2000年ごろの日本人は、1年間に喫茶店やカフェで5000円払い、5000円分のコーヒーの粉やインスタントコーヒーを買い、缶コーヒーやテイクアウトで3000円ぐらい使っていました。この20年で、その支出はいずれも2000円ぐらいずつ増えました(家計調査、二人以上世帯)。バブル崩壊で、喫茶店の数が減る中、スタバなどのセルフ型カフェが普及し、カフェラテなどのエスプレッソベースのコーヒー飲料がはやるなどの見方も多様化しました。コンビニの100円コーヒーもヒットし。コーヒー市場を拡大させました。
日本のコーヒーの需給動向
1ポンド当たり生豆輸入価格(円)と輸入量の相関、データ:ICO
日本経済は1991年にバブルが崩壊し、経済は停滞していきます。24時間働けますかと嗾けられていたビジネスマンの憩いの場である喫茶店に対する需要も減退していきます。とはいえ、本格的に経済が落ち込んだなと実感したのは1993年ごろでしょうか。そして1995年の阪神淡路大震災にとどめを刺された感がありました。
いずれにせよそもそも減少していた喫茶店ですが、このころガクンと数を減らします。
喫茶店の事業所数及び従業員数
データ:全日本コーヒー協会、原データは、:総務省統計局「事業所統計調査報告書」「経済センサス基礎調査」「経済センサス活動調査 」
喫茶店の店舗数の減少とともに、その市場規模も縮小します。ただし、その縮小の傾向は穏やかで、しかも2010年あたりを底として回復していっています。おそらくこれはスターバック等のセルフ型カフェの拡大によるものではないでしょうか。上のグラフを見ると、喫茶店の店舗数とともに減少していた従業者数が、2000年代に入って減少が止まり、むしろ増えています。昔ながらの喫茶店が狭いところで1~2人でやっておられたのに対し、セルフ型カフェは広めのスペースで結構な人数が働いていますね。
ちなみに、この「市場規模」が何を表すか、日本フードサービス協会の統計の定義を確認していないのですが、おそらく売上高だと思われます。
喫茶店の市場規模
データ:日本フードサービス協会「外食産業市場規模推計の推移」
1996年8月、銀座にスターバックス日本1号店が出店。喫茶店と言えばコーヒーとたばこというのが定番だったのが、なんと店内禁煙。当時は同じセルフ型カフェのドトールも、隣ではいつも誰かたばこをふかしていたように記憶しています。新幹線のぞみの全席禁煙が2008年なので、だいぶ先を行っていました。オープンテラスなんかもあって、おしゃれということで、女性層を中心に支持されたようです。(スタバ+マックブックという組み合わせはいつからなんだろう?)
2000年ごろは世界的がコーヒー価格が下落していった時期でした。そうした中でスタバをはじめとするセルフ型カフェの拡大は、日本におけるカプチーノ、カフェラテとったエスプレッソベースのコーヒー飲料の拡大に大きく寄与しました。いわゆるコーヒーブームの第二波です。
しかし、スタバブームも徐々に変質していきます。スタバに行っても別にコーヒーを頼むのではなく、なんとかフラペチーノというスイーツ系(?)飲料を飲む人も増えました。2003年ごろにはコーヒー需要は頭打ちになります。
それまでの他社の試行錯誤を経て、2013年セブンイレブンが売り出したセルフ抽出型のコーヒーが大ヒットしました。レギュラーサイズ1杯100円のこのコーヒーは,2013年8月には,1店舗1日あたり91杯,年間4億5千万杯,売上500億円に達します。さらに2018月には1店舗1日あたり130杯,年間11億杯まで増加していきます。(メディアビジネスオンライン,東洋経済オンライン)他のコンビニも追随し、コンビニでコーヒーを買うことは普通の光景になりました。富士経済の調査によると,2012年のコンビニコーヒーの売上は275億円,2013年には1,087億円,2015年には2千億円を超えます。(報告書の値段が高すぎて入手できないのでネットの孫引きです)マクドナルド等の外食産業もこれに対抗し、業界を超えた競争が始まりました。日本のデフレ経済を象徴するような展開ですが、コーヒーの需要をぐっと押し上げました。
セブンイレブンの11億杯というのは,単純に計算すると,1杯に少な目20gの焙煎豆を使っているとして,歩留まり0.8で生豆に換算して453千俵ということになります。これだけの需要をセブンイレブンだけで生み出したことになります。缶コーヒーやセルフ型チェーン店の需要を食ったとしても,これにローソンやファミマも加わるのですから,ものすごい量です。↑の需給動向のグラフを見ると,2012年から2018年に生豆の需要はそのくらい右にシフトしているように見えます。実際,この期間需要量を減らしたのは缶コーヒーぐらいで,スタバも(コーヒーだけじゃないけど)売り上げは伸ばしています。
▼参考文献
参考文献:冨貴島明. (2014). コンビニコーヒー戦争の分析. 城西大学経済経営紀要, 32(37), 55-76.
