札者の国籍でカウントすると,今回の分析期間で日本の業者が落札したのは45.4%,半分弱が日本の業者によって落札されています。その理由として,欧米の業者が,CoEを離れ,独自でコーヒー産地や生産者を探すようになったからという指摘もあります。一方で,年々中国や中東の業者が増えてきているようです。
2004年,パナマのエスメラルダ農園のゲイシャ種がパナマのオークションで1ドル21ドルという高値で落札されたのを機に,ゲイシャ種の人気は高まり続け,2019年には,エリダ農園のゲイシャ種にカップスコア95.25という驚異的なスコアが付けられ,1ポンド当たり1029ドルというこれまた驚異的な価格で取引されました。コーヒー生産各国も,安定高収量の品種から,良香味の新品種への転換がすすめられるようになりました。
コーヒーの精製方法は,以前だとほとんどがウォッシュトかナチュラルかでしたが,半水洗・ハニープロセスが一般的になってきました。さらに,アナエロビック,ダブルフォーメンテーションと呼ばれる嫌気性発酵を加えて独特の香味を付ける精製方法も出てきました。
日本でもスペシャルティコーヒーの需要が高まってきました。京都などでも,スペシャルティコーヒーを供するロースタリーカフェやコーヒースタンドが激増しています。そうした中に,CoE〇位と謳う商品も並ぶようになってきました。
前回の分析結果の説明でも述べましたが,2016年に,SCA(スペシャルティコーヒー協会)のフレバーホイールが一新されました。2017年には,このフレバーホイール改定の基礎ともなったWCR(ワールドコーヒーリサーチ)の用語集が改訂されました。香味を言葉で表現するのはなかなか難しいですが,取引には共通語が求められ,これまでも様々な試みがなされてきましたが,これで以前と比べてかなり進歩した感があります。