スペシャルティコーヒーは,それ以外のコモディティコーヒーと何が違うのかについては,いろんな解釈がされることがあり,消費国によっても違ったりするようです。米国スペシャルティ協会(SCAA,2017年に欧州スペシャルティコーヒー協会と統合しSCAに)が2021年に「スペシャルティコーヒーの定義に向けて」というレポートを発表しました。
一般に,カッピングのスコアが100点満点中80点以上のものスペシャルティコーヒーと呼ぶ向きもありました。カッピングは,それなりの知識と経験を持つQ Graderが,指定のスコアシートを用いて,決められた環境と手順に従って行います。Cup of Excellence はこのカッピングをかなり重視します。しかし,SCAはこれを「狭すぎる」と言います。
コーヒーの価値は,一定の焙煎度合いで目隠しで評価されるカッピングのスコアだけではなく,外観,サイズやグレード,焙煎度合い,記述的な特徴なども含まれます。さらには,こうした豆そのものの価値だけではなく,オリジン(産地)がどこか,受けている認証,農園の名前,ブランドといった付随的な属性にも左右されます。既定のカッピングのスコアでそれほど高得点が得られない豆でも,その豆に合った焙煎で真価を発揮する豆はいくらでもあるようです。豆そのものより,その豆の背負っている物語が豆の価値を高めている場合もあります。価値は多くの属性で構成され,一元的ではありません。多様なのです。スペシャルティコーヒーはそうした多元的な価値を内包する形で定義されつつあるようです。