家計調査に見るコーヒー等の購入額
総世帯の年間購入額、単位:円、データ:総務省「家計調査」
▼コーヒー? コーヒー飲料?
喫茶代は、喫茶店、カフェでの支出です。コーヒー以外の飲料、果物やお菓子なども含み、アルコールは含みません。
コーヒーは、要するに家で淹れるコーヒーです。粒,か粒,粉末,固体のもので、インスタントコーヒーとか、粉を溶かして飲むカフェオレ カプチーノなども含みます。
コーヒー飲料は、スーパーやコンビニに買って飲むコーヒーで、テイクアウトのコーヒーもこれのようです。液体のコーヒーで、濃縮液も含みます。ただし、液体のカフェオレとか コーヒー牛乳は、乳飲料に分類されます。
乳飲料は、生乳や乳製品を原料として,乳製品以外の成分(果汁,コーヒー,香料,カルシウム,鉄など)を加えたものです。コーヒーがはいっているとは限りません。いちごオレなんかも含みます。
▼二人以上世帯と単身世帯
家計のコーヒー関係支出を、二人以上世帯に限ってみてみると、需要の変化が一層よくわかります。
2012年ぐらいまで横ばいだった喫茶店代と2013年ぐらいから急に上昇します。2020年はコロナでガクンと落ちますが。。。
それとほぼ同額を支出しているコーヒー(家で淹れるやつです)はやや早く2011年ぐらいから上昇します。
コーヒー飲料はじわじわ来ていましたが、2010年ごろに頭打ちになっていました。しかし2013年から再び拡大しました。
乳飲料も安定的に伸びてきています。
それにしても、コーヒーと喫茶代が年間5000円~7000円、コーヒー飲料が3000円~5000円と、結構大きな支出額で、大きな伸びです。これは調査対象家計の平均値なので、全くコーヒーを飲まない、喫茶店には行かないという家計もすべて含んでこの額です。みんなコーヒー好きなんですね。
二人以上世帯
単身世帯は、2007年以降のデータしか得られませんでしたが、結構変動が大きいです。これは単身世帯の需要が不安定というよりも調査規模の問題もあるのかもしれません。家計調査の調査規模は、二人以上世帯が約8千なのに対して、単身世帯は約7百とずいぶん少ないです。ですから単年ごとの変動にはあまり意味がないかもしれません。
それでも、傾向として見えるのは、やはり家で淹れるコーヒーの支出額が二人以上世帯と比べると半分程度とずいぶん少なく、逆に、外で飲むコーヒー飲料が喫茶代と同程度です。
外で飲む喫茶代、コーヒー飲料については、やや低下傾向に見えますが、家で淹れるコーヒーについてはなんとなく増えているようです。コロナ後は明らかに増えてます。
単身世帯