沖縄はコーヒーの産地としては,気候や地形が必ずしも恵まれているわけではありませんが,カッピングのスコアだけがコーヒーの価値を決めるものではないと,スペシャルティコーヒー協会は言っています。
よく見られるスペシャルティコーヒーの位置づけ
スペシャルティコーヒーとは,カッピングスコアが80以上と言われることがありますが,こうした定義について,スペシャルティコーヒー協会(SCA)は「狭すぎる」と言っています。
1982年にアメリカで,コーヒー豆の品質基準を設定するための共通のフォーラムとしてスペシャルティコーヒー協会 (Specialty Coffee Association of America, SCAA) が設立されます。薄々のアメリカンコーヒーに飽きていたアメリカでも,おいしいコーヒーを飲みたい消費者は出てきていました。1970年代にはスターバックスが開業するなど,新し動きも出てきていました。「おいしいコーヒーが飲みたい」という欲求は,世界のコーヒー価格維持のために行われていた輸出割当制を崩す一因になりました。1998年には,ヨーロッパでもスペシャルティコーヒー協会 (SCAE) が設立され,2017年にはSCAAと統合され,SCAとなります。
スペシャルティコーヒーとは何か?カッピングスコアが100ポイント満点で80ポイント以上であるとか,欠陥が無いとか少ないとか,いろいろ言われたりしますが,じつはSCAの正式な定義はありません。SCAは,2021年に「スペシャルティコーヒーの定義に向けて」というレポートを出しています。コーヒーの価値は,カッピングのスコアだけでなく,他の豆の属性や豆そのもの以外の農園名やブランド名,認証などで構成される多属性であるから,それに基づいて多属性で定義すべきとの方向性が示されています。
カッピングスコアは,それはそれで大事なことで,カップ・オブ・エクセレンス(CoE)なんかは,カッピング至上主義な訳です。CoEで評価されると,小ロットで無名な産地が一躍世界的に有名となり,コーヒーづくりの努力が報われる可能性が生まれます。
CoEはオークションと連結していて,カッピングに基づきCoEを獲得した産地の豆は,オークションで販売されます。しかし,その段階で,すでに値付けはカッピングだけではなく,過去の受賞歴や産地や農園の情報などにも左右されるようになります。最近は,オーガニックだの,フェアトレードだの,風味以外の要素も加味されるようにもなりました。
CoEなどの取り組みとは別に名声を獲得し,世界的に有名になったプレミアムコーヒー,ハワイ・コナコーヒーとか,ジャマイカ・ブルーマウンテンなどは,なおさらカッピング以外の要素が市場評価を決めています。
カッピングで高評価が最も客観的な風味の評価ではあるのですが,相対比較するために,決められた焙煎度合いで,決められたテイスティングで評価するわけですから,例えば深煎りで真価を発揮するような豆などは不利になります。また,カッパーの評価能力は素晴らしいのは間違いないのでしょうが,最終的には,消費者個々人の好みです。コーヒーに安全性や,倫理や,体験,物語を求める人もいます。それらを含めて,総合的に判断しての「スペシャルティ」なのです。
スペシャルティコーヒーは,CoEのようにカッピングだけで決まるものではなく,多様なニーズを持つ消費者が感じるスペシャルティを持つコーヒーと理解すべきなのでしょう。上図は,こんな感じかなという私のイメージを模式的に示したもので,何かのスコアを示した正確な数値ではありません。
Cup of Excellence オークションでどんな属性が評価されているかについては,以下のような論文があります。そのうち内容もアップするつもりです。
Traore, T. M., Wilson, N. L., & Fields, D. (2018). What explains specialty coffee quality scores and prices: A case study from the cup of excellence program. Journal of Agricultural and Applied Economics, 50(3), 349-368.